スイスでは数カ月に1回ペース!?

10年で約300回実施! 世界の国民投票の実態は?

2016.07.06 WED


「ちなみに、第3位は“南米のスイス”とよばれるウルグアイ。軍事政権下時代には回数が減りましたが、1990年代以降は増えていて、イタリアの半分くらいです」(井口教授) 
写真:wavebreakmedia / PIXTA(ピクスタ)
イギリスで6月に行われたEU離脱を巡る国民投票。議会は「残留」を予想していたが、結果は「離脱」が僅差で勝利し、世界に激震が走った。

そもそも国民投票とは、国民が憲法改正などの重要な事項に関して直接意思を表明する制度のこと。日本では過去に行われたことがないためなじみは薄いが、世界ではどの程度行われているのだろうか。国民投票の事情に詳しい愛媛大学の井口秀作教授に聞いた。

●世界中では国民投票はどの程度行われているの?


「ヨーロッパのシンクタンクの資料(2010年)によれば、2001~2010年に世界で行われた国民投票の回数は298回です。実施国には地域的な偏りがあり、国民投票回数の約半分はヨーロッパで行われ、そのなかでもスイスが半分近くを占めています。その回数は10年間で70回。その次にイタリアの10年間で11回が続きます」(※同じ日に複数の国民投票が行われることも珍しくない)

実は、スイスでは6月にベーシックインカム(最低所得保障)に関する国民投票が行われたばかりだ。スイスでは数カ月に1回ペースで国民投票が行われているそうだが、どうしてそんなに多いのだろう?

「スイスとイタリアに多い理由は主に2つあります。1つは、憲法で定められている国民投票の対象が憲法改正に限らず、条約や法律にも認められているから。もう1つは、有権者から一定数の署名が集まれば、議会が望むと望まないとにかかわらず、必ず国民投票が行われるからです。そのため、署名を集めるための企業まで存在するほど。国民投票の頻度は、その対象がどこまで認められているか、実施条件がどのように決められているかによって違いが表れます」

たとえば、イギリスは議会が国民投票を行うかどうかを決め、その対象は法律などを含む重要政策に限られる。過去には1975年にEC(EUの前身)の残留是非を問う投票が行われたのみだ。また、そのお隣のフランスは憲法と法律が対象で、大統領がOKを出せば行われる。こちらは1958年に制定された現行憲法の下で9回行われた。

●国民投票のメリット・デメリットとは


ところで、イギリスではEU離脱の結果を受けて投票やり直しの署名が集められていたが、国民投票が抱える問題にはどんな点があるのだろうか。

「国民投票には、結論を賛成か反対かの2択にできるよう、争点を単純化せざるを得ないという事情があります。そのため、一部には賛成だけど一部には反対、という意思表示はできません。それなら選択肢を複数用意すればいいという意見もあるのですが、選択肢を複数用意すると票が分散してしまいます。結局、どれが国民の意思なのかが分からないという事例も過去にはありました」

さらに、政権への不満から、議会の決定とは逆の意見に傾きやすいこともあるそう。

「今回のイギリスでは、『離脱』に投じた人が『本当に離脱になると思わなかった』と、後悔しているニュースもありました。国民投票は選挙で議員を選出するのとは異なり、自分たちで物事を決めている感覚を持ちやすいのがメリットです。しかし、結果が本当に民意を反映しているとは限らないケースもあります。この騒動を受け、国民投票については『推進派』と『慎重派』の衝突が始まるのではないでしょうか」

日本では、国会が発議した憲法改正案に限って国民投票が行われる。もし行われることになった場合、投票した後に後悔することのないよう、物事を決める重大さを認識する必要がありそうだ。
(南澤悠佳/ノオト)

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