まっすぐにした川を再び歪ませるのはナゼ?

“自然再生事業”っていったいどんな事業なの?

2006.12.07 THU

かつて河川周辺の湿地には、貴重な動植物が生息していた。しかし戦後の高度経済成長期に、「川が曲がっていると氾濫を起こす」「開発の邪魔になる」などの理由で護岸工事やダム建設などが行われ、湿地周辺の動植物は失われていった。当時は動植物よりも川の氾濫を食い止めるほうが重要だったのだ。近年、これら動植物の生態系を復活させるため、いったんはコンクリートで固めた堤防を岩や石が入り組んだ自然に近い形に戻し、人為的にまっすぐにした川を再び蛇行させる…そんな取り組みが行われているそうだ。それらは「自然再生事業」といわれている。人口減少時代の昨今、開発よりも自然再生に目が向けられているのだ。

例えば釧路湿原ではかつて、クネクネ曲がっていた川を農地整備のため、まっすぐに改造した。当時は、釧路湿原に住む希少種よりも、農地を整備するほうが重要だった。その結果、湿原の面積は減少。そして今、自然再生事業により、7年間をかけて、湿原を再生させる試みが行われている。

自然再生事業が増えたきっかけは、02年12月に「自然再生推進法」が制定されたことに由来する。環境行政を研究する関西学院大学・久野 武教授は言う。

「これまでも地域の自主的な取り組みにより自然再生事業は行われてきました。ただ、行政が主体になっているものが多く、地域住民に理解を得られない場合もありました。自然再生推進法は行政だけでなく、地域住民やNPO、専門家などを交え、みんなで考えていこうというものです」(久野氏)

自然環境を守り維持するには、特に住民の協力が必要。そこで、住民やNPOの力を借りようというわけ。しかし、手放しで喜べない事情もある。国交省の調査によると、工事後の調査を怠っている例が9割近くもあるそうだ。誰かが手を抜けば、再生されるはずの自然も戻ってはこない。自然を再生させるのは大事だけど、その後も、“自然のままほっておけばいい”というものではないはずだ。


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