エコと経済のビミョーな関係

第12回 目指せ! 世界のエコリーダー

2009.09.01 TUE

エコと経済のビミョーな関係


環境先進国のひとつ、スウェーデンのある町では、10年前まで家庭の暖房は100%石油。ところが今は、95%が間伐材などの木材由来のバイオマスなのだとか。石油にかかっていた炭素税やイオウ税もなくなりエネルギーコストは4分の1に。おまけに林業での雇用も生まれちゃったとのこと。で、それを強力に後押ししたのはやっぱり国の政策だったみたい。エネルギー問題は安全保障問題とも直結するだけに、ここは国がしっかり方向を示してほしいところだ。

目標は高く設定し税金は賢く使う!



当連載もいよいよ最終回。これまで、いろんな分野でエコと経済の関係を追いかけてきましたが、なかには、補助金や減税といった国の政策が功を奏している例なんかもたくさんありました。エコカーしかり、太陽光発電しかり。あ、エコポイントも。
ただ、補助金や減税は一時的なもので、なんかこう、先が見えないんですよね。環境政策って、一体どうすればいいんでしょう? 京都大学大学院地球環境学堂の松下和夫教授にお話を伺いました。

「政策は、将来に対する高い目標を持つことが大事です。こういう方向に向かうんだ、ということを明確にすることですね」

と、いいますと?

「今できることだけをするのではなくて、目標へ到達するためにやるべきことを今から逆算して始めるのです。企業も明確な目標が設定されれば投資がしやすくなります。CO2に関して言えば、2050年までに1990年比で排出量を半分にすることが国際的なコンセンサスです。特に先進国は80%減らすことが求められていますから、日本もそこに向かって取り組んでいく必要があります」

ひぇー! 確か先日、麻生首相が「2020年までに2005年比で15%減を目指す」なんて発表していましたけど、50年までとはいえ80%なんていう数字、ホントに実現できるんですか!? 経済成長が止まっちゃうんじゃ?

「デンマークは過去10年でCO2を8%削減させているにもかかわらず、GDP(国内総生産)が約40%も向上しています。スウェーデンもCO2の9%削減とGDP44%増を並行して達成しています。政策がうまく主導すれば、経済成長と環境対策は両立できるはずです」

それはすごいですね。どんな政策をとったんですか?

「最も効果のあった政策は、やはり環境税でしょう」

税金ですか~。できれば避けたいです。

「消費税など一律に上がるものには抵抗がありますが、ガソリンの暫定税率廃止など、何かをやめる代わりに環境税という形で導入するのであれば抵抗が少ないはずです。環境に悪いことは課税(バッズ税)、良いことは減税(グッズ税)という言い方をしますが、例えばCO2排出など環境に悪いことに税をかけ、医療や雇用などいいことには減税するという考え方がわかりやすいでしょう。さらに、徴収した税金の使い方にも工夫が必要です。ドイツでは環境税を社会保険料に使ったことで、雇用が増えてCO2が減るという素晴らしい結果につながっています」

納めた税金がちゃんと私たちのメリットになって還元され、しかも地球環境のためにもなるいいですね。

「税金ではありませんが、アメリカではオバマ大統領が、CO2を多く排出する企業にCO2排出枠をオークション(入札)で購入してもらう制度を提案しており、議会で検討中です。企業はCO2排出を減らすことがコスト削減につながるので真剣に取り組みますし、国は税金ではなくオークションで得たお金で再生可能エネルギーへの投資や低所得者層への補助を行うという内容です。これも、国民負担なしに環境や社会福祉を充実させる政策のひとつですね」

ほほ~。うまい仕組みがいろいろできれば、エコと経済のいい関係は築けそうですね。そのためにはやっぱり国の強いリーダーシップが必要! なんだけど、はたして日本は大丈夫?
ドイツで1980年に結成された緑の党は、反核、反原発、環境保護、平和主義などを唱えて活動している政党。1985年に社民党と連立政権を組んで、環境大臣を選出するまでに成長を遂げた。日本と同様に、敗戦後めざましい高度経済成長を遂げたドイツだけれど、今となっては環境分野でずいぶん差が出てしまった感じ…。

先を見据えた政策で国際社会のリーダーシップを狙え!



エコと経済の両立って一見難しそう。でも世界には、スウェーデンやデンマーク、ドイツみたいに、政府主導でそれなりにうまく両立させて国際評価を得ている国もあるみたいです。日本って、世界のエコ事情の中でどんな位置にいるんでしょうね? 京都大学大学院地球環境学堂の松下和夫教授にお話を伺いました。

「2007年に世界銀行が各国の温暖化対策を評価した報告書によると、日本は70カ国中62位、先進国では最下位という残念な結果です。日本は経済や人口の伸びが低いにもかかわらずCO2排出量が増えているのです。石炭火力が増えている一方、再生可能エネルギーの導入が極めて遅いなど、消極的な政策を反映した評価といえるでしょう」

えーっ、日本政府に向けられる世界の目って結構シビアなのね。でも、技術力は高いですよね? その辺、どうでしょう?

「高いといわれつつも、鉄鋼業などでは、中国やインドで日本を上回る技術力を備えた設備の工場も増えているんですよ。太陽光発電パネルメーカーでも中国のメーカーは世界No.3。人件費などのコストも安くマーケットも大きいので、このままだと負けてしまうかもしれません」

どうしたらいいんでしょう?

「そうはいっても、日本の技術力にはやはり誇れるものがあります。中国でも環境対策が必要な場所はたくさんありますし、気候変動などに苦しむ途上国は圧倒的に支援が足りません。ODA(政府開発援助)で、汚染を減らしたり、堤防を造ったり、高温でも生育できる品種を改良・提供するなどしていけば、日本の技術力もしっかり生かせるはずです」

ODAってお金をあげたり貸したり技術協力したりするんですよね? 日本にメリットってありますか?

「日本のODA事業の多くは日本の企業がかかわっているので、まずはそこに経済的メリットが存在します。マラリア対策の蚊帳や、病気・乾燥に強く収量の多いネリカ米なども日本企業によるもので、こうした適応技術やシステムは国際社会で高く評価されるという点も考慮すべきです。また、世界が安定的に貿易できることは資源輸入の面などで結局日本にとって得に働きますし、世界経済が一体化している現代は、見方を変えれば途上国は新しいマーケットとも考えられますよね。逆に、気候変動が進めば国を追われる環境難民は2億人にのぼるともいわれ、先進国にとって大きな脅威になるという議論もあります」

環境問題をつくってしまったのは先進国ですから、先進国が率先して対策をとっていく必要はあるんでしょうね。で、日本も先進国の仲間ですが、このまま日本の評価が低迷して国際社会でリーダーシップがとれないと、どういうことになっちゃいます?

「国際的な枠組みづくりで不利な立場に立たされることになります。今でも日本政府は対策が遅く枠組みづくりでは後手に回っているのが現状です。世界各国で導入が進んでいるCO2排出量取引制度も、日本はまだ法的拘束力のない制度の導入に右往左往している段階です。枠組みができあがった後の参入では、日本経済にとって大きなマイナスになってしまいます。逆に今こそ、『ものづくり』も『まちづくり』も『生活スタイル』も、日本の技術や人材を生かして温暖化防止仕様に変え、未来社会のスタイルはこうだというモデルを打ち出して、良い例を発信できれば、世界的にも日本の存在感が高まるはずです。将来に対するビジョンを政策できちんと打ち出すことは企業へのメッセージでもありますから、新政権にはぜひとも頑張ってもらいたいですね」

日本のためにも世界のためにも、そして環境のためにも、大いに期待したいと思います! 国政が絡んだエコと経済の関係、いかがでしたか?


環境問題にかぎらず、
何か新しい技術や分野が発展する時というのは
国主導のルールづくりや政策での後押しが欠かせないようです。
そして考えてみれば、そんな政治を選ぶのは私たち有権者なんですよね。


今回、更新日がタイムリーにも総選挙翌日で
きっとみなさんの目に触れる今ごろは政権の行方もハッキリしているころだと思います。
新政権がどんな環境政策をとっていくのか、今後は私も
しっかりチェックしていきたいなと思いました!


ということで、半年にわたってお送りしてきた
「エコと経済のビミョーな関係」も、くどいですが今回で最終回。
気になる関係は経済界にまだゴロゴロしていますが、
ここでひとまず終了です。


またどこかでお会いすることがありましたら、みなさま、
その時はまたよろしくお願いします。
半年間、ありがとうございました~!

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト