あのニオイのもとを探究せよ! 第6回

調香師のルーツは錬金術師だった?

2014.06.07 SAT


香水の本場であるヨーロッパと違い、日本では消費量の多いシャンプーや繊維柔軟剤のニオイを調合する仕事が、調香師業界における“花形”なんだとか 写真提供/PIXTA
人とすれ違ったときにふわっと漂う香水のニオイや、お風呂で使うシャンプーや石鹸、衣類を洗う洗剤のニオイなど、僕らの日常には「人工的ないいニオイ」があふれている。これらのニオイは「調香師(パフューマー)」と呼ばれる香りのプロによって調合されているらしいけど、やっぱり普通の人とは違う、特別な嗅覚を持った人たちなんだろうか?

「いえ、調香師も生まれつき嗅覚が発達しているわけではないんです。化粧品などに用いられる香料は何千種類とありますが、それらの細かい違いを嗅ぎ分けられるようになるために、地道な“ニオイ嗅ぎ”の訓練を積むことで嗅覚を磨いていきます。一人前の調香師になるまでには5年から10年かかるといわれますね」

と教えてくれたのは、香料メーカーの調香師として長年働いた経験を持つ日本香料工業会の金井弘好さん。そもそも調香師っていつ頃からある職業なの?

「香料の歴史をたどれば4000年以上前から人類史に登場してきますが、現代に通じる近代香料の調香師は17~18世紀ごろ、フランスのグラスという地方で誕生しました。当初は貴族たちが使う高価な革製品のニオイを抑えるための技術だったものが、そのまま体につけられる“香水”作りに発展していったわけです。当時流行していた錬金術の技法や道具が、動植物からニオイ成分を採り出す香料の製造に役立ったんですよ」

まさか錬金術が元になっているとは! でも、ニオイって感覚的で正解がないものだけに、ベストな配合を決めるのは難しそう。何を基準に判断しているんだろう?

「ひとつの香水には少なくても50~100種類くらいの香料がブレンドされていますが、それをどう配合するかは調香師の個人的なセンス次第なんです。ニオイから想起される感情やイメージは人によって千差万別ですが、例えば有名なシャネルの5番は“北欧の白夜のイメージの香り”という注文から作られたといわれています。独創的な香りを生み出す調香師には、ある意味で芸術家的な才能が必要といえるかもしれませんね」

ちなみに、香料の配合がわかれば同じニオイを作れるだけに、伝統的なブランドは香水などのレシピを門外不出の秘伝として守っているという。そのため、現代でも香料メーカーや調香師には秘密主義的な傾向があり、あまり表に出ることがないんだとか。そんなところも含めて、ちょっとロマンチックなお仕事かも。
(呉 琢磨)

※この記事は2012年6月に取材・掲載した記事です

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト