あのニオイのもとを探究せよ! 第12回

世界的に進む「ニオイの商標登録」

2014.07.22 TUE


従来の商標法では「文字」や「図形」など目に見えるものに限って商標登録が認められていた。「ニオイ」が商標になった場合、どれだけの権利保護が与えられるのかも気になるところだ 写真提供/PIXTA
今年6月、特許庁はニオイや音、食感などを「商標」として登録できるようするため、商標法を改正する方針を固めた。商標の多様化は世界的な流れで、欧米ではニオイのほかに動き、触感、色彩などを登録できる国も多いんだとか。身近なところでは、久光製薬の「サロンパスのニオイ」が米国で商標登録されている。

でも、目に見えず、手で触れない「ニオイ」という主観的な感覚を、一体どうやって測るんだろう? そこで、ニオイを判定する国家資格である「臭気判定士」のベテランであり、臭気判定士会の常任理事を務める伊藤英武さんに話を聞いてみた。

「そもそもニオイというのは、正確に測定するのが極めて難しい感覚です。通常の環境におけるニオイ物質は40万種類以上あるといわれていますが、そのなかでも人間の鼻が特に敏感に感じるものもあれば、よほど濃くなければ感じられないものもあり、単純に数値化することができません。臭気判定士の業務では、6人以上が試料のニオイを嗅ぎ、その濃さを『臭気指数』という目安で数値化する方法が採られていますが、あくまでも“ニオイの濃さ”を判定するもので、ニオイの種類を厳密に特定できるものではないんです」

よくテレビなんかで、機械の「ニオイセンサー」を使ってニオイを数値化しているのを見るけれど、あれはどういう仕組みなの?

「ああいったセンサーは、空気中に含まれるニオイ分子の濃度を測るためのものです。しかし、ニオイ物質はその種類によって“どれくらい強いニオイに感じるか”がまるで違います。また、実際のニオイは様々な成分の混合臭ですから、臭気源の種類が限定できてない場合、分子量だけでは人間がどう感じるかはわからないんです。結局ニオイを測定するには人間の鼻を使うしかなく、個人の主観でしか語れない文学的な領域が残るんですよ」

制度的に先行している米国でも、現時点でニオイが商標になっている事例はごくわずかしかないんだとか。日本の特許庁がどのような方法で商標登録するニオイを審査するかは、まだハッキリしていない模様だ。企業のロゴを集めるみたいに、いろいろなニオイのサンプル集があったら面白そうだけど…はたしてどうなることか。
(呉 琢磨)

※この記事は2012年7月に取材・掲載した記事です

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