あのニオイのもとを探究せよ! 第8回

“くさいニオイ”に惹かれる理由

2014.06.23 MON


「記憶は“感情の記憶”と“出来事の記憶”に分かれていて、前者は好き、嫌いといった感情のみが残ります。ニオイは感情の記憶と結びつきやすいんです」(坂井さん) 写真提供/PIXTA
「くさいニオイ」といえば、普通は嫌われる対象であって、僕らは基本的に“くささ”を避けて生きている。しかし、納豆やくさや、チーズに代表される「くさい食べ物」は、苦手な人もいる一方で、熱狂的なファンになる人も多い。「くさいものに惹かれる」という嗜好って、一体どうして生まれるんだろう?

「ニオイの嗜好は味覚の変化と同じで、年齢を重ねるごとに変わっていく傾向があります。かつて納豆のニオイが大の苦手だった人が、ある日克服して納豆好きになるケースも多いですよね。ただ、なぜ嗜好が変わるのかというメカニズムは、はっきりした理由がわかっていません。食品の場合は、『食べてみたらおいしかった』という経験を重ねることによってニオイの認識が変わるパターンや、マゾヒズムの一種として『くささを嗅ぐことが快感に変わった』というパターンなどがあり、それらが複合的に重なって嗜好を変化させるのではないかといわれています」

と教えてくれたのは、ニオイの影響を研究している東北大学大学院の坂井信之准教授だ。食品以外では、「自分の足のニオイをつい嗅いでしまう」とか、「ワキのニオイが気になる」といった、なかなか他人にはいえないニオイの嗜好もあるけれど、これはどうなってるの?

「これも一言で原因を語ることはできないんですが、自分の体臭については、強いニオイを嗅ぐことで『自分は生きている(元気だ)』と実感できる側面があり、自分自身を確認して安心するための作業といえますね。ワキガのような他人の強い体臭に惹かれるのは、犬が他の犬のおしりを嗅ぐのと同じように、フェロモンを感じていると解釈できます。人の脇や陰部など、いわゆる縮れ毛が生えている部分にはアポクリン腺という汗腺があって、通常の汗よりも脂分が多く、ニオイの強い汗が出るんです。最近の研究では、このなかに人間のフェロモンが存在していると考えられています」

つまり「おいしい」とか「好き」といったポジティブな経験を重ねることで、ニオイに対する感情は人それぞれに変わっていくわけか。ある意味、いろいろな“くささ”を楽しめる人ほど、人生経験が豊富ってことかも?
(呉 琢磨)

※この記事は2012年6月に取材・掲載した記事です

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