情報社会と法律のビミョーな関係

第11回 電子マネーってところで何者なの?

2009.06.03 WED

情報社会と法律のビミョーな関係


気がつけた手元にはICカード・ICチップ内蔵ケータイが常にある状態。それも1個や2個どころじゃない人も多いはず。うっかりと現金を忘れても、移動も食事もちょっとした買い物も、すべて電子マネーで間に合ってしまう。

電子マネーと“お金”はいったいナニが違うの?



コンビニやスーパーの買い物から電車の運賃の支払いまで、今や日常生活にすっかり定着した感のある電子マネー。

でも、わざわざ「電子マネー」なんていうということは、やっぱりお金とは違うモノということなの?

そこで電子マネーの仕組みに詳しい弁護士の藤池智則氏に疑問をぶつけてみた。

「電子マネーはマネーといわれるのでお金の一種だと思われていますが、実際にはそうではありません。法律でお金といえるのは日銀か政府が発行したものだけです。電子マネーとは、利用者がお金を払った分に相当する価値をICカードなどに電子的に記録し、それで買い物ができる仕組みのことです」

ふむ。では、現金と電子マネーにはどんな違いがあるの?

「一番の違いは、お金ならどんなものの支払いでもできますが、電子マネーの場合は発行した事業者か、そのサービスの加盟店でないと買い物ができません」

なるほど。お役所でなくて企業が発行するということは、いろんなお店で使えるポイントサービスみたいなものなんですね。もしかして、家電量販店などで買い物をすると貯まるポイントも、ひょっとしたら電子マネーなの?

「今のところポイントサービスはあくまでも企業が提供するおまけという扱いなので、電子マネーとは異なります。電子マネーはプリカ法という法律で規制されていて、電子マネーを発行するには役所への登録が必要なほか、全利用者がICカードにチャージした残高の半分に相当する金額を供託金として常に準備しておく必要もあります。一方、量販店のポイントサービスには、今のところそういった規制はありません」

えー、じゃあ某量販店のポイントをどんなにたくさん貯めていても、そのお店がつぶれたら銀行預金みたいには保護されないってこと?

「はい。ですが、そういったポイントサービスも電子マネーと同じように規制するべきだとの議論もあります。今のところそれほどの規制は必要ないという意見が強いですが。しかし、これからポイントサービスがさらに普及して高度化すれば、法律も変わってくるでしょうね」

なるほど。ところで、電子マネーに戻ると、もっと実際のお金みたいに扱えるようにはならないんですか?

「電子マネーをお金に近づけることが目的というわけではありませんが、電子マネーにかかわる新たな動きとして、2009年の臨時国会でまもなく可決する見込みの資金決済法案があります。この法案の柱のひとつが、金融機関以外の企業にも資金移動業者としての為替業務を行えるようにするというもの。これまで、口座から口座へお金を振り込むような為替取引は銀行しかできなかったのですが、一定の少額決済・少額送金ならば銀行ではない一般企業でも資金移動業務が可能になります」

この法案と電子マネーにはどんな関係が?

「現行法では電子マネーは一部の例外を除いて払い戻しできないのですが、新法では電子マネー事業者が資金移動業者として登録すれば払い戻しも可能になります。もちろん一般企業に銀行のような業務を許すのですから、一方では規制も増えることになります。先ほど説明した電子マネー事業者が準備しなければならない供託金の額は、これまでは全利用者がチャージした電子マネー残高の50%で済んでいましたが、この法案が成立すると100%になります」

電子マネーだけでなく、お金を扱うルールもいろいろと変化していくんですね!
将来、コンビニから電子マネーを使って送金ができるようになったりするのかもしれない。あと欲を言えば公共料金の支払いなんかも、電子マネーでちゃちゃっとやれるようになれば本当に便利! そこまでくると本格的にキャッシュレスの時代になるのかも…

電子マネーがお金になる日はやってくるのか?



いつの間にかすっかり定着した電子マネー。法律上はお金ではないけれど、時と場合によってはお金以上に便利な存在でもある。このままもっと便利になって、さらに多くの人が使うようになったら、そのうち法律でもお金と同じような扱いになったりして?

「生活の相当部分を電子マネーでまかなえるようになれば、そうなるかもしれませんね。ただし、振込送金や企業同士の決済、外国への送金といった為替業務は、今のところ銀行しかやってはいけないと法律で定められています」(弁護士の藤池智則氏)

その為替業務という言葉が気になっていたのですが、それって?

「簡単に言うと、利用者の依頼で現金輸送以外の方法でお金を受取人に送る業務です。また、チャージした残高を自由に払い戻せる仕組みは、他人のお金を預かることになるので 出資法に抵触する恐れもあります。ですから、電子マネーは一部の例外をのぞいて払戻ができません」

なるほど、これが電子マネーとお金の決定的な違いなんですね。

ちなみに、たとえばボクがお金を拾って届けた場合、持ち主が見つかったらその人に謝礼を請求できるけど、電子マネーの場合はどうなんですか?

「請求できますが、それはお金に限ったことではありません。遺失物法には物件の返還を受けるときは、物件の価格の100分の5以上、100分の20以下に相当する額を拾得者に支払わなければならない、となっています。ですから、1000円をチャージしたEdyのICカードだったら、1000円に相当する額として計算すべきでしょう」

では、最後にもうひとつだけ教えてください。お金といえば偽札が付きものだけど、電子マネーのチャージ額を不正にアップさせたらどんな罪になるの?

「偽札は通貨偽造罪になりますが、電子マネーの場合は支払用カード電磁的記録不正作出等の罪に問われます。もともと商品券やテレホンカードなどを偽造した場合は有価証券変造罪にあたるのですが、有価証券というのは額面の記載があるものを指すんですね。でも、電子マネーやクレジットカードは、表面に金額が記載されていませんし、支払いに利用できる金額が状況によってバラバラですよね。それに対応するために、つくられた法律なんです」

お金に近いようで、やっぱりお金とは異なる点も多い電子マネー。法律のほうも、電子マネーの浸透にしたがって、新たに整備され続けていくんですね。 本稿でご登場いただいた藤池先生がおっしゃっていたのだが
電子マネーを含め、便利なグッズがどんどん開発される今日この頃
法律の見直しもどんどんスピーディになっているらしい。

「でもやっぱり現状に追いつくことはありません、
なぜなら、法律とは現状を説明する道具なのですから」(藤池氏)

まぁ、そりゃそうだ。
そもそもお金に関する法律だって
お金が発明された後に作られたものなのだ。

昨日までは合法でも、今日からは違法
といったことは日々おきうるわけである。

電子マネーは、ぼくらの日常生活に
なくてはならないものになりつつある。

だからこそ、法律の見直しなどにも
もっともっと敏感になるべきなのだろう。

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