市販化に向けて期待高まる!

「男性用ピル」実現へのハードル

2013.09.30 MON


「女性の負担を減らす」という意味でも、男性用ピルの市販化には期待がかかるところ
今年8月、米ベイラー大などの研究チームが、男性用避妊薬につながる化合物を発見したとニュースになった。がん誘発遺伝子を妨害する目的で作られた化合物「JQ1」に、精子運動能力を低下させる働きがあることが判明したというもので、男性用ピルの市販化に向けてその効果が期待されている。

ピルといえば女性用しか販売されておらず、男性の避妊法はコンドームかパイプカットしかないのが現状。しかし「男性用ピルの研究は1970年代から世界中で行われてきた」と、東邦大学医学部泌尿器科の永尾光一教授は語る。

「精子が体内で作られなくなる無精子症、あるいは精液1ccあたりの精子濃度が1万個未満になる重度乏精子症の状態を作ることが男性用ピル実現のボーダーラインとして研究されてきました。しかし、1ccあたり平均5000万個とされる精子濃度をそこまで下げることはなかなか難しく、今のところ市販化には至っていません」

実は冒頭の研究結果も、永尾教授の試算によれば、1ccあたりの精子濃度が550万~1400万個へと減少するに過ぎず、市販化への道はまだまだ遠いとのこと。なお、今回見つかった化合物「JQ1」は、精子形成に重要なタンパク質と結合することで精子濃度を減少させるというメカニズム。これは、今まで男性用ピルの方法としてもっとも近いと考えられていたホルモン投与とはアプローチが異なる。

「ホルモン投与による男性避妊の大規模な研究は過去にいくつか行われています。なかでも、中国で行われた最大規模の研究では、1045人に対し約30カ月間にわたり毎月ホルモンを投与。6カ月時点で約95%が重度乏精子症に達しました。さらに1549人が参加した別の男性避妊薬試験では、ホルモン投与を止めれば24カ月以内に100%の確率で精子量が回復するという結果も出ています」

しかし、この結果を受けて、ホルモンによる男性避妊の開発から撤退する製薬会社が続出したという。

「失敗すれば妊娠につながる薬ですから、95%の避妊率では高いとはいえません。製薬会社は、望まない妊娠をしてしまった使用者から訴えられる可能性もあります。以上のリスクから、ホルモン投与による男性用避妊薬の開発は進まなくなってしまったんですね」

日本産婦人科学会によると、理想的な使用状態による女性用ピルの失敗率(妊娠率)は0.3%、コンドームは2%とのこと。それに比べると、失敗率5%はまだ高い。

とはいえ、ホルモン投与以外の具体的な方法はこれまで見つかっておらず、その意味では今回の発見は価値がありそうだ。

実現に向けてのハードルは高そうだが、実用化されれば大きな市場になるのは確か。男性としては今後の研究結果が気になるところだ。
(河合力)

※この記事は2012年9月に取材・掲載した記事です

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