鍵を握るのは日本酒度と酸度…

日本酒「辛口」は辛くなかった!?

2014.11.20 THU


濱田さんによれば、「甘さは温かいと増し、冷たいと減る」とのこと。人間の味覚は、かくも繊細なのだ
11月20日は「ボジョレー・ヌーヴォー」解禁日。今年もひととおり盛り上がりそうですが、ちょっと待った! わがニッポンには、恐れ多くも国名を冠した「日本酒」というものがあるではないか。この季節は、とくに熱燗でキューッとやるのがたまりませんな。

しかし、メニューを見て一瞬悩むのが「辛口」「甘口」という表記。個人的には、「そっちのほうが男らしいだろう」という安直な考えで辛口をオーダーするのが常だが、実際は何が違うのだろうか。

いわば、“日本酒のプロ”である日本酒造組合中央会(東京・港区)の理事・濱田由紀雄さんに聞いてみた。

「日本酒の『辛口』『甘口』は、日本酒度の数値によって分けられます。日本酒度とは比重を指し、明治時代から使われている浮秤(ふひょう)という浮き秤で計測。お酒の中の糖分が少ないと比重は軽くなって+(プラス)表示の『辛口』に、多いと重くなって−(マイナス)表示の『甘口』となるわけです」

日本酒度の幅は、だいたい+15から−15まで。今まで「男らしい」と思って飲んでいた『辛口』の日本酒は、決して“辛い”わけではなく、つまりは糖分が少ないという意味だったのだ。

「さらに、10年ほど前からは酒類総合研究所の提案により、酸度も考慮して『辛口』『甘口』表示をしようという動きが出てきました。お酒に含まれる酸度を計測するわけですが、日本酒度が同じ場合、この酸度が高いと『辛口』に、低いと『甘口』になる。これは、酸味に甘味の感度を打ち消す働きがあるからです」

ここで、面白い資料を見せてもらった。市販されている代表的な日本酒の日本酒度平均値の推移グラフだ。それによると、明治初頭は+17などという途方もない『辛口』が多く流通し、人気をあつめていたようだ。しかし、その後は徐々に下がっていき、昭和初期に平均値は『甘口』へと転じる。

「終戦後の昭和21年を過ぎると再び平均値が『辛口』に転じます。ところが、約7年後の昭和28年頃には、また『甘口』へと転換。その後の高度経済成長期は、昭和47年の“-6.4”を頂点とした緩やかな甘口志向の曲線を描く。元号が平成に変わったのを境に、平均値は再度『辛口』に転じ、現在もそのまま横ばい状態で続いています」

日本酒の『辛口』『甘口』は糖分と酸味の量だった。濱田さんによれば、「一般的に『辛口』の方がお燗に向いている」とのこと。こうした日本酒トリビアを肴に、寒い今夜も一杯いきますかね。
(石原たきび)

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