「いぶりがっこ」「お食事券」「うどん」…

あの名称が火種に!? 商標登録トラブル実例集

2016.05.21 SAT


「『うどんすき』のように、商標登録した独自の名称も月日が経って一般化してくると、普通名称として扱われてしまうことがあります」(林弁理士)。「ホッチキス」や「エスカレーター」も、もともと商標登録されていた名称が普通名称化した…といわれている
写真:monzenmachi / PIXTA(ピクスタ)
秋田県名産の漬物「いぶりがっこ」の名称を巡り、県内のメーカーの対立が勃発。1983年5月に「いぶりがっこ」という6文字を使った画像を商標登録した雄勝野きむらやの「画像に付帯して、名称にも商標権がある」という主張に対し、ほかの業者は「いぶりがっこは一般名詞だ」と反論。今後の展開が注目されている。

「この騒動は、名称そのものに商標権があるか、特徴的な文字を使ったロゴに限った商標権なのかという部分が争点です。登録は特徴的な文字で行われていますし、登録当時の1983年は認知度が低かった『いぶりがっこ』という言葉も、いまや全国区。商標法でいう『普通名称』、いわゆる一般名詞と捉えられるか否かがポイントだと思われます」

そう教えてくれたのは、正林国際特許商標事務所の林栄二弁理士。この騒動のように、登録されていた商標であっても、それが普通名称か否かが争われるケースは少なくないようだ。林弁理士に過去の事例を教えてもらった。

■ケース1「全国共通お食事券」


ぐるなびが登録した「ぐるなびギフトカード 全国共通お食事券」という商標に対し、ジェフグルメカードが「『全国共通お食事券』は弊社を表す商標だ」と申し立て、裁判に発展。最終的に違法性は認められず、ぐるなびの使用は許可された。

■ケース2「IGZO」


シャープが液晶パネルの名称「IGZO」を商標として出願し、登録された。しかし、科学技術振興機構が「『IGZO』は、液晶に使われているインジウム、ガリウム、亜鉛で構成する酸化物半導体の略称だから、一社が独占するのは避けるべき」と申し立て、裁判に発展。最終的に商標登録は無効となった。

■ケース3「ピタバスタチンカルシウム」


製薬会社の興和が、高コレステロール血症治療剤について「ピタバ」を商標登録。名称の由来は「ピタバスタチンカルシウム」という成分を使っているためだった。その後、ジェネリック医薬品のメーカーが「ピタバ」の使用について裁判を起こした。「ピタバ」は医薬品の成分を表す略称という理由で、ジェネリック医薬品のメーカーの使用が認められた。

■ケース4「うどんすき」


料理名として知れ渡っている「うどんすき」。実はうどん店・美々卯の登録商標で、先代が創作した造語。その後、「杵屋うどんすき」を商標登録したグルメ杵屋に対し、美々卯が無効を求めたが、「『うどんすき』は普通名称化した」という判決が下り、請求は棄却された。しかし、現在も「うどんすき」の権利自体は美々卯が持っている。

国内だけでも様々な例があるが、海外でも商標登録を巡るトラブルはある。特に日本人が巻き込まれやすいのが日本語の名称にまつわる問題。たとえばスペインでは「UDON」が商標登録され、ほかの業者が「うどん屋」を名乗れなくなってしまった。この影響をモロに受けたのが、元Jリーガーで現在実業家の石塚啓次氏。スペインバルセロナで石塚氏が開業したうどん屋は看板を変更せざるを得なくなったのだ。林弁理士は「日本企業が海外展開する時の足かせになる」と語る。

ただし、TPP圏では、今後このような商標にまつわる状況が改善することが期待されている。

「発展途上国では商標登録の条件がきちんと整備されておらず、審査能力の課題もあります。しかし、TPP加盟国では商標に関する法律や条件が整備され、商業の保護が底上げされるのです。手続き自体も簡便になるよう。この条約によって商標の国際的保護が促進され、TPP加盟国での商標登録トラブルが起きにくくなり、海外進出しやすくなることが期待されます」

普段何気なく使っている言葉も、もしかしたら商標登録されているかもしれない。もし新商品の開発に携わる時がきたら、しっかりと調べた方がいいかも…?
(有竹亮介/verb)

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