連日の報道でふと思う…

なぜトキだけが特別扱いなの?

2012.11.20 TUE


保護活動によってトキの数は順調に推移し、今年3月の時点では114羽。ちょうど2月~7月が繁殖期のため、さらなる生育数の増加が期待されている 写真提供/時事通信社/環境省
人工飼育や放鳥などと、何十年にもわたってメディアを賑わせているトキ。でもほかにも絶滅が心配される動物はいるはずなのに、どうしてトキばかりが注目されるのか。トキの保護増殖事業を推進する環境省・野生生物課野生生物専門官の志田麻由子さんに話を聞いた。

「トキはかつて日本に広く分布する鳥でしたが、明治時代に乱獲されて個体数が激減し、昭和に入ってからも生息環境の悪化などによって減少の一途を辿ってきました。その後1952年には『特別天然記念物』に指定されるなど、保護活動が熱心に行われるようになりましたが、2003年に日本の野生下にいたトキは絶滅してしまいます。その一方、1999年に日中友好の証として江沢民中国国家主席(当時)から天皇陛下に対してトキのペアが贈られて以来、このペアからの繁殖活動は順調に進んでいます。さらに2008年からは人工繁殖されたトキを野生に返す取り組みも始まっています。このように絶滅から蘇りつつあるトキのストーリーが、人々に注目される理由の一つかもしれません」

弱いものを応援したくなる日本人的な心情によって突き動かされて、保護活動がより活発化しているのかも。

ちなみに調べてみると、『保護増殖事業計画』と呼ばれる希少種を保護するプロジェクトでは、対象になっている動物は47種。その年間予算約5億円のうち、トキには約1億円を計上しているという。

だが、こうした現状に対し、多くの希少動物の保全繁殖に携わっている神戸大学農学部の楠比呂志准教授は、疑問を投げかける。

「希少動物の情報がメディアで報道されるのは良いことですが、トキ以外の動物に関心が向かないことは悲しいですね。たとえば、環境省のレッドリストで最高ランク(絶滅危惧ⅠA類)に指定されているツシマヤマネコが、昨年末、絶滅したはずの長崎県対馬の下島で数十年ぶりに発見されましたが、全国的にはほとんど報道されませんでした。メディアの注目度によって保護活動に差が出るなど本来あってはならないことですが、そういう状況にあることは否定できないと思います」

日本人がトキを気にかけるのは心情的な背景があるのかもしれませんが、ここまでトキばかりが注目を集めるというのは、なんだか不思議な気がしてしまいますよね。
(山田有紀子/blueprint)

※この記事は2010年05月に取材・掲載した記事です

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