情報社会と法律のビミョーな関係

第9回 もしネットの買い物でトラブったら?

2009.04.22 WED

情報社会と法律のビミョーな関係

友人のカメラマンがネットでカメラバッグを買った。
ドイツ製のかなりいいものらしい。

「新品」との表示があったので安心して購入したのだが、
手元に届いた現物には、なにやら傷が目立つ
業者に問い合わせてみると
そこは小さな販売店だった。

問い詰めて分かったのだが、
送られてきた商品は「展示品」だったらしい。

「でも、新品なんですよ」
と弱々しく主張する店主の声に負けて
「そうですか」
と電話を切ったという。

ネットショッピングでは珍しくない話だ。
ということで、今回はインターネットでお買い物をする場合のあれこれの巻!


商品写真では小さな傷をごまかせても、相手の手元に届けば結局発覚するのだ。だからこそ、事前の告知が大切。そこを怠るとトラブルに発展しちゃう可能性が出てくるのだ

ネットショッピングでありがちなトラブルって?



最近ではごくごく当たり前になっているネットショッピング。総務省統計局の調査によると、二人以上の世帯の場合、ネットショッピングでの年間支出総額は、2002年で約1万3,000円だったのが2007年には約3万9,000円にまでアップしているという。

たったの5年で3倍増というのはけっこうすごい伸び率だ。でもこれにともなってトラブルも増えているようだ。現に筆者の周りでも「ネットショッピングで想像と違うものが届いた」という話をよく聞く。

ここでふと考えた。ネットショッピングでのトラブったときって、どこまで文句をいうことができるのか? 法律上はどうなっているのかを、インターネット関係の法律問題に詳しい弁護士の鎌田真理雄氏に聞いてみた。

「注文したものが想像と違っていた。という場合、想像って部分が問題になりますよね。例えば色みが違うというとき、色合いがとても重要な商材は別として、一般的には業者の責任を追及するのはちょっと難しいと思います。微妙な色合いが想像と違っていたとしても、パソコンモニターの具合もあるでしょうし、人によって色の感じ方も違うでしょう。一方で、100人が100人赤色と認識できるパーカーを注文して、黒色がきたら品違いで契約を解除できますけどね」

なるほど。じゃあ、例えば買ったパソコンのボディに傷がついていた、という場合はどうなるの?

「法的には、目立たないところに強度などに影響の出ないようなわずかな傷があったという場合、操作や機能上問題がなければ交換や返品の対象はなりにくいでしょう。目立ちやすい大きな傷だと話は別ですが。でも、どこからが大きな傷なのかという明確な線引きは難しいところだと思います。ですが、新品とうたわれていたのに、それが中古品だったら契約の解除は可能です」

その場合、どこまでこちらの主張が通るのだろうか? 例えば手元のパソコンが壊れて仕事ができなくなった、だから新しいパソコンを注文したのに、たまたまそれが壊れていた。新しいパソコンが来るのを待っている間、仕事ができないのでその分の保証をしろ! みたいな主張は認められるのかなぁ?

「そこは難しいでしょうね。単純な売買であれば賠償される上限は同等額の金銭か、代替物との交換ですね。法律とは別に、各社の対応として実務上は迷惑料的な金銭を支払う場合もありますが」

ふーむ、文章を書くときは100%パソコンを使っている筆者などは気をつけなければいけないわけだ。文明の利器に頼りすぎるのも問題だなぁ。

と、こんな反省は置いといて。例えば、中古のパソコンを買うときなどによく見かける「ノークレーム・ノーリターン」という言葉。あれってすごく気になる。『表面に傷があり、2年ほど型落ちしてます』など、商品の説明が書かれていて、この商品でよければ買ってください、その代わりノークレーム・ノーリターンでお願いします。というような場合。本当にノークレーム・ノーリターンでなくちゃならないの?

「これも場合によりますね。例えばジャンク品のような商品がありますよね。電源が入るか入らないか分かりません。という表示があるモノを買って、電源が入らなかったので返品しろ、というのは通りません。動くと書かれているのに全然動かない場合や、動くけど途中で止まってしまうというような場合は返品などの対象になる可能性があります」

法律を振り回せば、なんでもかんでも主張が通ると思ってはいけないみたい(あたりまえか)。消費者と事業者がいい感じに折り合いをつけやすくするためにいろいろな法律があるのだ。すべての人がそこんところを納得すれば、世の中のトラブルも減るんだろうなぁ、と思うのである。
錯誤(勘違い)が認められるといっても、そこにはいろんな制限がある。「この株は上がると思って買ったのに、下がっちゃった!」っていうのは錯誤じゃありませーん、ので気をつけてね

ネット上での取引でうっかりミス!おとなしく大損するしかないの?



ネットで買い物っていろいろあるけど、株もそのひとつだ。数年前、とある会社が新規上場した際に、証券会社の担当者が「61万円で1株売り」とすべき注文を「1円で61万株売り」と誤ってコンピュータに入力してしまい、大きな騒ぎとなった。当然、証券会社は大損をし、それに乗じて大もうけした人もいる。

これって他人事のようでそうではない。R25世代も株のネット取引に挑戦したいと思っている人も多いだろう。例えば極端な話、100株を10万円で売るつもりが、10万株を100円で売ってしまったら? この場合、キャンセルとかはできるのだろうか?

「ここでは額の大小はちょっと置いといて、まずは原則論からお話します。インターネット取引に限らず、株取引はすべて自己責任ですよね。そもそも、いろんなリスクがあるからこそ、リターンも大きいわけですから」

そ、それはそうだけど、やっぱり僕らシロートには。

「ネットでの株取引というのは性格的に誤発注が起こりやすいですよね。ボタンひとつの操作で数字が違ってきちゃうわけですからね。契約について定めている民法では錯誤、つまりユーザーの勘違いがあれば、原則として契約を無効にできるとしています」

そっか、だったら勘違いしても安心だ。

「でも、自分に似合う服を買ったつもりなのに実際には似合わなかった、というような勘違いは民法上の錯誤の対象からは除かれます。また、どんなうっかりミスでも錯誤として認められるわけではありません。民法では、ユーザーに大きな過失がある場合は錯誤が認められないという例外を条文のただし書により定めています。電子契約法は、一定の条件のもとでは、そのただし書を適用しないことによって、原則として消費者による操作ミスや記入ミスによる契約は無効になると定めているわけです」

それそれ、その言葉を待っていました! ふーっ、一安心。でも消費者限定なの? 株取引を行う個人って、生計を立てるためにやっているデイトレーダーもいれば、親にいわれて「お年玉を使って試しに買ってみました」というお子様までいろいろいるけど。

「個人が株取引を行う場合であっても、事業として行っていれば消費者じゃないと判断されます。株取引によって利益を出してさらに投資する。生計を立てたり他の事業資金にする。というような場合、事業性が認定されやすいといわれています」

本格的にデイトレードしている人は、電子契約法で保護されにくいってことか。

「でも、事業者側が確認措置を設けていた場合、入力ミスはユーザーの責任になりやすいですよ」

えーっ、そ、それって?

「インターネットで株取引をする場合、証券会社は最終的に取引完了となる前に、すべての入力内容を確認する画面を用意しているのが一般的です。取引画面で入力したのちこの内容で大丈夫ですか?というような確認をうながす画面のことです。このような確認作業画面を用意していないと思い違いでしたごめんなさいという錯誤の主張が可能になります。確認画面でOKボタンをクリックすれば契約成立、以降のキャンセルはできません。これは株に限らず普通の商品をネットで購入する場合も同じですよ」

ふーむ、ではどんな場合に錯誤が認められたりするのかなぁ?

「例えば、最近ではなくなりましたが、OKボタンの下に小さく確認画面が必要な方はこちらをクリックしてくださいみたいな一文をさりげなく置いていようなサイトですね。気付かずに、OKを押してしまいがちでしょ。その場合は、有効な確認措置として認められないかもしれません。でも細かな規定への同意手続きはともかく、商品の価値や個数のような事項についてまで確認画面を省略するケースは今では少ないですよね」

実店舗であれば、お金を払って商品を受け取る、という実際の行動があるから分かりやすいが、ネットの場合、契約成立のタイミングが分かりにくい。またネットでは瞬間的に契約が成立してしまいそうなイメージがあるので、レジでお金を払いそうになったけどやっぱりやめます、みたいなことができにくいように思ってしまう。だからこそ業者は確認画面を用意しているのだ。実店舗でもネットでも、最後の最後まで確認を怠らないことが肝要なのである。 そもそも契約とは、
対等な関係にある者同士がお互いに納得して合意したからこそ、
その内容に従ってそれぞれが権利を持ち、義務を負うことになる。

でも事業者と消費者の関係は、単純に対等とは言い切れない。
なぜなら一方はプロで、一方はアマだから、
財力とか情報力とか社会的なチカラに差ができてしまうのだ。

プロ側が商品について十分な情報を提供して、
分かりやすいインターフェースを設けているのであればよいのだが、
そうではないショッピングサイトも多々ある。

だからこそ、消費者を「錯誤(思い違い)」から守るためにできたのが
「電子契約法」だ。

裏を返せば、法律を作らないといけならないほど、
ネットでは思い違いが発生しやすいのである。

読者の皆さんも思い違いがトラブルを招いた経験はありませんか?
お便り待ってまーす!

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