エコと経済のビミョーな関係

第4回 農業ブーム到来! ってホントっすか?

2009.05.12 TUE

エコと経済のビミョーな関係


40%前後で低迷を続ける食料自給率のなかで、コメは100%をキープする優良選手。しかしその裏には、40年近く続く生産調整(減反)での生産抑制、年間77万トンも輸入しているミニマムアクセス(MA)米、778%という破格のコメ関税など多くの問題を抱えている。

自立が課題の農業骨太な若人たちに期待大!



3Kのイメージが拭い去れない農業を、男性向けのクオリティ・マガジン『BRUTUS』が扱ったことは個人的に事件でした。「みんなで農業。」(2007年2月2日発売号)と題された特集では、若い男女が満面の笑みで農業に勤しむ姿が取り上げられているではないですか! うん、楽しそうだし、しかもちょっとオシャレっぽい。ブームとまではいかなくても、少なくとも世間の注目を集めていることは間違いないみたい。

ほかにも、農業に勢いを感じる例がチラホラ。

都市と農村の交流をテーマに渋谷・代々木公園で開催されている東京朝市「アースデイマーケット」も若者であふれているし、ギャル起業家で知られる藤田志穂さんも、次なるターゲットを農業にロックオン。ギャルが作るお米を「渋谷米」として売り出す計画が進行中だとか。

そんなこんなで、元気がないといわれてきた日本の農業も、最近では様々な新しい試みがなされて、元気ハツラツ! な印象を受けるのですが、はたして実態は?
現場に詳しい、農業ジャーナリストの青山浩子さんに伺いました。

「一般的な農家は相変わらずとても大変だと思います。特にここ1~2年は、原油高のあおりで、燃料費のほかハウスや梱包などの資材費まで軒並みコストが上がり、赤字に耐え忍んでいる状態です。主業・兼業を含めた農家の平均年収は約480万円ですが、そのうち農業そのもので得られた収入は平均で120万円程度というデータもあります」

農家なのに、本業の収入の方が少ないってことですか? それはチト厳しい。なんで農業では儲けられないんでしょう?

「戦後の農作物が不足していた時代から、今は逆に余ってしまうほどの時代になりました。そうした過程で、国や農家が経営的な思考、ノウハウを蓄積してこなかったことが一番の理由です。また、食文化の多様化の影響もあります。例えば昔はデザートといえばミカンやカキなどの農作物でしたが、今はケーキもプリンもありますから、そうした消費者の食生活の変化も大きく影響しているでしょう」

あぁやっぱり農業の現状は厳しいんですね。

「農業の世界も深刻な高齢化で、今後、農家の戸数が激減する心配があります。でもその一方で、最近は農業に従事する人のなかに骨のある若者が増えてきていることは実感していますよ」

青山さんによると、ひと昔前の若者には「田舎暮らしに憧れて」「自給自足生活がしたい」といった参入への動機が目立ったそうだけど、最近は「経営として成り立つ農業を確立したい」「体感することで環境問題と向き合いたい」といった志を持って農業を始める若者が目立ってきたとか。

ん? でも農林水産省発表の資料によると、平成19年の新規就農者数は7万3460人と前年比で9.3ポイント減っているみたいです。でもそのうち、雇用就農者数は12ポイント増の7290人。これってどういうことですか?

「農業は、最初に土地代や機械代に何百万円もかかることがあるなど簡単に始められるものではありませんし、地域の人たちとの信頼関係をつくることも重要です。そこで近年増えているのが、農業関係者を中心に組織された農業生産法人に就職してノウハウや人脈を獲得していく方法なんです」

農業生産法人とは、生産からマーケティング、営業、販売を分担して行うことで収益を上げている、近年大注目されている農業形態。雇用創出など地域活性化の役割も期待されているんだそうです。

「若者もだんだんと農業のおもしろさに気づいてきたのではないでしょうか。補助金や輸入作物への高い関税などで守られ聖域扱いされてきた農業が、ようやく今、自分でドアを開け始めた感じですね」

私たちの食生活に直接かかわってくる大切な農業。それが元気になるのはとってもうれしいことです。ドアでも窓でも、どんどん開けちゃってください!
無農薬&高栄養価な作物を安定生産できる植物工場は、3Kのイメージも払拭のキレイさ! “エコ作”栽培では、養液を捨てずに繰り返し使う、栽培時に使用する発泡スチロールを完全リサイクルする、外葉などの屑をミミズ業者にエサとして引き渡すなどでごみゼロを目指し、環境配慮もしっかり行っている。

これからの野菜は「栽培」じゃなくて「製造」!?企業進出が加速する植物工場



元気をなくしていた農業がいま、若者を中心に世間から注目を集め始めています。加えて、企業の進出も活発な様子。どんな企業が野菜を作っているのか調べてみると、大手食品関連メーカーの名前が見つかります。そんななか、ちょっと異色な「JFEライフ」という企業名を発見。ん? JFEって、鉄鋼関連企業ですよね?

「JFEライフはJFEの総合サービス会社です。鉄冷えといわれた1980年代に異業種への拡大でいろいろな事業を行ったのですが、その際、ウナギやテラピアの養殖といった食品分野にも進出しています。その一環で野菜づくりもスタートしました。現在は、兵庫・三田に1つ、茨城・土浦に3つ、計4つの植物工場で野菜の製造をしています」

そう答えてくれたのは、JFEライフ・野菜事業部営業部長の川崎海さん。エコ作のブランド名で5種類のリーフレタスを栽培しているそう。

具体的に、どんなふうに製造しているんですか?

「一般に植物工場は土を使わない水耕栽培で、光源には蛍光灯、高圧ナトリウムなどがありますが、当社の場合はガラス張りの建物のなかで太陽光栽培をしています。水耕栽培の野菜というと、なよなよして栄養価が低いイメージがあるかもしれませんね。でも、ミネラル成分のほか窒素・リン酸・カリといった栽培に欠かせない栄養素をバランス良く添加した養液で栽培するので、天日と土で栽培する露地野菜と比べて栄養価が高いものもあります」

JFEライフでも、養液をいい状態で根が吸い上げるよう研究を重ねてきた結果、ベータカロチンやビタミンAが露地栽培のレタスの5~10倍にもなったといいます。エコ作を食べてみると、葉もシッカリしていて野菜の味も濃い! これなら、植物工場生まれの野菜も市場でバッチリ支持されるでしょう!
「我が社の場合、年間約800万パックを生産し、売り上げでは2008年度に8億円強、2009年度に11億円を見込んでいます。都内デパートではプライベートブランドとして扱っていただいているほか、全国の大手小売店、百貨店などにも置いていただいて販路を増やしています」

売り上げと販路を確保するには、しっかりしたマーケティングが必須とのこと。メーカーであれば当たり前のことではありますが、その当たり前を行ってこそ農業もビジネスとして成り立つというわけですね。
ちなみに、JFEライフでは今後、マーケティングに基づく新商品の投入を年に1~2品種程度行っていくとのことで、この5月には、サラダ用ミズナとホウレンソウが陳列棚に並ぶ予定なんだそうです。

全国に50社程度あるといわれる植物工場企業は、地域雇用の創出だけでなく、食料自給率アップへの貢献も期待されています。農林水産省と経済産業省も今年、「3年後に150社まで増やす」という計画を打ち出しました。
でも現状は、企業が農地を買うことは許されていないため、建築基準法にのっとった大がかりな施設で栽培するしかありません。当然、露地野菜より割高になって普及にブレーキがかかる可能性も。こういった企業の試みが今後どれだけ成長するかどうかは、国の本格的な枠組み作りにかかっている、といえそうです。 取材を進めるにあたって、
農業が元気になる要素のひとつに「販売」があることを感じました。
消費者と直接触れ合う機会が多ければ多いほど
生産意欲に結びつく、というのは
ものづくりにおける共通したロジックなのかもしれません。

かといって、農家がみんな直売を始めたら始めたで、
安定供給が崩れたり、価格変動が激しくなったりと
支障が出てしまうことも考えられます。
なかなか一筋縄ではいかない複雑な問題をはらんでいるんですね、農業って。

と、他人事じゃありません。何事にも腹具合は大事。
腹が減っては戦はできぬ! ですから。
あらためて日本の農業について
みんなで向き合う必要がありそうですな。

さて、当コーナーでは、
エコに関するちょっとしたギモンや
気になるトピックなどの投稿も募集中です。
お待ちしていま~す!

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