世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

ノーベル賞の先にある課題

2012.11.01 THU

理化学ドリル


これがヒトのiPS細胞のコロニーだ。2010年に設立され、山中伸弥教授が所長を務めるiPS細胞研究所(CiRA=サイラ)では、創薬や再生医療に向けた技術開発が急ピッチで進められている
写真提供/京都大学教授 山中伸弥
【問1】日本人のノーベル賞受賞者は、山中教授で何人目?

(A)11人
(B)19人
(C)28人

【問2】日本のiPS細胞の研究資金はアメリカの何分の1くらい?

(A)1/3
(B)1/10
(C)1/100

【解説】京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞した。この分野での日本人の受賞は1987年の利根川進教授以来、実に25年ぶりの快挙だ。これで日本人のノーベル賞受賞者は19人になった(ただし米国籍の南部陽一郎さんも含む)。
ところで、今回のノーベル賞は、もちろんiPS細胞の業績が認められたものだが、実際の受賞理由は「初期化」である。その証拠に、世界で初めて、1962年にカエルを使った実験で、細胞が初期化できることを示したイギリスのジョン・ガードンさんが共同受賞している。
初期化というテーマを切り開いた人物と、ある意味、ケリをつけた人物が共同受賞した格好だ。クローン羊のドリーを作ったイアン・ウィルマットは「真ん中」という評価だったのか、受賞にいたらなかった。ノーベル賞委員会も悩みに悩んだ末、2名を選んだのだろう。細胞の初期化については、コラムで解説します!

[正解] 問1: B 問2:C


竹内 薫 たけうち・かおる 1960年東京生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。マギール大学大学院博士課程修了(専攻は「超ひも理論」)。科学誌『Nature』などの翻訳も手がけるサイエンスライターであり、SF的な小説も執筆する。著書に『理系バカと文系バカ』(PHP新書)、『宇宙のかけら』(講談社)など多数

iPS細胞の研究は、日本のお家芸となるか?



われわれの体は、たった1個の受精卵から始まって細胞分裂をくりかえす。細胞は当初、心臓にも毛髪にも変化できるが、やがて役割が決まってしまう。心臓の細胞は毛髪にはなれない。初期化は、役割の決まった細胞の時間を巻き戻して、いわば「工場出荷状態」に戻してやること。皮膚の細胞を初期化すれば、受精直後と同じで、どんな細胞にでもなれる。iPS細胞は、山中さんご本人の言葉を借りれば、「実験キットさえあれば、高校生の夏休みの課題くらい」簡単に細胞の初期化ができてしまう方法なのだ。実際、ノーベル賞委員会が発表した受賞理由にも「驚くほど簡単な手法」とある。
将来、患者の皮膚から作ったiPS細胞で、その患者さんの心臓や脊椎を治療することが可能になるかもしれない。まさに世界的な偉業だが、夢の再生医療の実現までには、数々のハードルを越えなくてはならない。
iPS細胞は癌になることがある。せっかく治療したのに癌になってしまっては元も子もないから、癌にならないような安全な手法を確立しなくてはならない。動物実験の後、人間の臨床試験が続き、10年、20年単位で安全性を確認してからでないと再生医療は始まらない。
お金の問題も深刻だ。いろいろな計算方法があるが、おおまかに言って、日本のiPS研究の資金は、アメリカの100分の1程度にすぎない。宇宙開発では日本のJAXAがアメリカのNASAの10分の1の予算だが、iPS細胞は、さらに一桁も少ないのだ。
せっかく山中教授が世界に先駆けて開発したiPS細胞。創薬や再生医療の特許をことごとく欧米にさらわれ、日本の患者さんが高い治療費を支払う、なんてことにならないよう、国家戦略として研究資金を増やしてもらいたいものだ。

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