[対談]乙武洋匡×木村草太「憲法を考える」(4)

憲法は、同性婚を禁じてはいない!?

2014.06.27 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「日本の憲法は、皆さんが思っている以上に様々な権利を認めている、開かれた憲法なんです」(木村) 撮影=後藤 渉

[対談]乙武洋匡×木村草太「憲法を考える」(4)



乙武: 先日、女性同士のカップルが青森市役所に婚姻届を提出し、憲法を根拠に断られたことがニュースになりました。改憲というと9条ばかりが注目されがちですが、たとえば「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立する」と明記されている24条についても、僕は改正を検討するべきだと考えているんです。つまり、同性婚は認められるべきだ、と。この問題について木村さんはどうお考えですか?

木村: まず大前提としていいたいのは、じつは憲法24条というのは同性婚を禁じているわけではないということです。「両性の合意のみ」という文言が誤解を招く原因だと思いますが、これは昔、家長の許可がなければ結婚できない風習があったことに異を唱えたものなんです。

乙武: なんと、それは意外な事実!

木村: 近代国家として、そんな封建的な制度ではいけないとして、男女の場合は“両性の合意のみ”によって結婚が成立することを定めたんです。つまり、この条文の「両性」というのは「(結婚する)当人」という意味で使われていて、同性婚を認めないとはまったく言ってないんですよ。当時は女性の地位が低かったので、「女性」にも「男性」と同等の権利があると宣言するために、あえて「両性」としたのだと思います。結構、世界的に見ても先進的な条文だったんです。女性の権利が当然のことだと思っている人は、意外に思うかもしれませんけれど。

乙武: ということは、たとえ同性であっても、当人同士の意志さえあれば結婚できるということですよね。これは多くの人が誤解しているかもしれません。

木村: そうですね。同性の共同生活を法的に保護しても、憲法24条に違反しないというのが通説です。ですから、民法や社会保障法・租税法を改正して、同性カップルについて異性の婚姻カップルと同じ扱いをしてもいいはずです。それに現行法の下でも、同性婚カップルが公序良俗違反だといわれているわけではないので、同性間の共同生活契約や、お互いに財産を残す遺言が無効とされることはないでしょう。もちろん、現状では法律婚とまったく同じ扱いにはなりませんが、それは憲法ではなく法律レベルの問題なんです。

乙武: なるほど。僕はLGBTの人たちとも接点があり、彼らを積極的に支援していきたいと考えているのですが、それは知りませんでした。こういう法の知識は、正確に押さえておく必要がありますね。

木村: そもそも、考え方が違う人たちが共存するための共通ルールが「法」です。いかなる価値観を持っていたとしても、相手が法に則っているなら黙らなければならないし、法に反していれば従わなければならない。僕らは、そういうゲームをやる必要がある。

乙武: 社会に一定の秩序をつくるための、重要な指針にもなりますね。

木村: 日本人は感情的に納得することを重視しがちですけど、道徳などの法外のルールは、多様な価値観を共存させるためにはあまりうまくいかないんです。だから私は常々、小学校など早い時期からリーガルリテラシー(法知識)を身につけるための法教育を行うべきだと考えています。

乙武: いま安倍内閣は道徳教育に力を入れていこうとしていますが、なるほど、法教育に力を入れていく方が、人々は生きやすくなるのではないかという提言ですね。これは考えたことがなかった。

木村: 憲法にしても、おそらく皆さんがイメージしているよりも日本の憲法は開かれていて、いろんな権利が認められるようにできています。たいていの権利は国民に与えられていますから、必要なのは法を味方につけるための知識なんだと思います。

乙武: 我々は法律というルールに基づいて生きていながら、その法律をあまりに知らなさすぎる。もちろん、法律家のように細かく把握するのは難しいでしょうが、その理念のようなものを知っておくだけでも、かなり人生における指針となりそうですね。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
木村草太さん
1980年生まれ。東京大学法学部卒。同大学助手を経て、首都大学東京准教授。著書に『平等なき平等条項論』『憲法の急所』『キヨミズ准教授の法学入門』『憲法の創造力』『テレビが伝えない憲法の話』など。

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