[対談]乙武洋匡×木村草太「憲法を考える」(3)

憲法9条には解釈の幅がない?

2014.06.20 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「もう何十年も同じ論争が続いている印象がある改憲議論。文脈を整理すると、なぜ結論が出ないのかがよくわかりますね」(乙武) 撮影=後藤 渉

[対談]乙武洋匡×木村草太「憲法を考える」(3)



乙武: 憲法9条についての議論が連日、メディアに大きく取り上げられています。戦争放棄について書かれたこの条文を改正すべきか否かというこの問題は、僕が子供の頃から話し合われているように思いますが、なぜこうも進展しないのでしょうか?

木村: 誤解されがちですが、憲法9条が定めるルール自体は非常に明快です。いってみれば、すでに結論が出ていることを議論している状態なので、いつまでも話が進展しないのは当たり前なんですよ。

乙武: えっ、それはどういうことですか?

木村: 憲法9条に書かれているのは、他国から攻撃を受けた際は自衛のために反撃をしてもよい、ただし他国を武力攻撃してはいけない、ということ。これはこの50年、一切変わっていません。ところが、いまメディアを賑わせているのは、「自衛隊を海外にも出ていけるようにするべき」という意見と、「何が何でも出ていくべきではない」という、両極の意見です。

乙武: あらためて考えてみると、どちらも現在の憲法に反する意見なんですね。

木村: そう。9条を読むと、戦争はしない、戦力は持たない、と書いてある。ただ、憲法13条が国民の生命・自由などの権利を保障しているので、国にはそれを保護する義務がある。だから自国が他国から攻撃された時には、個別的自衛権を行使してよい、という理解です。すでに条文に示されていることについて、両極端の意見を持つ者同士が言い争っているわけですから、終わりが見えてこないのも当然といえば当然なわけです。

乙武: そこで改憲がスムーズに運ばないと見ると、今度はいまある条文の“解釈”の仕方を変えよう、という論議に移りつつあるわけですね。これがいっそう問題をややこしくしている。

木村: そうですね。でも改憲論者の根本には、戦後に生まれた国際秩序をもう一度作り直したいという怨念が少なからずあると思うんです。つまり、戦争で負けて、他国に社会システムを構築されたことに不満があるわけです。

乙武: 第二次世界大戦にまでさかのぼった話になってくるんですね。

木村: しかしこうなってくると、もはや現実味のある話ではありません。まさか、サンフランシスコ講和条約をリセットするわけにもいきませんし(笑)。だから結局、憲法第9条をめぐる改憲論というのは、時に愚痴のようにも聞こえてしまうんですよね。

乙武: 僕はこのまま護憲か改憲かという議論を続けても、なかなか結論は出ないと思うんです。だからこそ、もっと「この国をどうやって守るべきか」について話し合わなければならないと思う。護憲派の人々がもう少し「この国の守り方」を具体的に提示することで、議論が深まっていくのではないでしょうか。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
木村草太さん
1980年生まれ。東京大学法学部卒。同大学助手を経て、首都大学東京准教授。著書に『平等なき平等条項論』『憲法の急所』『キヨミズ准教授の法学入門』『憲法の創造力』『テレビが伝えない憲法の話』など。

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