村おこしの経済学

第7回 秋田の人気ヒーロー『超神ネイガー』

2009.08.28 FRI

村おこしの経済学


秋田の平野を守るヒーロー、超神ネイガー。ネイガー・ジオン、ネイガー・マイといった仲間とともに、悪の組織「だじゃく組合」と戦う。なお「だじゃく」とは秋田弁で「乱暴」の意。どこかとぼけたローカルな世界観が、親しみやすさを演出している?

秋田が生んだ地産地消ヒーロー超神ネイガーを知っているか!?



郷土の魅力をアピールするために、日夜戦い続ける不思議な存在。それが「ご当地ヒーロー」だ。たとえば「離島戦隊タネガシマン」(鹿児島県)や「紀ノ國戦隊・紀州レンジャー」(和歌山県)など、どこかユルさを兼ね備えたヒーローたちは話題になりやすく、観光素材としてもうってつけ。今日では全国に100を超えるご当地ヒーローが存在している。

ご当地ヒーローの一番の成功例といえば、なんと言っても秋田県が生んだ『超神ネイガー』だろう。いかにもヒーロー然としたスタイリッシュな出で立ちに、手にはハタハタ型の銃「ブリコガン」(ちなみにきりたんぽ型の「キリタン・ソード」もある)。秋田の平野を守るために悪と戦う地産地消ヒーロー・ネイガーは、農業に従事する青年アキタ・ケンが変身した姿である。

秋田名物・なまはげになぞらえ、「泣く子はいねがぁ?」のフレーズから「ネイガー」と名付けられた、とことん地域密着の設定が面白い。

このネイガーを仕掛けた張本人、有限会社F2-zoneの代表、海老名保さんに話を聞いた。

「僕自身、幼いころからヒーロー物にどっぷりとハマって育ちました。大人になってからもヒーローへのこだわりが捨てられず、このジャンルを追求し続けた結果が『超神ネイガー』なんです。これは個人の発案したヒーローが、どこまで大きく育ち、活躍できるかというチャレンジでもあります」(海老名さん)

海老名さんは20代を東京で過ごしたあと、故郷・秋田へ戻ってスポーツジムの経営に着手。そのかたわらオリジナルヒーローの世界観を練り、マスクデザインを研究し、ついには一事業としてヒーローの総合プロデュースを始めることに。

「もともとは03年に行った『伝統超神ネイガー』というステージが前身で、これが子どもたちから非常に好評だったので、05年にリニューアルして始めたのが今のネイガーです。当初から反響は上々で、気がつけば社会現象と言ってもいいほどの大きな人気を得ることができました」(同)

イベント出演、グッズ化など続々と舞い込むオファー。テーマソングを歌うのはあの水木一郎さんで、これについても、「水木さんに歌ってもらえたらいいなと妄想していたら、偶然、同じ企画を持ってきてくれた方がいたりして、いろんなご縁に支えられてここまで来たと実感しています」と海老名さん。

今やネイガーはご当地ヒーローの枠を超え、地元・秋田放送で実写ドラマとして放映されたり、大手企業のCMキャラに採用されたり、まさに八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍を見せている。年間公演数は200回以上、これまでに10万人以上を動員してきたという、秋田では知らない人のいないヒーローに育った。

そんなネイガーを演じているのは、じつは海老名さん本人である。かつてプロレス団体に所属していた経歴を持つ海老名さんにとって、アクションはお手の物。かつてヒーローに憧れていた少年が、本当にヒーローとなって故郷に貢献しているわけだ。
この5月に出版された海老名さんの著書、『奇跡のご当地ヒーロー 「超神ネイガー」を作った男』(WAVE出版)は、ビジネス書としても秀逸。ヒーロービジネス成功への道のりとメソッドは、あらゆるビジネスに通ずる教訓に満ちている!

たしかな経済効果に期待大!広がる“ご当地ヒーロー事業”



今日では全国各地に様々な「ご当地ヒーロー」が存在し、地元の魅力をアピールしているが、秋田県が生んだ『超神ネイガー』の活躍ぶりは他のヒーローと一線を画している。年間200回もの公演をこなし、これまで出荷された関連グッズは30万個超。大手企業のCMにまで出演するなど、ご当地ヒーローの枠を超えた人気を誇るネイガーを仕掛けた、有限会社F2-zoneの代表、海老名保さんを直撃した。

「05年にネイガーをつくって以来、今日まで様々なイベントやお祭りにお招きいただいていますが、主催者の方から『これほど人が集まったのは初めて』と驚かれることも多いです。人が集まればそれなりの経済効果が生じるわけですから、これは地元への貢献という意味でも有意義なことだと感じています」(海老名さん)

今春にはヒーロープロデュース成功の秘訣を一冊の本にもまとめた海老名さん。実際、ネイガーがもたらす経済効果は、驚くべきものがある。

「3年前、初めてネイガーの関連グッズが世に出た時には、ロイヤルティだけで年間2億円が発生しました」(同)

キャラクター商品のロイヤルティは通常、商品価格の数%。これが2億円もの額に上ったということは、実際に地域に及ぼした経済効果は数十億円規模と考えられる。まさに地元を救うヒーローと言えそうだが、それも多くのビジネス書を貪るように読んで薫陶を受けたという、海老名さんの研究熱心さのたまものだろう。

ネイガーをヒットさせた海老名さんの手腕が話題を呼び、最近では他県のご当地ヒーローをプロデュースする仕事も増えているという。現在すでに、お隣の岩手や青森、さらには沖縄などで、海老名さんがプロデュースするご当地ヒーローが活躍中だ。

「もともとの本業であるスポーツジムの会員さんが、ネイガーの活動に関心を持ち、気がつけば社員として一緒にステージをやっている、というケースもあります。この秋には大きなステージを予定していますが、これは出演だけでなく、イベント運営全般を自分たちで手掛けるものです。ショービジネスにおいて、自分たちの手でやれる範囲を少しずつ広げていくことが今の目標です」

一連のネイガープロジェクトは、海老名さんたちの大きなチャレンジでもあるのだ。 ふと、自分でパーマンセットを手作りして遊んでいた幼少期を思い出してしまった僕ですが、男の子なら誰しも一度、そんな時期を経験していますよね?

ヒーロー願望が叶い、なおかつ地元の経済にも貢献し、多くの子どもたちを喜ばせているという海老名保さんの取り組み。こんなに素晴らしい事業があるでしょうか。僕も故郷・横浜をモチーフに、とびきりカッコイイ英雄キャラを考えてみようかなんて、ちょっと本気で妄想しちゃいました。

さて、拙コラムでは引き続き、村おこしに関する情報を大募集中! 地域のユニークな名産やイベントなど、ぜひ教えてください。

また次回!

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