世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

史上最低の温度!

2013.02.21 THU

理化学ドリル


これまで地球上で観測された最低気温は、南極での-89.2℃。ちなみに写真のようなドライアイス(二酸化炭素)の温度は-78.5℃、液体窒素は-195.8℃だ。絶対零度の冷たさを想像できるだろうか?
写真提供/PIXTA
【問1】人類は、どこまで低い温度を人工的に作ることができるだろう?

(A)-273.15℃(絶対零度)よりちょっと上
(B)-273.15℃(絶対零度)ピッタリ
(C)-273.15℃(絶対零度)よりちょっと下

【問2】絶対温度(K)の単位のもとになった人物は、次のうちの誰?

(A)ケプラー
(B)ケルビン
(C)ケルヒャー

【解説】驚くべきことに、つい最近、ドイツの科学者チームが、絶対零度よりちょっぴり低い温度を作ることに成功した。「絶対」がつくことから推測できるように、これまで、絶対零度は、物理学的に可能な最低温度だと考えられてきた。でも、科学の進歩は、あっけなく絶対零度の壁を破ってしまった。
もともと温度はどうやって定義されるのだろう? 空気のように分子があるところでは、温度は、たくさんの分子のエネルギーの「平均値」によって定められる。分子は、いろいろなエネルギーをもち、様々な方向に飛んでいる。ちょうど学校の試験の成績が、低い得点から高い得点まで、幅広く「分布」しているのと同じで、分子のエネルギーにも分布がある。ほとんどの分子は平均近くのエネルギーをもっているが、わずかに高いエネルギーをもつ「はずれもん」がいる。実は、このはずれもんが今回の快挙の立役者なのだ。

[正解] 問1: C 問2:B


竹内 薫 たけうち・かおる 1960年東京生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。マギール大学大学院博士課程修了(専攻は「超ひも理論」)。科学誌『Nature』などの翻訳も手がけるサイエンスライターであり、SF的な小説も執筆する。著書に『理系バカと文系バカ』(PHP新書)、『宇宙のかけら』(講談社)など多数

温度に“絶対”はなかった…?



温度は、分子のエネルギーの「成績分布」、つまりグラフの形と平均値で決まる。平均値は同じだとして、グラフの形が変わったらどうなるだろう。実は、温度は入学試験の「偏差値」みたいなもの。去年と平均点が同じでも、(成績上位者が増えたりして)成績分布が変わると、偏差値はガラリと変わる。ドイツの科学者たちは、レーザーなどを当てて、無理やり、分子の成績分布を変えてしまったのだ。そのため、(あくまでも)定義上、絶対零度より下の温度が達成されたことになった。
考えてみれば偏差値も計算法は知らないけれど、合格ラインを下回ったら一大事だ。温度も同じで、物理学者にとっては大ニュースだったというわけ。多少、比喩的な説明だけど、それが、絶対温度より低い温度の秘密なのである。
さて、温度の単位にもいろいろある。日本で使われている摂氏は、水が凍る温度を0℃、水が沸騰する温度を100℃と決めている。摂氏は「水の温度」なのだ。1742年にスウェーデンのアンデルス・セルシウスが作った。
アメリカなどで使われている華氏は、ドイツのガブリエル・ファーレンハイトが1724年に作った。ファーレンハイトは、自分が測定できた最も低い温度を0°F、自分の体温を100°Fにしたという話がある。ある意味、「人間的な温度」なのだ。ところでなぜ「華氏」なのか? 実はこれは、中国でガブリエル・ファーレンハイトが華倫海特と表記されるからだったりする。
科学の世界では、摂氏も華氏も使わず、イギリスのケルビン卿の名を冠した絶対温度を使う。もっとも、絶対零度が最低温度ではないのだから、「絶対」という名前は変だ。そのせいでもなかろうが、最近は「熱力学的温度」と呼ばれるようになった。絶対温度だけは「°」をつけずに「30K(ケルビン)」などと書く。
うーん、温度って、案外と訳のわからないものだったんですなぁ。

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