[対談]乙武洋匡×湯浅誠「日本の貧困問題」(4)

生活保護の99.5%は適正支給

2014.07.25 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「公的支援を受けることは、スティグマ(負の烙印)をともなう。このイメージをどう覆すかが重要でしょう」(湯浅) 撮影=後藤 渉

[対談]乙武洋匡×湯浅誠「日本の貧困問題」(4)



乙武: 日本は世界有数の先進国でありながら、まだまだ貧困に悩まされ、支援すら受けられずにいる人が大勢います。また、若い人たちの中には、住むところも収入もなくて困っているのに、本来受けられる公的支援があることを知らない人も多いと耳にします。

湯浅: これは難しい問題で、日本の公的支援はかなり対象を絞り込んでいますから、なかなか自分の境遇と照らし合わせて考えにくい部分があります。それに、公的支援を受けるということは、どうしてもスティグマ(負の烙印)をともなうので、誰しも避けたいのが本音でしょう。

乙武: 先進国であるがゆえの、体面上の問題ですね。これは確かに難しい。とくに昨今は、不正受給問題などがニュースであまりよくない取り上げられ方をしたこともあり、生活保護を受けることに抵抗感を持つ人は増えているかもしれません。

湯浅: そうですね。問題なのは、本当に支援を必要としている立場の人が、萎縮してしまうこと。スティグマのハードルが上がってしまっているんですね。

乙武: また、保護申請を受け付ける窓口の対応も気になります。かなり高圧的な対応で、受給対象者を追い返しているという話も聞きます。

湯浅: 我々のようなNPOに相談に来る人というのは、まさしく窓口で追い返されてしまった人たちなわけです。スムーズに受給が決まった人は、こちらには相談に来ませんから。だから個人的には、窓口でかなり冷たい対応が横行しているような印象を受けてしまうのですが、実際のデータを見れば、窓口へ行った人のうち3人に1人は申請に漕ぎ着けているんです。

乙武: なるほど。印象論ではなく、きちんとデータで見ていくことが大事ですね。

湯浅: そう。生活保護の不正受給にしても、金額で見れば全体の0.5%(平成24年度)ですが、一般的にはもっと多いと感じられているのではないでしょうか。しかし、あまり誇大に喧伝しすぎると、本当に支援が必要な人をためらわせてしまうおそれがあります。

乙武: 実際に湯浅さんのところへ来られる方というのは、具体的にどのような相談をされるんですか?

湯浅: 一番多いのは、仕事を求めて来る人ですね。面接に行っても受からない、だからといって職業訓練を受けるお金があるわけでもない、という人たちです。だから、無償で受けられる職業訓練講座を増やすなどの対策が有効で、実際、政府もその方向で取り組み始めてはいます。また、職業訓練以前の方に居場所を提供したりしながら励ましていく民間の活動も広がっています。

乙武: なるほど。“公”に委ねるべき部分は大きいですが、一方で湯浅さんたちのように、国がまかないきれない部分を補う“民”の取り組みも重要であることを実感しました。この問題がより多くの人に知られることで、新たな人材やアイデアが生まれてくることを期待したいと思います。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
湯浅誠さん
1969年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。2008年末に「年越し派遣村」村長を務めたほか、2009年から2012年まで内閣府参与に就任するなど、貧困問題の解決に取り組んでいる。

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