沈静化はしたけれど…

中国の反日感情、あれほどまで高まった背景は?

2005.05.19 THU

4月に中国各地で頻発した反日デモは、残念ながら、いまだ日中両国の間に深い溝があることを明らかにした出来事だった。反日デモを引き起こした要因としては、小泉首相の靖国参拝、日本の国連安保理常任理事国入り、歴史教科書問題、尖閣諸島領有権問題などが挙げられる。しかし、それだけではないだろう。むしろ長年にわたって蓄積された反日感情が、これらの問題をきっかけにして噴出したと捉えたほうが理解しやすい。

反日感情については、戦争を体験した世代だけが強いわけではない。中国では若年層ほど反日感情が強いという統計もあり、これは90年代後半に強化された愛国・反日教育の「成果」だという見方が強い。インターネットによって、感情は瞬時に伝播するし、デモも呼びかけやすい。さらに05年は、中国にとっては「反ファシスト勝利60周年」に当たる。このように考えれば、中国はいつ反日デモが起こってもおかしくない状況にあったという見方もできるだろう。

しかし、同時に見落としてはならないのは、中国の若者には内政への不満も鬱積していることだ。経済は急成長しているものの、その恩恵にあずかっているのはわずかに一部で、貧富の差は広がる一方。また経済的には市場開放路線をとりながら、政治的には一党独裁体制が続いており、言論の自由は奪われたままである。こうした現状不満のエネルギーが反日デモという形で吹き出したと指摘するチャイナ・ウォッチャーも多い。

4月23日にジャカルタで行われた日中首脳会談で両国の関係改善が確認されて以降、反日デモは中国政府の取り締まりもあって、沈静化の方向に向かっている。でも「これにて一件落着」とするのはあまりに楽観的だ。中国政府もコントロールしきれない反日デモは、内政不安の材料でもある。皮肉なことだが、中国の愛国主義は、自身の基盤をも揺るがせる巨大なエネルギーになりつつある。

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