エコと経済のビミョーな関係

第5回 日本の再生可能エネルギー事情って?

2009.05.26 TUE

エコと経済のビミョーな関係


技術革新でどんどん進む再生可能エネルギーの利用。夢もふくらみます。「エネルギーや環境でどうしても困ったら、人類には太陽光があります。送電網で世界の砂漠とつなげば、全世界の電力を太陽エネルギーだけで供給することも可能です」(櫻井啓一郎さん談)

日本は再生可能エネルギーの宝庫ポテンシャルを生かすのだ!



いっとき我が家にも、「太陽光発電パネルをつけませんか?」なんて、業者がやってきたことがありました。魅力的ではありますが、なんせお金がかかりすぎ。温暖化対策に貢献!なんて言ってる前に、我が家の経済が破たんしちゃいます。

「じゃ、せめて普段使っている電気を風力発電に」と思っても、現状、一般家庭は電気の種類を選べません。そんなこんなで、かなり積極的なアクションをしない限り自然エネルギーを使う機会ってない気がします。

「再生可能エネルギーの普及が日本では止まったままあまり進んでいないせいですね。日本の電力需要に再生可能エネルギーが占める割合は10%で、ずっと横ばいです。一方世界では急速に伸びていて、ドイツではここ10年で4.8%から14.8%まで普及しています。2030年には電力の半分をまかなう計画もあり、明確な目標のない日本を引き離して今後ますます成長していくでしょう。ちなみに、エネルギー源として論じる場合は自然エネルギーではなく再生可能エネルギーと呼びます。森を伐採したまま不毛の地にしてしまったら、自然エネルギーではあっても再生可能ではありませんからね」

と語るのは、産業技術総合研究所研究員の櫻井啓一郎さん。な~るほど。再生可能でなければ単なる環境破壊の恐れもあると。

櫻井さんによれば、再生可能エネルギーに向けられる世界の注目度は国際エネルギー機関(IEA)が昨年発表した報告書からも読み取れる、とのこと。「2050年には世界の発電量の半分を再生可能エネルギーに置き換える必要がある」というもので、枯渇性エネルギー寄りの組織として知られるIEAのこうした発表は大きな驚きだったといいます。

「化石燃料依存だった石油、自動車、鉄鋼などの業界もこぞって再生可能エネルギー事業に参入しはじめています。石油メジャーのshellはバイオ燃料に注力しはじめましたし、ノルウェーの石油会社StatoilHydroは洋上風力発電に投資しています。ホンダは太陽電池の生産・販売に、神戸製鋼所は太陽光発電システムの販売に乗り出しました。新日本製鐵も太陽電池向け多結晶シリコンの量産を開始する予定です」

日本企業も注目しているみたいなのに、なんで肝心の普及率が伸びていないんでしょう?

「経済への悪影響ばかりに注目した議論が多かったからだと思います。でも他国では、温暖化対策そのものによって新たな経済効果や雇用が生み出されるなど、悪影響を上回る利益も得られています」

たとえば、ドイツ環境省によると、年間43億ユーロ(約5600億円)という投資はしているものの、2007年の再生可能エネルギーによる経済効果は250億ユーロ(約3兆円)、関連雇用は約25万人。加えて、枯渇性エネルギーの輸入量減少で約50億ユーロの節約もできちゃったとか。もちろん、京都議定書で約束しているCO2の削減目標もらくらくクリア。ゆくゆくは、目標を達成できない国へCO2排出権を売ってますます儲かっちゃう、なんて国も出てくるのかも。で、それを買うのは日本? いやいや、日本も頑張りましょうよ。

「実のところ日本は再生可能エネルギーの宝庫で、太平洋岸など日照量の多い地域や住宅には太陽光発電、温泉地などでは地熱発電、日本海側など風況の良い地域では風力発電、森林や農地の多い場所ではバイオマス発電など、地域ごとに適した技術があります。こうした現行技術の延長でも、電力需要の半分以上を供給できると見られているんですよ」

やればできそうじゃないですか! ちなみに環境省の発表によると、2030年までに総電力量の3割相当を生産する再生可能エネルギー設備を導入した場合、経済効果は最大64兆円、雇用創出は68万人になって、京都議定書基準年比8%に相当する年間約1億トンのCO2を削減できてしまうらしいですよ。

「温暖化対策だけでなく、経済成長の確保、エネルギー供給のすべてにおいて、再生可能エネルギーなら並立が可能なんです」

なら、早いトコやらなきゃ損ってことですね。さぁ、どうする日本!?
家庭に約3kWの太陽光パネルを設置する場合、初期投資は平均200万円。国の補助金制度7万円/kWと自治体独自の補助金制度、たとえば東京都の10万円/kWを併用すると、約150万円の設置費用になる。南向きなのに屋根の傾斜は東西の残念な我が家(写真)。3kWはのらないらしい……。

新制度、日本版FITは再生可能エネルギー普及の呼び水になるか!?



環境対策の目玉として世界中で動き出している自然エネルギー。ところが日本は後れをとってしまっている様子。経済成長や安全保障とも絡む問題だけに一筋縄ではいきませんが、いったい日本はどうするんでしょう?
持続可能な社会の実現に取り組む、地球環境イニシアティブ(GEIN)事務局の酒井正治さんに伺いました。

「日本でも、昨年からいろいろな動きが出てきました。2008年7月の洞爺湖サミット直前に当時の福田首相が出した福田ビジョンで、再生可能エネルギーがエネルギー政策のひとつの柱に位置づけられたのを皮切りに、同9月には経済産業省が太陽光社会の実現を目指した緊急提言を出しています。現在も国会で、再生可能エネルギーの導入に向けた大きな補正予算案が審議されているところです(5月21日現在)」

ほう。
流れとしてはいい感じですが、なんかこう、もっとガツン! とした対策を打ち出したいところですね。

「世界で導入が進んでいる固定価格買取制度(FIT:フィット)を日本でも創出するという発表があり、現在審議が進められていますよ」

おっ、ドイツが始めた再生可能エネルギーの促進政策ですね。再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が長期間高額で買い取ってくれるっていう。

「ただ、ドイツのFITと日本で検討しているFITにはいくつか違いがあります。ドイツでは家庭のほかオフィス、工場など発電設備をもつ場所すべてが対象となっているのに対し、日本は主に家庭、エネルギーも太陽光発電に限定されています。電気の買取価格はドイツが約3倍、日本は約2倍の予定です。買取保証期間にも違いがあり、ドイツは20年、日本は10年です。買取対象の電気は、ドイツが発電量全量であるのに対し、日本では家庭で使った残り、つまり余剰分のみとなっています」

同じ「FIT」でも随分違うんですね。ドイツでは牧場などに発電設備を設置したらかなりの儲けになったなんて話も聞きますが、日本の制度だとそれはまずムリみたいです。

「欧州での大きな進展の背景となった大規模太陽光発電システム(メガソーラー)の拡大に対しては、残念ながら日本版FITが呼び水となることは期待できません。それでも、国や自治体が設けている補助制度との併用が可能ですし、住宅での普及においては大きな一歩といえるのではないでしょうか」

ところで、2倍の価格で買い取ったら電力会社が火の車にならないですか?

「費用は国民が負担します」

マジ!?

「2020年に太陽光発電の導入量を2005年の20倍程度に引き上げるという政府目標のもと、経産省が試算した数値によると、約2.6人の標準的な生活をする家庭で月に最大100円程度、電気料金に上乗せする形になります」

月100円ですか。この金額が大きいと感じるか小さいと感じるかは個人による、といったところですね。

「負担ではなく未来への投資と考える意識が必要かもしれませんね。今後の課題としては、費用対効果のみでなく、利益の配分や負担が広く公平性・公正性のあるものになるよう制度設計していくことです。私たちも関心をもって制度づくりに参加していくべきでしょう」

じゃぁ、思い切って太陽光パネルをのせちゃうか。うーん、でも、もうちょっとパネル設置にお得感が出てこないうちは、筆者はまだのせるところまで踏み切れないかも。みなさんはどうですか? 次世代エネルギーとして期待される再生可能エネルギー。
技術的にはどんどん進化して普及態勢が
整いつつあるようですが、残る問題は費用面。
大きな経済効果や雇用創出効果も期待できるとはいえ、
莫大な費用がかかるわけですからね。
100年に一度といわれる経済危機のなか、
国や企業にそれだけの体力と覚悟があるかどうかも
ポイントといえそうです。

あ、我が家の経済力と覚悟も。

さて、当コーナーでは、
エコに関するちょっとしたギモンや
気になるトピックなどの投稿も募集中です。
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