情報社会と法律のビミョーな関係

第12回 法律ってネットの進化に追いつけるの?

2009.06.17 WED

情報社会と法律のビミョーな関係


“弁護士ドットコム”は弁護士仲間数人と資金ゼロの状態から立ち上げたという。「弁護士というのは法律には詳しいのですが、自分を売り込むことは不得意な人が多いので、紹介ビジネスは弁護士の方から見ても有意義なんですよ」(元榮氏)

ネットの普及って法律にどんな影響があるの?



インターネットという新しいツールが登場して、僕らの生活は格段に便利になった。でも、新しいだけあって、いろんなルールが未整備な状況だ。だから、新たなルールを整備しなければならない、とは思うのだけど。

でも、ルールが作られれば、その分だけやってはいけないことも増え、息苦しくなってしまう人もいるだろう。こういう気持ちの部分って法律はどこまで汲んでくれるんだろう?

そんなギモンを、法律事務所オーセンス・代表弁護士の元榮太一郎氏にぶつけてみた。

「法律というのは社会秩序のバランスをとる道具ですから、誰もが便利なようにしていこうというのが基本にあると思います。ネット関連の法律も同じ。例えばネット上に新たなコンテンツが生まれて、これがマイナス面の問題を起こせば適宜規制するし、逆にプラスの面が大きければ法律を改正して、既存の枠組みを変更してでも対応するという発想になります」

具体的にはどんなことなのでしょう?

「たとえば私は弁護士ドットコムというサイトを主催しています。これは、わかりやすく言うと弁護士を比較検討できる弁護士の紹介サイトです。便利なものなんですが、実は日本で唯一の弁護士紹介サイトになります。なぜなら弁護士法の第72条で『報酬』を目的とした弁護士の紹介は一律に禁止されているからなんですね。現状では紹介料としての報酬を受け取ることができないので、ビジネスとしてメリットがありません。ですが弁護士ドットコムは、ビジネスメリットよりも世の中が必要とするサービスの提供を優先して、ほかに先駆けて始めました」

では、どうやってサイトを運営しているんですか?

「仮に弁護士ドットコムで選んだ弁護士に連絡をとって契約が成立したとします。その契約料金の一部を報酬として受け取ると紹介料となるので法律違反になります。したがって現在のところはバナー広告や弁護士の転職支援などで収益を上げています。ただ、最近はアフィリエイトのような成果報酬型広告が普及したように広告モデルが多様化しており、『広告』自体が『紹介』的なものになってきています。両者の垣根があいまいになっているんですね。すぐれた弁護士紹介サイトがあれば、一般の人が弁護士にアクセスしやすくなりますし、私自身も有益だと考えています。そうした意味では、弁護士法72条という法律も改正の必要が出てきている気がします」

新しいメディアの登場や社会状況の変化によって、法の解釈が見直されたり、法律そのものが変わったりすることもある、ということなんですね。ということは、現在は禁止されている弁護士の有料紹介もやがて解禁される可能性があるんでしょうか?

「アメリカやイギリスなどでも弁護士紹介は規制されていましたが、21世紀に入ってから相次いで規制緩和されています。なぜなら便利だからなんですね。ユーザーの利益にかなっている。ですから日本でも、そうなることが予想されます。ある時点において、法律がネット社会の利便性を阻んでいるように見えても、そこがゴールではありません。ユーザーの利益にかなっていれば法律も変わっていくべきなのです。法律は守るものですが、社会の変化などに応じて変えていくものでもあります」

なるほどね。まず法律ありき、ではなく利用者である国民の利益こそが大事だと。そのために現実を踏まえて常に変化していくのが、法のあるべき姿ということなんですね。
代議士になる前は三菱総合研究所で情報社会関連の研究員をしていた橋本氏。「インターネットや携帯電話などが安全に使われ人と人の絆を深めることのできる社会の実現したい」

法律を作る側ってネットについてどう考えてるの?



法律は、なにか事件や事故が起きてから、その事態に対応するために作られることが多い。特にネットの世界に関しては、その傾向が強いみたいだ。

やっぱり、ネットの変化スピードが速すぎて、法整備が間に合わないの? これって法律を作る側にいる人は、どう考えているの?

衆議院議員でもっともネットに詳しいといわれる橋本岳氏に聞いてみた。

「法律が後追いなのは悪いことではありません。むしろ健全なこと。大きく分けて法律というのは やってはいけないことを決めてそれ以外はOKとする『ネガティブリスト方式』と、やっていいことだけを決めてそれ以外は一切NGとする『ポジティブリスト方式』があります。ネットの世界については基本的にネガティブリスト方式なんです。問題が起こればそこだけをピンポイントで規制して、あとはある程度ユーザーのモラルや裁量に任まかせる。だから後追いジャンケン的に見えるんですね」

例えばポジティブリスト方式の法律ってどういうものを指すのですか?

「自衛隊法などが典型です。自衛隊は危険な武器を扱いますから、法律でやっていいことだけを決めて、自由には活動できないようにしています。だから、海外に行く場合などは法律を変える必要があるわけです」

なるほど、ネットがポジティブリスト方式で規制されたとしたら、新しいビジネスを始めようとするたびに、いちいち法律を変えてもらわなきゃいけなくなるってことですね。

「たとえていうなら、ネットを広場にしたいのか野球場にしたいのかということなんです。つまり、誰もが自由に遊べる広場なのか、野球しかしてはいけない野球場なのか、ということ。私自身は広場であってほしいと願っています」

では、例えば最近、薬事法の改正で一部の薬がネット上で買えなくなりましたが、あれもやってはダメなネガティブリストが追加されたということですか?

「薬事法はネットという広場ができる前からあった法律です。つまりネットは広場ですけど、そこで野球をやりたい(=薬を販売したい)というのなら野球のルールも守らないといけない。そこが今回の問題なんだと思いますね。ただ野球場でやる野球と広場でやる野球がまったく同じである必要はないと思いますよ。広場でしかできないやり方を探っていくのが今後のテーマです。僕はそれを応援したいですね」

自由なネットだけれども、そこで他のルールとバッティングしたときには、もちろんネットの自由ばかりが優先されるわけじゃない。でも、そうやって衝突を繰り返しながら、新たなルールを作っていくことが大事なのだろう。 このレポートを担当するまで、
ネットと法律の関係って
正直、あまり気にしたことはなかった。

ここだけの話、自分のブログでも
ネットで拾った写真を使っていたし、
新聞記事をそのままコピペしたこともあった。
もちろん、法律的によくないことだろうなぁ
とは思いつつだったけど。

で、そのころのボクの法律への印象は
ただ「めんどくさそうだなぁ」だった。

ところが、このレポートを通して
法律家やその道の専門家の人の話を聞くうちに、
やっと法律の意味とか意義がわかってきたのである。

ネット生活に限らず、
法律というのは確かにめんどくさいやつである。
でも、それがあるからこそ、
みんなが社会で快適に過ごすことができる。
そんな当たり前のことに気付かされたのだった。

ということで「情報社会とネットのビミョーな関係」は
ここでいったん終了。

またどこかでお会いしましょう!

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