乙武洋匡の「自問多答」

[対談]乙武洋匡×宇野常寛(4)

2014.02.28 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「オリンピック・パラリンピック招致が成功したことで、迫り来る将来の課題に対してノープランとなっては困ります」(乙武) 撮影=後藤 渉

宇野常寛「オリンピックは日本の課題をあぶり出すチャンス」



乙武: 6年後の東京オリンピック・パラリンピックというのは、僕にとって楽しみなイベントである反面、心配の種でもあるんです。というのも、もし開催地が東京に決まっていなかったら、僕らは2020年以降の社会に対して、もっと不安を抱えていたと思うんですよ。少子高齢化、かさむ社会保障費など、確実にやってくる諸問題にどう対処するのか、深刻に考えなければならなかったはず。

宇野: たしかに、課題は山積みですからね。

乙武: ところが、オリンピック・パラリンピックという人々をワクワクさせるイベントがやってくることで、僕らはそういった不安をいったん棚上げし、まずは東京でこの世界的祭典を成功させることに力と知恵を集中させていますよね。それによって2020年以降の備えがおろそかになってしまうことはないのだろうかと、心配になってしまうんです。

宇野: オリンピックが決まったことで、なんとなく景気が良くなって、これまでの仕組みで騙し騙し社会を運営していけると思っている人は、政治家のなかにも少なくない印象です。いま見えている問題をほったらかしにせず、むしろ、オリンピックを“課題先進国”の象徴にすべきですよね。

乙武: そうですね。2020年以降の日本をどうするのか。オリンピック・パラリンピックの開催が、その後の日本や東京の姿を見据えたものであってほしいと切に願っています。

宇野: ただ、オリンピックには、東京がもともと抱えていたものを浮き彫りにする機能もあると思います。たとえば6年後を見据えた都市開発の計画書を読んでいると、どれも数十年前に一度提案されながら頓挫したものばかりで、それをオリンピックという口実で復活させ、強力に推し進めようとする計画が非常に目につくんです。でも、そもそも都がそういった開発プランを持っていたこと自体、都民はほとんど知らなかったわけです。

乙武: なるほど。オリンピックという一大イベントが来ることによって開発計画が注目され、都民に是非を問うことができるようになるという側面もあるんですね。

宇野: そうです。僕としては、このオリンピックを機に、言論を通じて様々な日本の課題をあぶり出す流れを作りたいんですよ。

乙武: そのためにも、インターネットなどを駆使した市民参加型のコミュニケーションを活性化させる必要がある。

宇野: そうですね。インターネットをメディアとして使うだけでなく、現実の暮らしに根付いたコミュニティを作ったり、再編成したりするために使うようになれば、文化はがらりと変わると思います。実際、僕らの学生時代は、インターネットが“仮想空間”に過ぎなかったのに、携帯電話の登場以降、人々のリアルな生活を便利にするツールに変わりましたからね。

乙武: 今回、宇野さんとお話しして感じたのは、一人ひとりの文化とのかかわり方が変化していくことで、社会の在り方そのものに影響を与えられるということ。これから6年後に向けて、様々な分野で準備が進められていくことになりますが、僕ら一人ひとりにとっても、日本の文化と社会を考える機会にしなければなりませんね。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
宇野常寛さん
1978年、青森県生まれ。評論家として活動する傍ら、文化批評誌『PLANETS』を発行。主な著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)ほか多数

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