絶滅危惧種を冷凍保存する現代の箱舟

世界に誇る技術を集結した日本の環境試料バンクとは?

2008.04.03 THU



ヒムロイサム=写真photography ISAMU HIMURO
ノルウェーに今年2月、種子を冷凍保存できる世界最大の施設「グローバル種子ボルト」が誕生した。農作物種の絶滅回避のために造られたそうで、旧約聖書に出てくる「ノアの箱舟」みたいで、カッコいい! 種子をはじめ、環境や生態の調査・分析などのために収集されるもの全般を「環境試料」というが、それらを長期保存できる施設は日本にもあるのだろうか? 調べるとホ乳類、魚類、植物など、各分野の環境試料バンクが各地に存在することが判明。そこで、世界初の鳥類遺伝資源バンクとして有名な国立環境研究所の「環境試料タイムカプセル棟」を見に行ってみた。ここでは鳥類をはじめ様々な絶滅危惧種の動物が、マイナス150度の液体窒素タンクとマイナス60度の保管庫で凍結保存されている。絶滅回避・絶滅種復活のために体細胞などが培養・保存されているのだ。

「鳥類は卵や受精卵の凍結保存ができないので、将来に役立つ環境試料を残すのが難しいのです。そこで当研究所は、卵や精子の元となる細胞(始原生殖細胞)を採取し、長期培養しています」(国立環境研究所・桑名貴氏)

始原生殖細胞を含め、鳥類の細胞を培養して凍結保存できるのは、世界中で同研究所だけなのだそう。凍結保存した絶滅危惧種の始原生殖細胞があれば、仮に絶滅してしまったとしても、再び誕生させることが可能だ。現に久連子鶏(熊本県天然記念物)の始原生殖細胞を一般的な鶏の胚に移植して、純粋な久連子鶏が産まれている。

環境試料タイムカプセルでは、化学の観点から環境問題に役立てるため、貝や大気粉じん試料なども凍結保存されている。

「様々な物質濃度レベルを測定し、汚染物質の長期的変動を研究しています。新たな環境問題が発生した際にも、原因究明に役に立ちます」(同研究所・田中敦氏)

あらゆる角度から環境試料を集めておけば、万が一のとき、人間や動物を救う大事な素になるのだ!

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