奴隷解放宣言から140年以上経つのに

米国の議会が「奴隷制」を謝罪したのはなぜ?

2008.09.11 THU



写真提供/APImages
「奴隷制の結果、アフリカ系米国人の苦しみはいまもなお続いている。米国民を代表して、下院はアフリカ系米国人に謝罪する」―。

7月の終わり、日本の衆議院にあたる米下院がこんな決議を採択した。アフリカ系米国人、つまり黒人に対する過去の奴隷制やその後の差別を議会として公式に謝罪したのだ。こうした謝罪決議はこれまで州レベルではいくつか採択されてきたが、連邦議会では初めてのことだという。でも、いったいなんでいま奴隷制への謝罪なのだろう。

米国の黒人は全人口の14%にあたる約4100万人。そのほとんどが、アフリカから奴隷として連れてこられたひとたちを祖先に持つ。ブルースなどの黒人音楽で歌われているように、アフリカから奴隷船で輸入された彼らは、当時の米国南部の経済活動の中心だったプランテーション(大規模農園)農業でおもに綿花栽培の農業奴隷として働かされ、その奴隷制を争点のひとつとした南北戦争を経て、1863年のリンカーンの奴隷解放宣言と2年後の奴隷制廃止でやっと解放された。このとき、奴隷の数は米国だけで400万人もいたという。

そしてじつは、この奴隷制に対する国際的な批判がここ数年どんどん高まってきているのだ。たとえば、2001年の国連・世界人種差別反対大会ではアフリカ諸国から奴隷制に対する謝罪と補償を求める声が相次ぎ、翌年の国連総会では04年を「奴隷制に対する闘いとその廃止を記念する国際年」に定めた。この動きを受けるかたちで、奴隷貿易をおこなっていた英国も、06年、国教会が奴隷貿易に関与していたことを認めて謝罪し、昨年には当時のブレア首相も「深く恥じる」と表明。いわば米国も欧州も、豊富な資源を持つアフリカ諸国の声をもはや無視できなくなったというわけだ。

とはいえ、今回の米下院の謝罪決議には、自分たちの歴史上の汚点を過ちとして潔く認める姿勢が感じられたのも事実。「従軍慰安婦」問題を抱える日本にとっても、ひとごとではないのかもしれない。


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