エコと経済のビミョーな関係

第1回 おしゃれなエコ・ファッションって何?

2009.03.24 TUE

エコと経済のビミョーな関係


オーガニックコットンの原綿。生成りのほか、淡いグリーンや濃い茶色もコットンの天然の色。原綿は、わざわざUVカット加工を施さなくても紫外線カット率90%以上だとか。女性にオーガニックコットンの日傘なんてプレゼントすると喜ばれるかも!?

おしゃれは素材から!?地球でいちばんエコなファッション素材は?



「おしゃれ」って何でしょうね? 辞書には「服装などが洗練されていること」とあるけれど、じゃあ「洗練」って? なんて考え出すとわけがわかりません。でもなんとな~く、おしゃれだなと思う人は、デザインはもちろん素材にもこだわる傾向がある気が。エコなファッションもやっぱり、素材にも気をつかうのが正解なのかも?

調べてみると、近年のセレブやファッションデザイナーのエコ熱は相当な様子。アンチ・レザーをはじめ、バナナ、ヘンプ、竹といった天然素材を使ったモードファッションなんかも発表されているようです。さて、数ある素材のなかで何がエコなんでしょう?

「コットンです。例えば、ヒツジを1頭育てるには1エーカーの土地が必要で、1頭から5kgほどの毛がとれますが、コットンは1エーカーで500kg収穫できます。地球温暖化問題の面から見ても、ヒツジは二酸化炭素を出しますが、コットンは逆に吸収してくれますよね。麻など他の植物素材と比べても、コットンは生えている状態ですでにふわふわのワタですから、ごくわずかなエネルギーで紡績することができます」

と教えてくれたのは、オーガニックコットンの普及を目指すNPO「日本オーガニックコットン流通機構」理事長の宮崎道男さん。
なるほど、キング・オブ・エコ素材はコットンなんですね。肌触りもいいし、メジャーですしね。で、最近よく聞くオーガニックコットンというのは普通のコットンと何が違うんですか?

「3年のあいだ農薬や化学肥料を使用していない農地で、無農薬・無化学肥料で栽培したコットンのことをいいます。通常のコットン栽培では、種にも殺虫剤を使い、土壌にもカビや菌を殺すための農薬をまきます。雑草には農薬のなかでもっとも強いとされる除草剤を散布し、その後も成長促進剤、抑制剤、枯葉剤など大量の薬品を使うため、土壌や水質の汚染が深刻です。労働者の健康被害も多くて、インドなどの国では貧困のため子どもでさえも劣悪な条件で働いているのが現状なんですよ」

なんと! いま着ているこの服も、もしかすると地球の裏側の人たちの犠牲のもとに作られたものかもしれないってことですか!? 何気なく着ていた服にそんなウラ事情が隠れていたなんて知りませんでしたよ。

ちなみに、コットン畑は世界の農地面積の1~2%ほどに過ぎませんが、使われる農薬の量はすべての農作物に使われる量の約10%、そして殺虫剤に限るとなんと25%にもなるというデータもあるとか! オーガニックコットンの栽培ではそうした農薬を使わないだけでなく、労働に見合った賃金をきちんと支払ったり、児童労働を禁止したりと従事者の働く環境にも配慮しているんだそうですよ。オーガニックコットンの栽培が増えれば、環境保全のみならず、彼らの労働条件も改善できるというワケですね。

でも、いざ着てみよう! と思ったところで、ちまたでオーガニックコットンの服ってあんまり見かけないような。

「コットン市場全体のなかでオーガニックコットンの流通量はまだ少ないのですが、それでも近年かなりの勢いで増えているんですよ。特に、イタリア、フランス、アメリカなどで人気です」

NPO「Organic Exchange」の報告によると、アメリカではオーガニックコットンの売り上げはここ4年で倍増しているそう。事実、リーバイス(米国・欧州のみ)や無印良品、エディー・バウアーが100%オーガニックコットンのジーンズを相次いで発売したり、マーガレット・ハウエルのスポーツカジュアルライン〈MHL〉でオーガニックコットンシリーズを発表したりと、大手アパレルメーカーも続々動きを見せ始めています。あのナイキも、2011年までに全製品の5%にオーガニックコットンを採用すると明言しているとか。
一方、買う側の人たちはというと、多少価格が高くても、環境保護などのメッセージ性を感じて支持する人が増えているみたい。やっぱり着心地も違うんですかね?

「見た目ではわかりにくいかもしれません。でも、栽培方法もそうですが、収穫後も素材の良さを損なわない加工工程を経るので手触りはやわらかいですし、長持ちもします。公式のテストではありませんが、ホテル用のタオルを80回洗濯しても風合いがほとんど変わらなかったという実験結果もあるくらいです」

着心地も良くて、繊維としてもエコなコットン。なかでも最上級エコのオーガニックコットンを選べば、エコロジカルなファッションにグッと近づけそうです。
オーガニックコットンをキャンバスに、アーティストが思い思いの作品を描いたTシャツが並ぶ久米繊維工業プレスルーム。「世界の名だたるアーティストがこぞって描いてくれています。地球環境に対しても感覚が敏感なんでしょうね。また、毎年6月にはエコチャリティーのTシャツ・アート展も開催しています。すばらしい作品が集まるので今年も楽しみですよ」(久米信行さん談)

ファッションの最新トレンドはエコで自己実現!?



地球にやさしいだけではなく、カッコ良く、しかもおしゃれにエコ・ファッションを楽しむには、素材にこだわるべし! まずは、おなじみのTシャツをオーガニックコットンTシャツにチェンジすることから始めてみたいと思います。

「オーガニックコットン独特の風合いは日本人になじみます。木や土に触れるとどこかホッと安心するように、DNAが求める、とでもいうのでしょうか」

そう語るのは、老舗Tシャツメーカーの久米繊維工業代表取締役の久米信行さん。たしかに染色も何も施していない生成り色の生地は素朴でいい感じ! なんというか、五感に訴えるものがあります。

う~ん。でも残念ながら、ウチのクローゼットにある手持ちアイテムと、オーガニックコットンの素朴な風合いとは若干トーンが違ってマッチしないような気が。

「みなさん、やはり意見が2つに分かれます。素朴でいいねと言う人と、そうではない人。ですから今春、いままで着ていたTシャツと変わりなく着てもらえるよう、定番色の黒と白を発売します。染色も日本オーガニックコットン協会の認証基準に沿ったものにしてあるんですよ」

たしかに白や黒なら違和感ないかも。これまで通り、ファッションを楽しみながらちゃーんとエコもできそう! なんて考えていたら、久米さん、こんなことを話してくれました。

「ファッション欲求段階説というのを提唱しているのですが、50年代に父がはじめてTシャツを作ったときはまさに革命で、下着感覚の心地良さなのにアウターとして堂々と着られる、と衝撃的だったそうです。その後、帰属欲求の時代は、みんなと同じものを着ていれば幸せ、というVANブームの到来です。さらにDCブランドブームへと移り、レアもの、コラボといった限定商品に人気が集まりました。これからは自分でTシャツにデザインするようなプロシューマーの時代です。自己実現ですね。そう考えると、オーガニックコットンを着ることも自分らしさを表現する手法のひとつになってくると思います」

世界的に大きな注目を集めているオーガニックコットン。今後、ますます大手アパレルメーカーがオーガニックコットンを採用すれば、お店で何気なく選んだ洋服がオーガニックコットンだった、なんてことも。そうなれば、「無意識のうちにエコ」の実現も夢じゃない! とりあえず、これから洋服を買うときには、オーガニックコットンのことをちょっと気にしてみましょうか。 オーガニックコットンを栽培している現地の人たちの健康と生活が成り立って、企業も収益がきちんと上がれば、どうやらエコと経済の両立はバッチリ成立しそうですね。


今回の取材では、流行の移り変わりの激しいファッション界で今まさに、オーガニックコットンが着る人の生き方を表現するツールになりつつある、という久米信行さんの意見に納得。エコとファッションのいい関係ができはじめている! と感じました。


これならどうやら「知らない間にラクしてエコ・ファッション!」も夢ではなさそう。わたしも、まずはオーガニックコットンTシャツデビューからはじめてみたいと思います!



さて、コラムのテーマである「エコと経済」を取り巻く環境は、それこそ「ビミョー」です。エコを定着させるためには経済活動として成立させる必要がある、という考え方が広まりつつあるけど、じゃあエコと経済のどちらを主体にすべき? なんて、なかなか答えが出なそう。一方では、地球のためなら採算度外視で取り組むべきだ、という考え方もありますよね。



両者のこのビミョーな関係、どう思いますか? ぜひ、みなさんの意見をお聞かせください。身近な「エコと経済」の実例やエコにまつわる疑問、最近気になるエコな話題などもお待ちしていまーす!

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