情報社会と法律のビミョーな関係

第10回 ネット時代にハンコってどうなるの?

2009.05.13 WED

情報社会と法律のビミョーな関係

久しぶりに実家に帰ってみると
回覧板が届いていた。

父親が自分のハンコを押して次の家に回す。
その作業を見ながら
「もうすぐ、回覧板もメールで届くようになるのかなぁ」
とつぶやくと、

「そんなときはハンコはどうするんだ?」と父親。

「え、う、うん、どうだろうねぇ」
と口ごもってしまった筆者。

よくよく考えると、これってけっこう問題である。
日常生活で便利なハンコと
やっぱり便利なインターネット。

便利同士が合体すれば、さらに便利になりそうなのだが、
二つが同居している世界ってあんまりイメージがわかない。

ということで、今回はネット時代のハンコについて
いろいろと調べてみた。


ハンコって急に必要になっていることがある。三文判で済めばいいんだけど、ちょっと変わった苗字だとなかなか置いていない。筆者の「末並」という苗字もまずないので、電子ハンコに期待大。

ペーパーレスのネット時代にハンコって生き残れるの?



宅配便がきたらポンと押して、請求書の片隅にポンと押して、領収書にもポンと押してといった具合で日常的に便利に使っているハンコ。

でも、インターネットが普及していろんな文書が電子化された現在では、ハンコってその立場が微妙な気がする。お国の方針も電子政府で効率化!という感じでネットの活用を奨励し、ペーパーレスの実現を思い描いている様子。

でも、実際のところは会社のちょっとした内容の稟議書なんかもやっぱりプリントアウトして、自分のハンコを押して、上司に見てもらって、その人のハンコをもらって、という作業がフツーだ。IT時代にこの風習はどうなの? そろそろ新しいカタチのハンコができてもいいんじゃないかなぁ?

ということで、ハンコのことならやっぱりシヤチハタだろう、と見切り発車的にお話を聞きに行ってきた。

デジタルの時代にアナログなハンコって、大丈夫なの?

「大丈夫ですよ。当社では電子の印鑑を、いろいろな商品として展開しています」
と説明してくれたのは、シヤチハタ営業課の鈴木倫俊さん。

シヤチハタが扱う「電子印鑑」は、パソコン上で動くソフトウェア。実際にモノとして形があるわけではない。でも、エクセルで作った文章の上にポンと押して、アナログのハンコみたいな印影を残すことができる。これをつかって「ハンコを押す」という作業をすることで、勝手に文書を編集できなくしたり、あとから加えた変更履歴が記録されたりできるようになっている。

べ、便利! これさえあれば、わざわざパソコンで作った書類を印刷して、ハンコを押して上司の机に置きに行く手間がなくなるんですね。本格的なペーパーレスの時代が到来するぞ。

と、鼻息を荒くした瞬間、鈴木さんの声が響いた。

「でもこれだけでは完全ではありません。稟議書など社内だけで用いる文書には使用できますが、正式な文書、つまり役所へ提出する文書や他社との契約書などには使えないのです。電子印鑑はあくまでも印鑑登録をしていない日常的に使う認印という感じですね」

つまり、大きな契約のときに必要な実印にはなりえないってこと?

「うーん、電子印鑑単体では実印として認められることはありませんが、電子署名法にそって手続きした、いわゆる電子署名と組み合わせることで同等の効力を持たせることは可能です」

2000年に施行された「電子署名法」によって、国が認定した機関に登録した電子署名が公的な効力を持つようになった。これによって電子署名された電子文書は、署名をした本人の意思で作成したものであることの証明になり、裁判でも証拠として利用できる。

これがリアル世界のハンコくらい普及すれば、請求書とか領収書、そのほか税金のいろいろな書類などなど、すべてパソコン上で完結するようになり、ついに本格ペーパーレス時代が到来する!かもしれないのだ。

でもねぇ、これって例えば書類を送る側だけがやってもダメで、受け取る側も一斉に態勢を整える必要があるのだ。世間を見渡した感じでは、まだちょっと先の話になりそうだ。
「画面に直接押すことができるデジタル印鑑」があるといいなぁ、でもそんなの夢物語だぁ。なんて思っていたら、ペンタブレットのペンの部分が印鑑になった製品が実際にあるとか。専用のタブレットがあれば、リアル印鑑とほぼ同じ感覚でポンポン押せるのである

デジタルのハンコ“電子署名”ってどんなところが便利なの?



Aさんから届いた電子メール。これが本当にAさんから来たものなのか、それとも誰かがなりすましているのか? 実は検証するのは簡単ではない。差出人の名前やメールアドレスは書き換えることができるので、Aさんから届いたようであっても、全くの別人からである疑いはぬぐえないのだ。

このようなメールの欠点を利用した、架空請求などの詐欺事件も起きている。

そんな被害を防ぐ手段の一つとして期待されているのが「電子署名」だ。以前から一部の技術者やセキュリティの専門家の間では使われていたものだが、2000年に施行された「電子署名法」によって法律上も有効な本人確認の方法として認められるようになった。

でも、コピーや編集が簡単にできてしまうデジタルデータで、「本人であること」と「改ざんされていない」ということを証明するのは、とても難しそうだ。いったいどうやっているんだろう?

「現在、電子署名の信頼性を担保する技術として、公開鍵暗号方式というのが広く利用されています」

と教えてくれたのは、ハンコでおなじみのシヤチハタの鈴木倫俊さん。シヤチハタでは普通のハンコだけでなく「デジタルハンコ」といえる電子署名システムも開発している。

公開鍵暗号方式とは、自分しか知らない秘密鍵と、周囲に公開する公開鍵の2つの鍵を用意する暗号化のシステム。詳しい仕組みは、とっても複雑なので省略するけど、現在のセキュリティシステムでもっとも多く使われている暗号化方式だ。

それを利用した電子署名は何かと便利そうだが、シヤチハタの鈴木さんの話では、普及はなかなか進んでいないらしい。残念だなぁ。

「でも当社のお客さまで淺川組という建設会社があるのですが、こちらは取引業者80社と取り交わす契約書を電子化したことで業界でも注目されています」(鈴木氏)

ええ、そんな会社があるんだ!

「和歌山県を中心に全国で公共工事から個人住宅までを幅広く展開している淺川組は、取引会社を巻き込んで電子契約を推進しています。全契約社数の30%にあたる取引先との契約をデータでやり取りできるので、スピーディーなのはもちろん、印紙が不要なのでコスト削減にも大きく寄与していますね」(鈴木氏)

そっか、やっぱり便利だ。筆者も、がぜんやってみたくなった。

ということで、早速この原稿のギャランティーの請求書をメールで送ってみようと電子証明書を取得して、R25.jp編集部に問い合わせてみた。

ところが「編集部では、まだ電子署名が受け取れません」との返事が。筆者の電子署名ライフは、まだまだみたいです。 ハンコはアジア圏の文化で、
欧米ではサインが主流だ。

なんて思い込んでいたけど、
とあるアメリカ映画の中で
サインのハンコを押すという話題が出てきてびっくりした。

つまり、手書きのサインを
そっくりそのままプリントしたスタンプが存在するのだ。

要するに人間はってぇのは不精者なのである。
だからこそいろんな便利グッズが次々と開発されるのだ。

インターネットだってそのひとつである。

ところが、その便利を享受するためには
これまたいろんなスキルが必要で、
それを手に入れるための時間とか労力がかってしまう。

不思議なもんだなぁと思いつつ、
請求書の片隅にハンコを押すボクなのである。

関連キーワード

注目記事ピックアップ

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト