村おこしの経済学

第10回 ライダー歓迎! 二輪車にやさしい町

2009.10.09 FRI

村おこしの経済学


小鹿野名物、わらじカツ丼。ご飯がすっぽり隠れてしまうほどのビッグサイズのカツが特徴!

ライダーが集まる町その理由はどこに…?



エコロジーブーム全盛の昨今、自動車よりも排ガスが少ないオートバイが見直されている。新政権が「温室効果ガス25%削減」を表明したことも手伝い、オートバイは今後ますます重宝される交通手段かもしれない。

そんななか、埼玉県小鹿野町では全国で唯一、オートバイによる町おこしに官民一体となって取り組んでいる。秩父の大自然が目の前に広がり、もともと多くのオートバイが行き交う小鹿野町では、町を挙げてライダーにやさしい環境づくりを進めているのだ。

「小鹿野町を訪れるライダーが年々増えていることに注目し、自治体として予算をつけて『オートバイによるまちおこし事業』を立ち上げたのは平成19年度から。取り組みは今年で3年目になります」(小鹿野町役場事業推進課・長谷川伸一さん)

具体的には、ライダー用伝言板の設置や売店・食事処でのライダー限定特典の導入、さらに町内にはオートバイ専用駐輪場を整備するなど、ソフト面からもハード面からもサービスの拡充を進めている。とくに専用駐車場については、3年前の道交法改正によって二輪車の駐車違反の取り締まりが強化されているから、ライダーにとってありがたい。

でも、そもそもなぜ小鹿野町にライダーが多く集まるのか。その理由のひとつには、首都圏からの距離が手ごろで、日帰りツーリングに適した位置にあることが挙げられる。群馬、甲信越方面を目指す際にも、途中の休憩地点としてうってつけなのだ。また、日本百名山に数えられる両神山や、ロッククライミングの聖地とされる二子山に近く、さらには日帰り温泉施設や国民宿舎が整備されるなど、ツーリングを楽しむのに十分な環境が揃っていることも大きいだろう。

「それから、小鹿野町の名物であるわらじカツ丼も人気です。オートバイ雑誌などに取り上げられる機会も多く、今では小鹿野町でわらじカツ丼を食べることが、ライダーにとってひとつのステイタスになっているそうです」(長谷川さん)

交通安全の面や騒音、マナーなどの点で、バイクはどちらかと言えば自治体から敬遠されそうなものだが、これを逆に歓迎し、地域の活性化につなげているのが面白い。

「正確な集計ではありませんが、年間およそ3万人のライダーが訪れ、わらじカツ丼は年間2万食ほど売れています。今後は住民とライダーの皆さんが、よりうまく付き合っていける環境を作っていくことが課題でしょう。交通ルールやマナーの遵守を徹底していただくよう、PRを進めていきたいですね」(同)

小鹿野町はライダーの憩いの町として、まだまだ発展中だ。
町内に設置された二輪車専用駐車場。また今春には、旧車・名車を展示した温泉施設付き施設、モーターサイクルミュージアム『バイクの森おがの』もオープンしたばかりだ

バイカーはまだまだ増える!? さらなる地域活性化を目指せ



ライダーが多く集まる立地を生かし、自治体として全国で初めて「オートバイによるまちおこし事業」に取り組む埼玉県小鹿野町。二輪車専用駐車場の整備を進めたり、自然を生かしたオートバイトレッキングを構想したりと、自治体と民間が共同で行う事業は今年で3年目を迎える。

こうした取り組みについて、「ライダーにとって来やすく・居やすく・また来たい町を目指すことが事業のコンセプト」と語るのは、小鹿野町役場事業推進課・長谷川伸一さんだ。

「団塊の世代の退職が進むことで、お金と時間に余裕を持った層が増えていきますから、往年のライダーが再びオートバイに乗ることは十分に予想できます。従来は難度が高かった大型自動二輪免許も、今日では教習所で比較的容易に取得することができますし、実際、各教習所で中高年や女性の教習生が増えているとのデータもあります」(長谷川さん)

事実、オートバイ人口の拡大を見越して、ホンダやヤマハなどの国内メーカーはここ数年、大型バイクの開発に積極的だ。オートバイによる町おこし事業は、これからますます効果を上げるものと同町は期待しているのだ。

さらに小鹿野町では、単にライダーを歓迎するだけでなく、オートバイの特性、メリットのPRにも余念がない。たとえばこの秋には防災シーズンに合わせ、ボランティア団体「災害ボランティアバイクネットワーク関東」と連携し、レスキューバイクによる災害救助訓練を公開した。

「大地震の被災地など自動車では通行できない場所でも、オートバイなら活動可能です。『災害ボランティアバイクネットワーク関東』さんでは実際に被災地での現地調査や、薬品や水の運搬などを行っています。ゆくゆくはそうしたボランティア活動への参加も視野に入れながら、オートバイならではの機動力の有用性を世間にアピールしていきたいですね」(同)

オートバイの楽しさやメリットを多角的に啓蒙しようという小鹿野町の狙い。こうした一連の事業を広く知ってもらうために専用ロゴを設けたほか、オリジナルのテーマソングも制作された。

「地元出身のシンガーソングライター・ACKOさんに、町内を横断する国道299号線を題材とした『Sweet road ~R299~』という曲を提供してもらい、地元の売店などで販売しています。また、同曲のピアノバージョンをお昼の防災無線の背景で流したり、店舗でBGMとして用いたり、町内の様々な場所で親しまれています」(同)

今後は観光や宿泊に関する情報を発信するライダーズピットの整備なども計画中。ライダー人口の増加とともに、小鹿野町もますます活気づくに違いない。 オートバイによる旅行者は、排ガスや騒音などの問題から、ともすれば住民と対立しそうなものですが、これをしっかり地域の活性化に生かしているのが小鹿野町のすごいところ。何事もアイデア次第、とまたまた痛感させられた取材でした。

さて、当連載も残すところあと2回。まだまだ、皆さんからの情報をお待ちしております。

また次回!

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