かつては「魔法の鉱物」だったけど

世界を震撼させるアスベスト、遅かった規制のツケがいま…

2005.09.01 THU

ここ数カ月、アスベスト被害に警鐘を鳴らすニュースが続いている。6月に大手機械メーカーのクボタが、アスベストによる社員の健康被害を公表したことがきっかけだ。

そもそもアスベストとはどんな物質なのか。「石綿」とも呼ばれるアスベストは、熱や薬品に強く、紡織性(紡いで織ることができる)にもすぐれているため、「奇跡の鉱物」「魔法の鉱物」ともいわれるほど、有用な天然資源として認知されていた。日本の高度成長にも欠かすことのできない工業原料であり、たとえば建築物の防音・断熱材、自動車のブレーキパッド、クラッチ板、シーリング材など、その用途を挙げればキリがない。

60年代にはすでに、じん肺(粉じんの吸入による心肺機能の低下)や中皮腫(胸膜・腹膜などの表面をおおう中皮細胞から発生した腫瘍)といったアスベストの健康被害が国際的に報告されていたが、先進国でも規制が本格化したのは90年代に入ってから。対応が早かったと言われるフランスでさえ、使用禁止に踏み切ったのは90年代前半のことだ。欧米諸国と比べて、日本だけが特別対応が遅かったわけではない。

問題は、アスベストによる健康被害には、30~40年という長い潜伏期間があることだ。アスベストの使用量が日本でピークに達したのは、70年代の半ば。よって今後10~20年ぐらいは、労災を中心に健康被害の報告も増えていくことが予想される。すでにアメリカでは、アスベスト関連の訴訟による賠償金、保険金の合計は8兆円近く、倒産企業も70社を超え、集団訴訟を防ぐための法案が通過したほどの激震ぶり。こうした負の遺産を、国や企業が真摯に受け止めなければいけないのは当然だろう。しかし同時に、90年代後半以降の対応により、現時点でアスベストの影響を受けるリスクは低くなった。この点を誤解したヒステリックな批判は、議論の混乱のもと。正しい知識をもって、アスベスト問題は考えたい。

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