エコと経済のビミョーな関係

第11回 外来種に日本が侵略されちゃう!?

2009.08.18 TUE

エコと経済のビミョーな関係


なじみ深いクローバー。その昔、四つ葉探しに夢中になった記憶がありますが、これも海外からやってきたものらしい。このほか、ヒメジョオンや黄色い花を咲かせるセイタカアワダチソウなど、本土の植物のうち3分の1近くが海外から来て帰化した植物ではないかという説もある。

駆除や対策に10億円!要注意の侵略的外来種



先日、とあるテレビ番組で某お笑いタレントさんが、ウチダザリガニというザリガニを捕獲して召し上がっていたんです。ちょっと気になったので、そのザリガニについて調べてみると、外来種の仲間に指定されているため許可がなければ捕獲や持ち出しが禁止されているよう。もともとはアメリカのザリガニを食用として日本に持ちこんだ経緯があるみたいですが、いつの間にか人間の管理の手を離れ、自然繁殖するようになっちゃったとか。でも、そもそも外来種って何をもってそう定義するんでしょう? 国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」の林雄太さんにお話を伺いました。

「いくつか定義がありますが、一般的には、その地域にいない生物が自然状態では通常あり得ない手段で移動して入ってきた場合、その種を外来種といい、さらに私たちの生活や自然環境に対して問題を引き起こしている種を指します。国外から国内に入ってきたものだけでなく、国内での移動にも当てはめる場合もあります。こちらは国内外来種といって、たとえば北海道にしかいないはずの生物が新潟で繁殖していることが確認された時などですね。厳密な意味では、外来種は私たちの生活や自然環境に対して問題を引き起こしていないものも含めます。このため、特に問題を引き起こしているものを区別するために、それらを侵略的外来種と呼びます」

侵略!? なんだか物騒な感じですね。

「国外から持ってきた動植物には日本の自然環境や私たちの暮らしに溶け込んでいるものもたくさんあります。トマト、リンゴ、タマネギ、キャベツ、メロン、レタス、ピーマン、ずっとさかのぼればイネもです。これらは一般的には外来種とは呼びませんが、国外から持ってきた動植物であるという意味では外来種であると捉えることができます。そこで時代を区切り、明治以降に入ってきたものを外来生物法で外来生物と定義しているのですが、そのなかでも生態系や人間にとって害を及ぼすものを侵略的外来種と呼んでいるのです」

具体的にはどんな悪さをするんですか?

「大きく分けて3つあります。1つは、農林水産業などの一次産業に影響のあるもの。アライグマによる農作物の食害などがそうです。2つ目は、人体に影響があるもの。指を食いちぎるほどの威力をもつカミツキガメや、毒のあるセアカゴケグモ、広義ではウイルスも当てはまります。3つ目は、生態系のバランスを崩すものです」

噛まれたり刺されたり、痛いのは勘弁してほしいです。それにしても、一度繁殖を始めたら駆除するのってかなり大変そうですけど、どうにかできないんでしょうか?

「確かにはびこってしまうと大変で、柵を設置してそれ以上生息域が広がらないようにしたり、繰り返し駆除作業を行う必要が出てきます。こうした対策費用は、環境省(2007年)、林野庁(2008年)、水産庁(2003年)の年間費用を合計しただけでもザッと9億6000万円にのぼります。ちなみに、農作物への被害額は農林水産省が発表している2007年の1年間だけで5億9000万円です」

えー、対策費の約10億円ってほとんど税金ですよね? 農家の被害額もかなりのものですよ。でも林さんいわく、こうした数字は氷山の一角に過ぎないそうで、水産業や林業、それに貴重な生態系を観光資源として利用している場合など様々な間接的価値を合わせるともっと被害は大きくなるとのこと。

「日本のような島国は特に外からの生物に弱く、一度侵入すると被害が大きくなる傾向があります。陸続きの国では侵入してくる敵に対して競争力が備わっていることも多いのですが、隔離された島国ではそうした経験が少なく、また逃げ場もありません。生物や生態系についてはまだわからないことがたくさんあるので、原則として外来種が入らないよう予防することが大切だと思います」

うーん恐るべし侵略的外来種!
農作物の受粉に欠かせないミツバチ。トマトやナスの受粉に利用されるセイヨウオオマルミツバチは輸入品で、仕事を終えたら「侵略的外来種」として殺されてしまうとか。一方、養蜂家が育てているミツバチは「家畜」扱いで大切にされている。同じミツバチなのに、この違いって…。

もはや経済が成り立たない!?外来種関連ビジネス



農作物や人への被害、在来種の駆逐など、いわゆる「侵略的外来種」が問題視されはじめています。経済的損失をもたらすということで対策に膨大な税金も注ぎ込まれているらしいんですけど、こうなったらもう、生物の鎖国ならぬ外来種廃絶運動でもしちゃいましょうか?

「でも、国外の動植物を取り入れることで、私たちの暮らしが豊かになったという側面もあるんですよ」

そう語るのは、国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」の林雄太さん。

「私たちが普段食べている野菜や果物のほとんどは明治以降に海外から入ってきたものです。園芸用の植物、犬や猫をはじめとするペットもほぼ同様で、いまやペットフード・ペット用品・ペット医療などペット関連産業だけでも1兆4620億円(2005年)規模の市場といわれています」

競馬のサラブレッド、動物園や植物園、水族館にいる動植物も外来種として捉えてみた場合、国内の主要動物園13カ所だけで年間約45億円、主要水族館12カ所で62億円の売り上げを上げているそうで、これはもう外来種なしにははじき出せない数字です。となると、これからも外来種を積極的に導入した方が経済にはプラスってこと?

「確かに、外来種=悪者と一概に捉えるのではなく、すでに経済に溶け込んでいる種のことも考えなくてはいけません。ただ、やはり外来種は規制すべきです。マングースのように、よかれと思って導入した生物が悪者になってしまうケースもありますから。ハブ対策のために沖縄に持ちこまれたんですが、結果、ハブを食べずに固有種のヤンバルクイナやオキナワキノボリトカゲなどを食べてしまい被害が広がっています。生物というのは、生態系にどのような影響が出るか未知数な面が多く、危険もはらんでいます。経済的メリットがあるケースもありますが、あくまでも外来種は予防をすべき対象です。それが、外来種対策の世界の潮流でもあります」

現実には、飼い続けられなくなったペットを放した結果、侵略的外来種になってしまった、なんていう話も耳にします。それって、飼い主にもちろん問題がありますが、何でもかんでも売れればいいという一部のペットショップなどにも責任がある気がします。その辺ってどうやって対処していくんでしょう?

「メリットがあるから生き物の移動が止まらないのも事実で、非常に難しい問題です。侵略的外来種の輸入・販売を禁止するなど法律での規制も少しずつ始まっていますが、メリットを受ける側とデメリットを被る側がお互いの立場を理解し合いながら対策をとっていく必要があるでしょうね。また、導入したい人が生態系に悪影響がないことを証明し、もし被害が起きた場合に責任を負ってもらう必要があるかもしれません」

生き物をめぐるメリットとデメリットのせめぎ合いどこでどう折り合うのか、なかなか難しいテーマといえそうです。 人や物が世界中を短時間で移動する21世紀は、
生き物もまた激しく移動する時代。
外来種問題は今後も拡大しそうです。


まぁ、彼らにしてみれば
「勝手に連れてこられて、外来種のらく印を押されちゃったよ」ってなもので、
人間のエゴ以外の何ものでもない気はするんですが。


とはいえ、噛まれたり刺されたりするのはごめんだし、
対策に多額の税金が投入されるのも困ります。
わたしも、むやみに動植物を持ち帰らないとか、
一度ペットを飼ったら責任をもって最期まで世話するとか、
最低限できることは守っていこうと思います。


さて、「エコと経済のビミョーな関係」と題する当連載も
次回で最終回。
総まとめをしちゃおうかな~と思いますのでお楽しみに!

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