映画ではなくNASA発の大マジメな話

ハリウッドのスタントマンが人工衛星を空中キャッチ!?

2004.09.30 THU

NASAは盛り上がっていた。2年前の8月に打ち上げた探査機「ジェネシス」が、太陽風のサンプルを9月8日に持ち帰ってくる予定だった。採取した太陽風の粒子は10~20(1は100万分の1g)しかないが、太陽を構成する元素や同位元素の正確な比率を算出することができる。成功すれば月以外の天体から採取した初めてのサンプルになったばかりか、太陽系ができた仕組みが明らかになるやもしれなかった。騒ぐのも無理ない。

地球から約150万km離れた「ラグランジュ点1」(地球と太陽の重力が釣り合う場所)での太陽風採取には成功したが、問題は太陽風を詰め込んだカプセルをどのように回収するか、だった。カプセルは大気圏に突入し、パラシュートで落下。ユタ州の砂漠に位置する空軍トレーニングセンターに、“着陸”するように計算されていたが、いかんせん太陽風の粒子は細かい。着陸時の衝撃が粒子に与える影響が心配された。NASAの科学者が思いついたのが、ヘリコプターを使い空中で落下中のカプセルを捕らえる作戦だ。簡単に言うと、ヘリコプターに取り付けた長い竿をパラシュートに引っ掛けるというもの。

冗談のようだが、NASAの科学者は大マジメ。そこで抜擢されたのが、ハリウッド映画のスタント専門パイロットだ。そのうちの一人、クリフ・フレミング氏は数々の映画などでスタントをこなすベテラン。大気圏に突入したカプセルは、地上から2万フィート付近でパラシュートを放つはずだった。練習は幾度となく行われ、万が一に備えヘリコプターは2機空中に待機。5度のチャンスがあり、空中キャッチに失敗する確率は最低限に抑えられた。

だがハプニングは起こった!カプセルのパラシュートが開かなかったのだ。空中を時速300km近くで落下するカプセルには、手も足も…竿も出ない。太陽系誕生のカギは、研究者には手に入ることなく地面にめり込んでしまった。

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