不況になると売れる?

「日本語本」ベストセラーの変遷

2013.05.12 SUN


国語辞典を改めて“読む”と様々な発見がある
いくつになっても自信が持てないところが残る「日本語」の使い方。そう思う人は多いらしく、日本語をテーマにした本はたびたびベストセラーになっている。そのキッカケとなったのは、1999年に刊行され190万部を超える大ベストセラーとなった『日本語練習帳』(大野 晋・岩波書店)。その後、いったいどんな日本語本があったのだろうか。時代背景とともに変遷を振り返ってみよう。

「デフレ・スパイラル」が叫ばれた1999年刊行の『日本語練習帳』は、「“うれしい”と“よろこばしい”の違いは?」などの練習問題が多数掲載されており、日本語能力を確かめながら読むことができる。国語学者の著者60年の研究にもとづく奥深い日本語の世界に、楽しみながら触れられる一冊。

そして2年後、ITバブル崩壊で世間が揺れた2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』(齋藤 孝・草思社)も160万部超のベストセラーに。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり」(『平家物語』)といった古典の名句や、「驚き桃の木山椒の木」といったリズムやテンポに乗る言葉などが、大きめの文字で掲載されている。

その後、景気が回復の兆しをみせはじめると、日本語本の売り上げは不況時と比べるとややブームはおさまり気味に。2002年『常識として知っておきたい日本語』(柴田 武・幻冬舎)、2005年『問題な日本語』(北原保雄 編・大修館書店、発行は2004年12月)、2007年『大人の「国語力」が面白いほど身につく!』(話題の達人倶楽部 編・青春出版社)などはヒットしたが、2003年、2004年、2006年には先にあげたような、年間売り上げトップ20に入るような、ベストセラー本が生まれなかった。

しかし、2008年9月のリーマンショック後、本格的に景気が悪化し始めると、再び日本語本ブームが盛り上がり始める。2009年に1冊目が出たあと、シリーズ化して、2010年、2012年にも続編が刊行された『日本人の知らない日本語』(蛇蔵、海野凪子・メディアファクトリー)は、シリーズ累計190万部を突破。日本語学校に通う外国人生徒たちを登場キャラクターにし、外国人ならではの日本語に対する素朴な疑問から日本語の使い方や文法を紹介している。イラストも豊富で楽しく学べるシリーズだ。

どうやら、景気が悪くなると、日本語本ブームが訪れるという皮肉な傾向があるようだ。異常な円高や消費税増税案などで、景気の先行きが不安な2012年。今年も、ベストセラー日本語本が登場するのだろうか。新機軸の日本語本の登場にも期待したい。
(佐伯 望)

※この記事は2012年5月に取材・掲載した記事です

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト