村おこしの経済学

第1回 幻の「つちのこ」を捕獲せよ!

2009.06.05 FRI

村おこしの経済学


これがメインステージ。「つちのこ」の名を冠すイメージからは遠い、ほのぼのとしたお祭りです。ステージプログラムは15時ごろまで続き、なかにはノコギリ使った丸太の早切り競争など、田舎ならではの演目も!

古くから伝わる幻の蛇…つちのこで注目を浴びる村



UFOやネッシーなど、オカルトの類いはやっぱりロマンをかき立てるものだ。「本当に存在するの?」という素朴な疑問は期待の裏返しで、ネッシーなんてその正体を夢想するだけでなんだかワクワクするというのは今どき筆者だけ?

いやいや、オカルトの持つ吸引力は、21世紀の世にも健在だ。オカルトは時に、村おこしの格好の材料にもなる、というのが今回のテーマ。全国にはカッパやら座敷わらしやら、地元の言い伝えを地域振興に活用している例が少なくないのだ。

なかでも幻の怪蛇・つちのこは、今日でもたびたび新聞や週刊誌を騒がせるアツい存在。棲息地帯として名高い地域が全国に複数あり、岐阜県加茂郡の東白川村はその筆頭格だ。未確認生物(UMA)ファンおよび研究家から大いに注目され、村の振興にひと役買っているというから面白い。

東白川村は岐阜県の東部、長野県のほど近くに位置し、標高1000m級の山に囲まれた自然豊かな小村だ。人口はおよそ2800人。まずは村の様子を、東白川村役場産業建設課の安江透雄さんに聞いてみた。

「林業では『東濃桧(とうのうひのき)』の産地として知られ、農業では『美濃白川茶』や『夏秋とまと』の生産が盛んです。しかし全国的な傾向に漏れず、人口減少や基幹産業の景気悪化は本村でも問題視されています。所得の安定など、生活が成り立つ環境づくりが課題です」(安江さん)
東白川村内の随所に立つ、つちのこ手配書と目撃地の目印。こうした材料が伝説のディテールを鮮明にし、異空間への旅気分を煽ってくれます…。実際、山々と清流に囲まれた立地は、どんな生物が潜んでいても不思議はないような気がしました
そんなごく普通の村に、つちのこ。この組み合わせが何とも面白い。

ちなみにおさらいしておくと、つちのことは体長30~80cmほどの、ビール瓶のように胴体が太い蛇である。日本全国で古くから存在が伝えられ、東白川村でも河原や茶畑、桑園など至る所で目撃が報告されている。でも、本当につちのこは存在するんだろうか??

「目撃例はたくさんありますが、私自身は見たことがないので否定も肯定もできません。夢・ロマンとして存在を信じています。もともと村内でもとくに目撃例の多い地域で盛り上がり、独自の観光資源が乏しい村の新たな看板としてイベント化したことが、つちのこと東白川村の関係の始まりです」(安江さん)

安江さんの言うイベントとは、同村が毎年5月3日に開催する「つちのこフェスタ」のこと。つちのこ生け捕りに賞金を懸け、毎年村内外から多くのつちのこファンが集まるのだ。平成元年に賞金100万円でスタートしたこの制度、毎年1万円ずつアップして、今年は「120万円」が懸けられた。

こうした取り組みがもたらす、東白川村の知名度アップの効果は大きい。今年も残念ながら捕獲は叶わなかったが、来年もまた、全国からハンターたちが集まるはずだ。
ゴールデンウィーク真っただ中で、大渋滞を抜けたらもう夜明け…。早朝に到着した我ら取材班一行を出迎えてくれたのは、まだひと気のない広い会場と、「つちのこ捜索大作戦」ののぼりでした

幻獣捕獲で一攫千金!「つちのこフェスタ」に1000人が結集!



「今年のゴールデンウィークはどう過ごすの?」
「うん。ちょっとつちのこを捕まえに岐阜まで」

これ、今年の春先に筆者が実際に友人と交わした会話である。筆者は後者。今年の連休はちょっと変わった思い出を作りたいと白羽の矢を立てたのが、岐阜県加茂郡の東白川村が主催する「つちのこフェスタ」だった。

じつはこの東白川村は、古くから幻の蛇・つちのこの目撃多発地帯として知られ、未確認生物(UMA)ファンの間ではよく知られた村なのだ。オカルト好きにはたまらない、楽しい旅ができそうだと張り切って出掛けた次第。

毎年、憲法記念日(5月3日)に催される「つちのこフェスタ」は、村内にある中川原水辺公園の大広場にメインステージを設置し、ブラバン演奏やクイズ大会、マスつかみなど多彩なプログラムが組まれる。人口わずか2800人ほどの村に1000人以上を集客するのだから、村を挙げての大祭りといえる。

このユニークな村おこしの発端を、同村役場産業建設課の安江透雄さんに聞いてみた。

「スタートは平成元年。当時は全国的につちのこブームで、このようなイベントを行う町村が複数見られました。イベントに来場される方は、真剣につちのこ捕獲を目指す方から、春の行楽として楽しむ家族連れ、あるいは山菜採りを目当てに来られる方もいらっしゃいます」
生け捕り賞金120万円を目指して、茶畑周辺を中心につちのこ捜索を続ける、全国から集まったハンターたち。とはいえ、山菜を摘みながらの和気あいあいとした雰囲気でした。家族連れにもオススメ
ちなみに同村ではつちのこに生け捕り賞金(今年は120万円)を用意し、イベントにインパクトを添える。

会場はとても賑やか。広場をぐるりと露店が囲み、焼きそばやかき氷、ビールなどが売られ、多くの人々でごった返す。ステージプログラムが進行する途中、「つちのこ捕獲」希望者が放送で集められ、とりわけ目撃談の多い茶畑周辺の捜索に向かうことになる。役場が用意してくれた網や蛇を獲る二股棒などを使い、あっちこっちで「つちのこ出てこーい」と。

捜索タイムは1~2時間ほど。起伏の激しい地形の散策でほどよく疲労してきたころに、「今年も残念ながら見つかりませんでしたねえ」と解散。再び広場へ戻るわけだが、捜索途中で採取した山菜をその場で天ぷらに揚げてくれる露店もあり、これが何とも言えない美味だった!

ちなみに、実際に参加した人からは「本当に捕まえられるとは思ってなかったけど、この村ならではの雰囲気で楽しかった」(東京都・30代男性)、「こういう夏祭りムードって、都心じゃもう味わえないのでは?」(埼玉県・20代女性)など、賞金は獲得できずとも満足度は高い様子。

なお同イベントでは、プレゼントの抽選券やドリンクとの引換券、傷害保険加入券など様々なチケットがひとつづりになったパスポートを販売するなど、きめ細かな運営体制も目を引いた。

マスコミで取り上げられる機会も多いこのイベント、小村のお祭りとしては大成功といえそう。結局、つちのこ存在の有無は不明のままだが、こうした振興効果を見ていると、つちのこは村の守り神としてしっかり根づいているような気も? というわけで「村おこしの経済学」第1回、いかがでしたか?

混迷を極める経済シーン。日々報じられるネガティブな情報に萎えるばかりでなく、頑張っている自治体が発信する振興策から、ビジネスのヒントや成功につながる発想を学びたいものです。

全国にはまだまだユニークな村おこしの事例がいっぱい! 不況の風に負けず、がんがん探っていきたいと思います。皆さんがご存じのユニークな村おこしについても、ぜひ教えてください! メールお待ちしております。

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