村おこしの経済学

第6回 軽トラが商店街を再生させる!?

2009.08.14 FRI

村おこしの経済学


天気の良い第一日曜日は…ご覧の通りの大盛況! 設備投資不要のシンプルなイベントながら、5周年を迎え、今日ではすっかり地元の定例イベントとして定着しているのだ

荷台がそのまま売り場に!「軽トラ市」が大盛況



過疎が進み、経済が停滞し、かつては賑やかだった商店もひとつ減りふたつ減り。気が付けば、シャッターを閉ざしたお店ばかりが立ち並ぶ、いわゆるシャッター商店街というのが全国に多く見られる。これは必ずしも人口減や不況によるものではなく、大手資本のスーパーやシネコンが進出したことで昔ながらの個人商店が経営難に陥ってしまうという、資本主義の原理にのっとったケースも多いのだが、地元の経済を考えればやはり由々しき問題のひとつだ。

そんななか、ユニークな取り組みで商店街の活性化に成功している町を東北に見付けた。スキー場や小岩井農場で有名な、岩手県の雫石町である。付近に温泉が湧き、冬場の客足こそ維持している雫石(しずくいし)町だが、町内の商店街では廃業する店舗も増え低迷の一途。

そんな雫石町が、地元商店街の振興策として実施しているのが「しずくいし軽トラック市」だ。これはその名の通り、この地に集まった数十台の軽トラの荷台を売り場とした、盛大な「市」である。

開催は毎月第1日曜日。朝から「よしゃれ通り」と呼ばれる商店街に多くの軽トラが集まってきて、いつもは閑散としているストリートにたちまちお祭りのような喧騒を作りだしているのだ。

この軽トラ市を運営する、地元の商工会に話を聞いた。

「軽トラ市をスタートさせたのは、今からちょうど5年前。雫石でも商店街の衰退、過疎による客離れが著しく、ソフトとハードの両面から商店街をテコ入れしなければならないと、商工会のみんなで知恵を絞ったのがキッカケです。ハード面については行政にお任せするとして、ソフト面で何か工夫をと思い至ったのが軽トラ市でした」(雫石商工会)

毎回、50台ほどの軽トラが集うこの軽トラ市。野菜や魚介などの生鮮食品を荷台に並べるトラックのほか、フリマ感覚で衣類や雑貨を売るトラックも出現するなど、様々。多彩な商材が集まる様子は賑やかなお祭りのようで、今日では大盛況のイベントに成長した。

それにしても、なぜ軽トラに目を付けたのだろう?

「農家の多い町なので、軽トラだったら一家に一台に近い割合で所有していますからね。それぞれ自宅で育てた農作物を積んでくれば、そのまま荷台が売り場になるわけですから手軽。売れ残ってもそのまま乗って帰れますから、高齢者の方でも手間が少なくていいわけです」(同)

身近な物=軽トラという着想は、農業の町ならでは。まさに、着眼点とアイデアの勝利というわけだ。
会場となっている「よしゃれ通り」は、普段はこんなに閑散としている…。この通りが軽トラ市開催時には3000人を集客する。それどころか、最高なんと5000人も集客したこともあるとか!

「軽トラ市」の活況に魅せられ…シャッター商店街が蘇る!?



岩手県・雫石(しずくいし)町が毎月開催している「軽トラ市」が話題を集めている。これは地元の商店街に、売り物を荷台に乗せた軽トラが集まって市を開くもの。不況や過疎で活気を失った商店街の有効な振興策として今、近隣の自治体が熱い視線を注いでいるのだ。

まるでお祭りの露店のように軽トラが並ぶ光景がユニークなこのイベントも、今年ではや5周年を迎える。軽トラ市を仕掛ける地元の商工会に、最近の状況を聞いた。

「天候にもよりますが、毎回およそ3000人のお客さんが集まって、約50台の軽トラでショッピングを楽しんでいます。町内の農家の方が新鮮な野菜を荷台に乗せて売りに来るケースが多いですが、出店者は町民に限っていませんから、(県内の)沿岸部から鮮魚を積んで売りに来る軽トラも多いです。そのほか、衣類や雑貨を扱う軽トラもちらほら見られます」(雫石商工会)

総人口が1万8000人ほどの小さな町で、3000人を集客するのは並大抵ではない。前回(2009年8月)の軽トラ市では来場者にアンケート調査を実施し、客足分析が行われた。

「私たちも意外だったのですが、来場者の1/3ほどが初めて来られた方で、主に近郊都市からのお客さんでした。こうして他の地域からの客足を呼び込めているということは、まだまだ集客が伸びる可能性を秘めている証しだと思います」(同)

さらに最近では、一度はシャッターを閉じた商店街の空き店舗に、「これほど人が集まるなら」と、再び借り手がついて営業を開始するケースが増えてきたという。地域の振興策として、最高の効果を生みつつあるわけだ。

「やはり、地道に毎月続けてきたからこその現象でしょうね。一方でイベントとしてのマンネリ化を指摘する声もありますから、まだまだ創意工夫はしていかねばなりませんが、無理して一気に大きく伸ばそうとするよりも、着実に継続していくことが大切でしょう」(同)

そんな同商工会では今年、「軽トラ市」の商標登録を行った。これでいっそう、雫石発の画期的なイベントとして箔が付くのではと思いきや、商工会の皆さんの思惑はまるで別のところにあった。

「これだけ盛況なイベントですから、他の地域でもどんどん開催してほしいというのが私たちの願い。だから、他の事業者が軽トラ市の商標を確保して使用を制限することがないよう、私たちが商標登録をすることで、どこでも自由に『軽トラ市』の名称を使っていただけるようにしました」(同)

うーん、田舎町にふさわしい心温まる思想。この軽トラ市が全国に広がるのも、そう遠くはなさそうだ。 雫石町といえば、かつてアルペンスキーの世界大会の会場ともなった、東北でも有数の雪どころ。小岩井農場や鴬宿(おうしゅく)温泉など観光資源に恵まれた土地柄でありながら、低迷する商店街を救ったのが軽トラックというのも、なんだか面白いですね。

開放したスペースに出店希望者たちが集い、そこに自然と客が集まってくるというモデルは、仕掛けとして非常に効率的。コストをかけずに大きな成果を挙げたアイデアは、見事というほかありません。

このように、学ぶべきメソッドが眠っているのが村おこしの興味深いところ。皆さんからの村おこし情報も、引き続きお待ちしております! また次回!

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