エコと経済のビミョーな関係

第3回 自然との共存こそビジネスチャンス!?

2009.04.21 TUE

エコと経済のビミョーな関係


京都のスーパーに並ぶアカガレイ。青い楕円形のマークがMSC認証マーク。日本では、京都府機船底曳網漁業連合会のズワイガニ漁とアカガレイ漁の取得が最初。現在は、ジャスコなどのイオングループでアラスカ産サーモンなどを取り扱っている。魚を買う時は参考に!

お寿司が食べられなくなる!?思ったより深刻な生き物の絶滅度



テレビなんかで時々放送される、野生生物の特集番組。好きでつい見入っちゃうんですが、そのたびに生命の不思議にぶち当たって案外楽しいんですよね。4月に入って新しいクールがスタートしていますが、テレビ欄チェックの際、野生生物の番組を見かけたら、みなさんも、ぜひ!

なんてオススメしている場合ではなくて、そうした野生生物のなかには、どうやら、かなりの割合で絶滅の危機に瀕している種がいるらしい、というのが今回の話題。

「調査対象の実に約37.8%の絶滅が危惧されています」と言うのは、WWFジャパンの大倉寿之さん。それって約3分の1じゃないですか!? そんなに深刻なんですか?

「国際自然保護連合(IUCN)が発表したレッドリスト2008(絶滅の危機に瀕している世界の野生生物のリスト)で調査対象になったのは4万4838種、そのうち1万6928種が絶滅危惧種に指定されました。前年の1万6306種と比べても危機の度合いが増しています。ちなみに、生物のなかでもきちんと学名が付けられているものは164万種あまりで、まだ学名が付けられていない生物は数千万種とも億に達するともいわれています。IUCNのレッドリストは、学名の付いた生物のなかでも代表的なものを選んで調査しているので、名前も存在も知られないまま絶滅している種はたくさんあると考えられているんです」

レッドリストには、ホッキョクグマ、トラ、カバ、オランウータンなどおなじみの動物がズラリ。単なるレジャースポットとして楽しんでいた動物園や水族館も貴重な場に感じてきちゃいます。で、やっぱり、絶滅の危機に追いやっている原因って私たち人間なんですかね?

「残念ながらその通りです。地球の歴史上、過去に約5回の大量絶滅が起こったといわれていますが、これらは大規模な火山活動や、大きな隕石の衝突などで起こる地球環境の変化が原因でした。ところが1600年代以降は、環境破壊や汚染、外来種、過剰な捕獲、地球温暖化など、人為的要因によるところが大きくて、現在は過去に類を見ない規模の、6回目の大量絶滅の危機を迎えているんです。人を原因とする絶滅の加速は、自然に起こる絶滅スピードの1000倍にもなるといわれているんですよ」

人間が生態系のバランスを崩しまくってきているわけですけど、その結果、私たちの暮らしそのものへの具体的な影響って出てきたりするんでしょうか? どうもいまいちピンとこないんですが。

「お寿司は好きですか?」

は?
も、もちろん好きです。大好きです。
ご馳走してくれるんですかね? ワクワク。

「寿司ネタにもなっているクロマグロやタコなどが、このまま食べ続けると二度と食べられなくなってしまう可能性があるんです。地中海のクロマグロの8割が日本に輸入されていますが、今のペースで消費を続けると危険です。モロッコ近海からやってくるタコも、とりすぎで一時禁漁措置がとられたことがあります。日本にたくさん入ってきていたヨーロッパウナギの資源量も大きく低下していて、今では原産国のワシントン条約管理当局の許可なく輸出入できない事態になっているほどです」

なんだ残念じゃなくて、二度と食べられなくなってしまうなんて困ります。ウナギだって食べたいです。地球上の生物とのつながりなしに、私たちの食生活は成り立たないということですね。

今や世界一の水産物輸入国になった日本ですが、世界でも寿司ネタをはじめとする魚介類の人気は、それこそウナギのぼり。国連食糧農業機関(FAO)の集計では、世界の水産物生産は過去30年間で約2倍の1億3000万トンに増加。このうち食用魚の4分の1種類が乱獲状態で、個体数が回復できないほどに減少しているのだとか。水産資源は世界的に厳しい状況にあるようです。

「食べるものだけでなく、このほかにも私たちの身の回りには生物を原料にしたものや生物の生態を利用した製品がたくさんあるんですよ。漢方薬に動植物の成分が含まれていることは知っていますよね? 多くの人が利用している抗ガン剤などの医薬品でも、上位150点のおよそ60%に何らかの形で生物が用いられています。多くは熱帯雨林の奥地で見つかったものですが、その森がコーヒーやアブラヤシなどのプランテーション栽培用地にするために大量に伐採・破壊されている深刻な状況です。普段、気に留めることもない場所かもしれませんが、医薬品を製造し病気を治している私たちにとって、種の絶滅や生態系のバランスが崩れることは、経済活動に支障を来すだけでなく時と場合によっては命にかかわってしまうことも考えられるのです」

お寿司が食べられなくなるだけでなく、命まで!? これはもう是が非でもたくさんの種を絶滅から守っていかなきゃならないじゃないですか!
絶滅から救うために私たちにできることって何があるんでしょうか?

「認証制度で保護することもできます。乱獲をしないよう気をつけてとられた水産物に付けるMSCマークや、環境への負荷はもちろん、野生生物の生息地で暮らす住民のことも考えて生産された紙製品・家具といった林産物に付くFSC認証などです。こうしたマークを参考にしながら買い物をすると、生き物たちの個体数や生息環境の維持に寄与することができるでしょう。ほかにも、野生生物の保護プロジェクトを実施しているNPOやNGOを調べて、どういう団体なのかを見定めたうえで活動に協力することもひとつの方法だと思います」

経済活動を維持しつつ野生生物を保護するなんて、一見矛盾していそうだけど、みんなが関心を寄せて行動すれば実現できちゃうものなのかも。おいしいお寿司を食べ続けたい! という熱い思いがあれば成し遂げられそうな気がしてきましたよ。
見事、ノーベル化学賞受賞に輝いた下村脩氏の研究テーマ、オワンクラゲ。発見・精製に成功した蛍光たんぱく質の研究はその後、生体中のたんぱく質の動きを観察するマーカーとして世界各国で活用され、医学の進歩に大きく寄与している。研究成果が今では3000億円ほどの市場規模にまで成長しているとか!

可能性は無限大!?生き物の生態を活用した「ネイチャービジネス」



食べ物に限らず、医薬品など実に様々な分野で生き物のお世話になっている私たち。その生き物たちの多くが絶滅の危機に瀕しているなか、逆に、生き物やその生態を利用しつつ自然環境を守っていこうというネイチャービジネスが注目されています。
具体的にどんな商品や研究があるんでしょうか? 生物資源を利用したものづくりに詳しい、ユニバーサルデザイン総合研究所所長で科学技術ジャーナリストの赤池学さんにお話を伺いました。

「イエバエを使ったたい肥化があります。通常、家畜の糞尿をたい肥にするには2~3カ月かかりますが、イエバエのウジを使うとものすごいスピードで分解し、1週間でたい肥になることがわかりました。また、たい肥化がある程度進むと発酵によって熱が発生するのですが、その熱を嫌がってたい肥の外にウジが自らはい出てきます。それをすかさず集めて、鶏にエサとして与えるわけです。この仕組みをうまく利用しているのが東国原知事の宮崎県です。牛舎から出る糞をイエバエを使ってたい肥にして、ウジは宮崎地鶏のエサに。できたたい肥はベジフルーツという特産品や有機栽培野菜の肥料として活用しています」

糞尿の処理もできて、農作物も育てられる。これぞまさしく非の打ち所のない循環! 宮崎地鶏の売り上げも順調そうですけど、そう考えると、案外身近なものにも生き物の生態を利用して作られた商品って多そうですね。

「植物由来のバイオマスプラスチックの生産も盛んになっています。すでに家電やPC、携帯電話などにも使われていて、量販店でも普通に購入できるはずです。今はポリ乳酸といってトウモロコシやサトウキビなどの可食植物由来のものが主流で、食料問題との競合が問題になっていますが、木材など非可食植物から、シロアリに共生する微生物を活用してバイオプラスチックやバイオオイルなどを作り出す技術も確立されてきています。市場に出てくるのももうすぐだと思いますよ」

木材、それも国産の間伐材から燃料やプラスチックが作れるようになれば、日本の森林保護にも森林にすむ野生生物保護にもつながりそうですね!

ほかにも、緑藻からオイルを取り出して自動車燃料を作る研究をTOYOTAグループと慶應義塾大学が共同で行っていたり、岩手大学が、ガが繭(まゆ)になる時に生成する休眠ホルモンを使った副作用のない抗ガン剤を、国際特許を取得しながら実用化に向けて開発していたりと、様々なプロジェクトが進んでいるのだそうです。

「日本をはじめ、アジアは昆虫や植物などの生物多様性が豊かな地域です。ヒトゲノムの解析はアメリカに負けてしまいましたが、昆虫など他の生物ゲノム研究の蓄積において日本はフロントランナーです。またこれまでは、CO2や3R(リデュース、リユース、リサイクル)など低炭素対策を軸に置いた環境ビジョンを打ち出している企業が多かったなか、生物資源の知的高度利用がビジネスになることに気づき始めた企業が増えていますね」

国も、2001年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を打ち出し、昨年には経済産業省が「生物機能を活用した生産プロセスの基盤技術開発」を立ち上げ、本格的にチカラを入れ始めました。来年には、世界各国から1万人規模が訪れるといわれている「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)が名古屋で開催予定です。日本がこれまで蓄積してきた生物ゲノムの活用や、知的財産分配の枠組みを決める会議として世界が注目しているんだそうですよ。

「これから企業にとって、生物は化石燃料に代わる大切な産業資源になります。ビジネスであるがゆえに、持続的な経済発展のためにも枯渇することがないよう保護していくことも企業の重要なミッションになっていくでしょう」

これまでの、開発&搾取といった企業のあり方はもう古い!? これからは、環境を生かしながら自然と共存することで経済活動を成立させていくことが大命題になっていくのかもしれませんね。 取材後、買い物の時に注意して見ていると、
FSC認証やMSC認証など、
結構いろんな製品にマークが付いていることを発見!
知らずに買っている商品のなかに、
すでに生き物などを保護する活動が
しっかり入り込んできているんだな~と実感しましたよ。

続いて、生物資源を活用したネイチャービジネス。
経産省は、太陽光発電事業の経済効果で目指せ10兆円!
雇用創出は11万人! なんて言っていますが、
いやいや、ネイチャービジネスだって、これ、
かなりイケるんじゃないでしょうか!?

生物資源は化石燃料と違って、上手に活用すれば持続利用が可能です。
経済的にも豊かになりながら自然もキチンと守る、
そんな理想的な社会ができあがっていくことに期待大です!

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