[対談]乙武洋匡×湯浅誠「日本の貧困問題」(2)

路上で生きるホームレス支援の実態

2014.07.11 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「やむを得ず路上で暮らすなら、路上で暮らすうえでのルールがあります。その周知を促すのも我々の活動の1つでした」(湯浅) 撮影=後藤 渉

[対談]乙武洋匡×湯浅誠「日本の貧困問題」(2)



乙武: 湯浅さんはこれまで、内閣府参与や「年越し派遣村」(2008年末)の村長を務めるほか、自立生活サポートセンター「もやい」の運営に携わるなど、長年、貧困問題に取り組まれてきました。「もやい」を立ち上げる前は、どのような活動をされていたのですか?

湯浅: 渋谷の路上などで、ホームレスの方たちと一緒に寝泊まりしたり、炊き出しをやったりしていました。もっとも、我々は「炊き出し」ではなく、「共同炊事」と呼んでいましたけど。つまり、こちらがご飯を炊いてあげるのではなく、材料を持ち込んで一緒に調理や片付けを行おうという考え方ですね。

乙武: それはただ支援するだけではなく、彼らの自立につなげようという意図からですね。しかし、一緒に野宿をするというのは、なかなかハードな毎日だったのでは?

湯浅: そうなんですけど、勉強になることも多かったですよ。たとえば、野宿をしている人々にも階層があるんです。最も安定しているのは、小屋を持っている人。段ボールハウスの人が、いわば中間層。そして最困難層が、寝る場所がなく、毎晩寝床が変わる人々なのですが、都心でも冬場の寒さは命にかかわります。だから彼らは昼夜を逆転させて、暖かい昼間に睡眠をとり、夜はずっと歩き続けてしのぐんですね。我々の活動の1つは、そういった最困難層の人々に寝床を提供することでした。

乙武: 寝床というのは、どうやって提供するんですか?

湯浅: 12月から3月までの間、公園の一角にスペースを確保して彼らに毛布を提供するんです。多い時は50人くらいがそこで寝るので、たまに人間関係のトラブルが発生することもあります。だから、支援者が交代でそこに寝泊まりするんです。

乙武: 支援にも様々な形がありますが、一緒に寝泊まりして共同炊事をするというのは、かなり深いかかわり方ですよね。現場をしっかり見てきたからこそ、湯浅さんの発言に重みを感じます。僕自身、実際に教員を経験したことで見えてきた課題もたくさんありました。

湯浅: そうですね。それに、野宿の世界というのは流動的なので、少しの間そこにいるだけで、他の路上生活者より私の方が事情に詳しくなってしまうんですよ。たとえば段ボール集めにしても、どこへ行けば手に入りやすいのかとか、どういう段ボールが使い勝手がいいのかなど、私のような支援者がノウハウを伝えていく場面もありました。

乙武: 新たに加わった人にとっては、さぞ頼もしい存在だったことでしょうね。

湯浅: 食料調達にしても、どこそこの飲食店は、食材を食べられる状態のまま破棄しているぞ、といった情報を共有していかなければなりません。ただし、ゴミ捨て場を荒らさないのが鉄則。ほしいものだけ取って、散らかして帰るようだと、次からそこに食材を捨ててもらえなくなってしまいますから。

乙武: なるほど、知られざるルールがそこにはあるわけですね。ホームレス状態から救い出すことが理想なのでしょうが、まずは路上での生活を送っていくための秩序作りという支援が必要になってくる。現場に深くかかわってきた湯浅さんならではのお話です。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
湯浅誠さん
1969年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。2008年末に「年越し派遣村」村長を務めたほか、2009年から2012年まで内閣府参与に就任するなど、貧困問題の解決に取り組んでいる。

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