村おこしの経済学

第9回 かつてカッパが暮らした街、遠野!

2009.09.25 FRI

村おこしの経済学


その昔、多くのカッパが住んでいたというカッパ淵。なお、カッパ伝説は全国に残されているが、遠野のカッパは顔が赤いのが特徴らしい

カッパの魅力に誘われて…年間200万人が来村!



7年ほど前、東スポが一面で「カッパ発見」とすっぱ抜いた事件を覚えているだろうか? 古くからカッパの伝承が残る岩手県遠野市の渓流で、誰もが知っている通りの姿をしたカッパが写真に撮られ、ちょっとした騒動になったものだ。

結局、それがテレビ番組撮影のために人が扮装した偽者と判明し、「そりゃそうだ」と嘲笑ムードのまま騒動は収束したのだが、この一件で遠野の地名は若い世代にも広く知れ渡ることとなった。

そんな東スポ騒動で妙な色がついたようにも思えるが、「カッパといえば遠野」というイメージは間違いではない。この地に昔からカッパ伝説が残るのは事実であり、かの柳田國男が著した説話集『遠野物語』にも、カッパ伝承とともに歩んできた地域の姿が、民俗学的視点で浮き彫りにされている。遠野は由緒正しいカッパの伝承地なのだ。

その『遠野物語』の発表から、来年(2010年)で100周年を迎える。これはぜひ祝福せねば! と、さっそく遠野市内の有名な観光スポット、「カッパ淵」へ足を運んでみた。ここはその昔、多くのカッパが住み、近隣住民に盛んにイタズラをしていたと伝えられる川淵である。平日だというのに、観光客がひっきりなしにやってきて記念撮影をしている。
カッパ淵ほとりの祠の中には、紅白2色の乳房のぬいぐるみが! 母乳の出が良くなるご利益があるとされ、若い夫婦も多く訪れる
カッパによる集客効果はなかなか高いと見える! 地元の観光協会に聞いてみた。

「昨年は地震の影響などでやや客足が遠のいたものの、例年、年間200万人ほどの方が観光に訪れます。カッパの伝承自体は全国各地に残されていると思いますが、東スポの記事もさることながら、やはり『遠野物語』の影響は大きいですね」(遠野市観光協会事務局長・立花信一さん)

ちなみにカッパ淵のほとりに建てられた小さな祠には、カッパ神が祀られている。カッパ神は乳房の神様とされ、育児中の女性の母乳の出を良くするご利益があるのだとか。祠の中を覗いてみると、たくさんのお供え物にまじって、乳房のぬいぐるみが奉納されているのが面白い。

ところで、あえて聞いてみよう。カッパって、本当にいるんですか?

「いやあ、どうなんでしょうね(笑)。カッパ淵にはまぶりっと(守り人)という専門のガイドさんがいて、先代のまぶりっとの方は生前、実際にカッパを見たことがあるとおっしゃっていたのを覚えていますが。カッパはあくまで、夢とユーモアの象徴として親しんでもらえれば」(立花さん)

なお、遠野市では『遠野物語』100周年に合わせて、地域の魅力やカッパにまつわる説話を伝えるテレビ特番を制作中だという。かつてはイタズラで住民を困らせたカッパだが、現在は絶大な集客効果で地域に貢献しているわけだ。
1490年創建の常堅寺には、全国で唯一の“カッパ狛犬”が。かつてこの寺で火災が起きた際、火を消したカッパがそのまま狛犬になった…という伝説が残されている

年間1万枚を発行!大人気「カッパ捕獲許可証」



カッパの里として知られる岩手県遠野市。実際、市内の至るところにカッパを模したオブジェやイラストがあふれており、地域の愛すべきキャラクターとして根づいている様子がうかがえる。

JR遠野駅にある交番などは、そのまま大きなカッパの顔をかたどったユニークな建物だし、地元の常堅寺というお寺には、全国唯一の「カッパ狛犬」が配置されている。年間200万人が訪れる遠野市において、カッパは絶大な集客効果を発揮しているのだ。

そんな遠野市で、ひときわ注目を集めるグッズがある。「カッパ捕獲許可証」だ。

遠野市観光協会が発行するこのライセンス。とくに取得に苦労はなく、200円を支払えば誰でも購入することができるのだが、なんともユニークなアイデアグッズといえる。

「この許可証はもともと、まぶりっと(※カッパの専門観光ガイド)だけが持つアイテムだったのですが、より多くの方にカッパを身近に感じてもらえればという考えから、2004年に一般販売を開始しました。年間およそ1万枚が売れ、今日までに累計で5万枚以上を発行しています」(遠野市観光協会事務局長・立花信一さん)

さらに注目したいのは、このライセンスの裏面。カッパを捕獲するにあたって、7つの取り決めが記されているのだ。いくつか要約すると「カッパは傷つけずに生け捕りにすること」「捕まえる際、頭の皿の水をこぼしてはならない」「捕獲場所はカッパ淵に限る」などなど、思わずクスリとさせられる文言が並んでいる。
「カッパ捕獲許可証」を取得してきました! …といっても、売店の店頭で購入しただけですが。ちなみに売価200円。お土産にしても面白い?
もしかすると、この許可証を持たずにカッパを捕まえてしまったら、「密漁」ということで罰せられたり?

「いえいえ、もちろん法的な拘束力はありません(笑)。ただ、この許可証を持って捕まえに行くのではなくて、カッパに会いに行くという感覚で楽しんでほしいですね」(立花さん)

ちなみに許可証は、同観光協会のサイトから通販で買うこともでき、現地で直接購入する場合に限っては、顔写真入りの許可証を発行してもらうことも可能だ(ただし、制作期間が必要なため当日受け渡しは不可)。

「今後は行政や地元の商工会と力を合わせて、全国に向けてさらに効果的にアピールする方法を考えていきたいです」(同)

カッパという観光資源を有意義に活用している遠野市。次はどのようなアイデアが飛び出すのか、楽しみにしておこう。 やはり、地元に残った伝承というのはそれだけで財産なのだな、と思い知らされた取材となりました。

豊かな自然と田園風景が残る遠野は、本当にカッパが現れても不思議ではないような、古きよき民話のムードが色濃く残された地域です。訪れる前に、あらためて『遠野物語』を一読しておくと、いっそう雰囲気を楽しむことができるかもしれません。

さて、当連載では引き続き、全国各地の村おこし情報を大募集。記事に対する感想ともども、気軽にお寄せいただければ幸いです。

また次回!

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