村おこしの経済学

第3回 『エヴァ』と箱根、夢のコラボが実現!

2009.07.03 FRI

村おこしの経済学


予想を上回るスピードでさばけた「箱根補完マップ」。アニメの中のシーンをリアルの箱根町・全19カ所と対比させた、斬新な観光ガイドに仕上げられている

「天下の険」に使徒の脅威!?エヴァファンは箱根にご注目!



箱根といえばなんといっても温泉。首都圏からほど近く、老若男女問わず多くの観光客が訪れる箱根は、唱歌の中で「天下の険」と表現される山々が湖を囲む、風光明媚なロケーションでよく知られている。温泉地特有の硫黄のにおいが漂う自然の風景は、都心でストレスまみれになった僕らの心身を癒やしてくれる絶好のスポットなわけだが、その箱根が今、これまでとは異なる一面をPRし始めたことをご存じだろうか? 箱根町観光協会が、あの『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、エヴァ)とのタイアップを実現したのだ。

古くから栄える温泉地と、激しい戦闘の舞台。なんともギャップのある組み合わせだが、エヴァの舞台である「第3新東京市」のモデルが箱根町仙石原一帯であることはファンには有名な事実。そこで今回、エヴァの製作元であるスタジオカラー、ガイナックス両社の監修のもと、観光パンフレット「ヱヴァンゲリヲン箱根補完マップ」が制作されたのだ。

タイアップ実現の経緯を、箱根町観光協会に聞いてみた。

「もともと協会内でも、アニメやコミックとのタイアップで何かできないかというアイデアは根強くあったんです。仙石原界隈がエヴァの舞台であることは、当然地元でもよく知られていました。ちょうど同作品がパチンコになって再び注目されていたことから、地元の企業の方々と連携し、今回の観光パンフレットを企画しました」(箱根町観光協会・鈴木克典さん)

しかし、若者向けアニメの起用に、協会内で反対意見など逆風はなかったのだろうか?

「確かに、そもそもエヴァを知らない世代の協会スタッフからは、『本当に効果あるの?』と懐疑的な声はありました。けれど、観光マップにエヴァの世界観を落とし込んで、実際の風景を対比させる試みは斬新ですし、箱根の観光スポットをあらためて若い人たちに知ってもらうキッカケになれば理想的です。マップに掲載するコースやスポットの選定などには苦労もありましたが、結果的にとても有意義な試みであったと思います」(鈴木さん)

果たして、6月上旬に箱根町内の主要施設で配布された「ヱヴァンゲリヲン箱根補完マップ」は、アッという間に予定数を終了。その後も問い合わせの声が続々と寄せられているという。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の公開もスタートしたエヴァ人気が、箱根に新たな風を呼び込むキッカケになりそうだ。
激しい戦闘の舞台となった「第3新東京市」は、首都圏の目と鼻の先、箱根の町だ。現在、劇場版『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』も大好評 (C)カラー

『エヴァ』とのタイアップで滞在型観光の強化を目指す箱根



温泉地として人気の箱根が、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、エヴァ)とコラボして制作した観光パンフレット「ヱヴァンゲリヲン箱根補完マップ」が、ファンの大きな関心を集めている。同マップは、去る6月4~6日の3日間に箱根町の仙石原で先行配布されたが、瞬く間に予定数を配布終了。この反響の大きさに、現地の観光協会はうれしい悲鳴をあげている。

「当初は3日間とも午前10時に配布をスタートする予定でしたが、初日の早朝から大行列ができたのを受け、2日目は8時半スタート、3日目は8時スタートと、配布開始時刻をどんどん繰り上げて対応しました。普段は東京や神奈川など近隣ナンバーの車で来られる方が大半ですが、配布期間中は静岡や名古屋といった少し遠方のナンバーも多く見られ、なかには沖縄や北海道からわざわざ足を運ばれた方もいらっしゃいました。協会としてもエヴァ効果の思わぬ大きさを喜んでいます」(箱根町観光協会・鈴木克典さん)

エヴァの舞台のモデルが箱根町であることは、ファンにはよく知られている。今回制作されたパンフレットは、作品内で登場する芦ノ湖エリアや箱根湯本エリアを、実際の風景と作中のシーンを対比させる形で紹介しているのが特徴だ。

「現在の箱根町が目指しているのは、日帰り観光のお客様にも少しでも長く滞在していただくこと。日帰りよりは1泊で、1泊よりは2泊でと、できるだけ長い時間滞在して楽しんでいただくために、地元ならではの魅力、地域に密着した商品をアピールしていく必要があります。そうした着地商品としてエヴァは有効で、これを通して箱根の魅力を再認識してもらえるとうれしいですね」(鈴木さん)

当然、これを仕掛ける観光協会スタッフの中には、エヴァのファン層とは離れた年輩の人も少なくない。だから「作品世界を踏襲しつつも、あまりマニアックになり過ぎないよう、マップ制作のさじ加減には苦心しました」という鈴木さん。

「アニメの中のどのシーンをマップに組み込むか、箱根のどのスポットを紹介するか、掲載エリアの選定にも随分頭を悩ませました。すべてが初めてのケースでしたから、配布場所や配布方法なども手探りで、最初は不安要素ばかりで。そもそも、年輩の方の理解を得づらい今回の手法に対して疑問の声もありました。しかし、地元の企業の若手の熱心な働きかけが実り、いざ配布を始めてみると、お孫さんから頼まれてパンフレットを受け取りに来る年輩の方も多く見られました」(同)

エヴァ新作の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』公開時期と重なったのは「たまたま」であったというから、この引きの強さにも驚かされる。同協会ではエヴァと組んだ次の一手も思案中というから、今後の動向も要注目。

すでに全国的な知名度を持つ箱根ではあるが、エヴァの世界を切り口とすれば、これまでのイメージとはまた違った箱根に触れられることは間違いなさそうだ。 エヴァと箱根のリアルなコラボが実現するなんてと驚かれたファンも少なくないのではないでしょうか?

でも、おかげでインパクトは絶大。村おこし効果も十分。こうした意外性こそアイデアですよね。すでに人気の観光地として定着している箱根ですら、こうした新たな客層へのアピールを怠らない姿勢、僕らも見習わなければなりません。

さて、本連載ではまだまだ全国のユニークな村おこしを探求中! 皆さんの知ってる事例、気になる事例、どんな些細な情報でも寄せてもらえると嬉しいです。

また次回!

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト