タイヤ開発技術が生み出したひとつの美談

ブリヂストンの人工尾びれが沖縄の高齢イルカを救った

2004.12.22 WED

ブリヂストンは、タイヤでその名を世界に馳せている。が、なぜかイルカの人工尾びれを作ったと先日発表した。イルカは人気があるから、新手の商売でも始めるのか?いやいや、これが実に美しい話で、ブリヂストンのタイヤ開発技術が、ひょんなことでイルカを救うことになっただけのこと。

沖縄美ら海水族館で飼育されているイルカ「フジ」が、02年10月ごろから尾びれの末端が壊死してしまう難病になった。尾びれを切除し一命はとりとめたもののイルカ本来の泳ぎを失った。ゴムを使えば人工尾びれが作れるかもしれない、と12月にはブリヂストンの一人の社員が立ち上がった。タイヤの素材であるゴムを使って、人工の尾びれを作ろうというもの。やがてブリヂストンが持つ技術力を最大限活用するために、プロジェクトチームまで結成された。

装着された人工尾びれの素材は、生体適合性に優れたシリコンゴム。イルカは肌が弱いので、人工尾びれとイルカの肌が接する部分にはクッション材として柔らかいスポンジのような発泡ゴム(エバーライトモランというブリヂストン製品)を用いた。人工尾びれを固定する補強材には、金属に比べ軽量ながら強度が保てる先端複合材料を採用。尾びれの設計にあたっては、タイヤ設計に用いられる技術を導入した。それがFEM分析と呼ばれるもので、ブリヂストンのノウハウが大活躍した場面でもある。これはタイヤが石を踏んだ際、どのように変形するかシミュレーションする技術。イルカの尾びれは、部分によって柔らかかったり、硬かったりするので、コンピューターを使った構造解析に試行錯誤を繰り返したとか。

最初の試作品は03年9月に出来上がったが、最終的なものは04年3月に完成。水槽での実験を重ね、フジに人工尾びれを装着したのは8月。今では水上へジャンプできるほど、元気に泳げる状態まで回復している。研究開発陣の知恵と情熱が、一匹のイルカを救ったのだ。

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