[対談]乙武洋匡×鈴木寛「日本の教育問題」(3)

教育におけるメディアの役割は?

2014.08.15 FRI

乙武洋匡の「自問多答」


「日本の学力水準がトップに返り咲いたこともさることながら、今ある本質的な課題を周知することも重要なはず」(鈴木) 撮影=後藤 渉

[対談]乙武洋匡×鈴木寛「日本の教育問題」(3)



乙武: 鈴木さんが日頃から指摘されている、「政治家にとって、教育は票につながらない」という意識が日本の教育を遅らせているという問題。これにはメディアにも原因があるように思うんです。教育について報道されるのは、不祥事や批判的な事象についてばかり。これでは、政治家が「批判されてまで熱心に取り組むべき分野ではない」と考えてしまうのも無理はないかな、と。

鈴木: その通りだと思いますよ。たとえば、乙武さんもよくご存じでしょうけど、2012年のOECDの「生徒の学習到達度調査(PISA)」において、日本はトップクラスに返り咲いているんですよ。でも、メディアはあまり取り上げませんでした。順位が下がった時には大騒ぎするのに(笑)。

乙武: 現場の士気を高める意味でも、本当はこういうニュースこそ積極的に伝えてほしいところです。

鈴木: このPISAの結果は、教育現場や家庭の努力の賜物だと思いますし、だからこそもっと多くの人に知ってほしいニュースなんですよ。実際のところ、まだ日本の学力水準は落ちたままだと誤解している人は少なくありません。

乙武: もっといえば、順位の変動だけに一喜一憂する風潮も、メディアが作り出してしまっているように思います。PISAの調査結果を分析すれば、より有意義な示唆が得られるはずなのですが。

鈴木: そうですね。このPISAの結果が指摘していることを正確に伝えることも大切です。PISAではずっと、日本生徒の“学ぶ意欲”の順位が著しく低いことを問題視していますから、ここに国としての課題があることは間違いないわけです。ところが、改善しようという動きはほとんど見られません。こと教育に関する議論というのは、非常に難しい部分があって、皆さんそれぞれが自分自身の体験を一般化して語りたがる傾向があるんですよね。

乙武: 体罰問題などはまさしくそうですね。「自分は体罰を受けて育ってきたし、感謝もしている。だから体罰はOKだ」と主張する人々がとても多くいらっしゃいます。

鈴木: 誰もが教育を受けて育っていますから、1億総評論家になり得るジャンルで、それが時に議論をややこしくしてしまう。でも、本来はもっと、時代や当事者である本人の状況にあった最善策を考えていかなければいけないと思います。

乙武: 個人のノスタルジックな体験に基づく教育論や、特定の思想に紐付いた教育観では、どうにも子どもたちが浮かばれません。現状における正確な認識がなければ、建設的な議論は始められない。ぜひ、メディアには徹底した現場取材をもとにした、教育についての報道をお願いしたいところです。

(構成:友清 哲)


【今回の対談相手】
鈴木 寛さん
1964年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。通産省、慶應義塾大学助教授を経て、2001年、参議院議員初当選。12年間の国会議員任務の中、民主党政権では文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ・文化・情報を中心に活動。現在は、日本初の東京大学・慶應義塾大学ダブル教授、社会創発塾塾長、日本サッカー協会理事ほか。

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