もうすぐ怪談の季節ですが…

そのまえに素朴な疑問「幽霊」って実在するの?

2007.07.12 THU



イラスト:神本和思
夏が近づくと書店には怖~い話の本が並び、映画館ではホラーが上映される。昔からの定番だ。でも、スピリチュアルブームが批判されたりする一方で、こうした怖い話の主役「幽霊」が実在するのかしないのか、そのへんはなぜかあまり問題にされない。ぶっちゃけた話、幽霊ってほんとうにいるのか?

それを考えるうえで面白い本がある。いまから半世紀以上まえ、1950年代の日本でも現在と同じように心霊現象がもてはやされたときがあって、何人かの学者が幽霊についての興味深い本を書いているのだ。日本初の幽霊研究書、池田弥三郎『日本の幽霊』(中公文庫)や、民俗学者の今野圓輔による怪談研究の古典、『怪談 民俗学の立場から』(中公文庫)がそれだ。

ふたつの本に共通しているのは、古来より人々のあいだで伝承されてきたいろんな幽霊話や、『源氏物語』『万葉集』といった古典を引用しながら、幽霊に関する素朴な疑問を真正面から論じていること。なぜ幽霊がでてくるのは夏なのか、なぜ幽霊には足がないのか、幽霊と妖怪の違いは何なのか――。じつは、夏に幽霊が語られるようになったのは歌舞伎の影響が大きく、たとえば有名な『四谷怪談』の場合、もともと原作ではヤマ場の「蛇山の庵室」の季節は冬で、そこに出現する“お岩さん”はいわば冬の幽霊だったという。また幽霊に足がなくなったのも最近のことで、万葉時代の幽霊には足があったばかりか、「恨めしや~」に代表されるドロドロとした怨恨の要素もそれほど強くなかったらしいのだ。

そして、もうひとつ共通するのは、科学者のように幽霊を否定するのではなく、あるいはスピリチュアルな人のように霊魂の存在を疑いもなく認めるのでもなく、伝承文化としての幽霊を淡々と語っていること。重要なのは「いるか、いないか」の二者択一ではない。嘘かほんとうかではなく、大切なものはそのあいだにこそ隠されている。昔ながらの怖い話はそんなことを教えてくれているような気がするのだ。


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