アレをコレで代用してみたら・・・

第1回 ロジンバッグってほかの粉じゃダメ?

2009.02.25 WED

アレをコレで代用してみたら・・・

いきなりですが、かけがえのない人だとかものだとかよくいいますが、そんなオンリーワンなものって世の中にあるのでしょうか? いや、人はともかく、ものの代用品はいくらでもありそうじゃないですか? そんな疑問を握りしめ、体当たりで検証していくのがこのコラムです。

過去を振り返ってみても、手書きタイプライターワープロパソコンみたいな感じで、それまでのものにとって代わるものが登場してきたわけです。そう考えると、たとえ今、十分便利と思えるものでも、代わりになるものはきっとあるはずです。もし代用品がうまく見つかれば、代わり映えのない一日も、パッとするんじゃないでしょうか。

というわけで、皆様の代わりにアレコレ試しますので、よろしくです。

記念すべき1回目は、野球でよく使われるロジンバッグの代わりを探します。WBCにプロ野球にセンバツと、球春到来で盛り上がっているのをいいことに、「代打オレ!」ならぬ「代打コレ!」なテンションでやってみました!


写真提供/ミズノ これがロジンバッグ。日本にはまだジャイアンツもタイガースもなく、夏の甲子園や春のセンバツが始まったばっかりだった1920年代から大リーグで使われていた、野球には欠かせない道具の1つだ

いつ導入された? 粉の成分は?野球で使うロジンバッグの正体に迫る!



ロジンバッグ。ピッチャーがマウンドでポンポンとやって白い粉がブワっと飛び出すアレです。ロジンバッグとはなんぞやと聞かれても、僕にはそんな説明しかできませんが、みなさんはどうですか?

そこで、野球史研究家の鈴村裕輔さんに伺ったところ、ロジンバッグもやはりベースボール発祥の地アメリカで生まれたようです。

「ロジンバッグは、大リーグの規則委員会が、1926年1月30日に使用を許可しました。1926年当時の野球規則では、ロジンバッグは『粉末状の松やに(ロジン)を入れた、小さく、網目状の封をされた袋』と定義され、これは、今でも変わっていません。日本では、標準的な成分は炭酸マグネシウムが80%、ロジン(松やに)が15%、ネオポリマーなどの石油樹脂が5%となっています。一方、大リーグで使用されるロジンバッグは、ロジンの量が15%より多く、その分炭酸マグネシウムの含有量が少なくなっている、といわれています。また、大リーグでは、ロジンバッグ登場以前は、単なる炭酸マグネシウム、あるいは砂や土などを手に付けていました」

ロジン=松やにということだったんですね。しかも、1926年といえば、ベーブ・ルースが活躍していた時代。そんなに古くからロジンバッグがあったとは! でも、なぜ使われるように?

「導入された理由として有力なもののひとつが、1920年に決められた『不正投球の禁止』です。不正投球とは、ヤスリで球に傷をつける『エメリー・ボール』、球の一部を指輪などで傷つける『カット・ボール』、唾やワセリンなどを付ける『スピット・ボール』などです。エメリー・ボールやカット・ボールは傷で指にかかりやすくなるため回転数が上がり、急激かつ鋭い変化をつけられます。また、スピット・ボールは唾によって回転数が減り、ナックルボールのように不規則な変化をつけられます。これらは、打者に不利になり、打者と投手の勢力の均衡を崩して野球という競技の本質を変えてしまうということから禁止されました。その後、不正投球を排除するために、逆に利用可能なものとしてロジンバッグの使用を認める内容を野球規則に取り入れたと考えられます」

そんな経緯が。でも、ヤスリや指輪はダメなのに、ロジンバッグの使用はなぜ問題がないんでしょうか。

「ロジンバッグは、球の表面に傷をつけることがなく、また、審判と連盟が管理を担当することが可能という理由が大きいと言えます」

なるほど、それで使われるようになったんですね。では、そうして登場したロジンバッグは、そもそも何のために使われているのでしょうか。ミズノ・広報宣伝部の薬師寺洋彰さんにお話を伺いました。

「それぞれの選手で求める指の状態は違うので、一概には言えませんが、基本的には滑り止め効果を得るために手先につけます。また、ドーム球場と屋外の球場では湿度や気温が異なるように、環境によって使用頻度は変わります。たとえば、屋外での夏の試合などは汗をかきやすく、指が滑りやすい状態になるので使う機会も増えてくるんです」

なるほど、滑り止めがロジンバッグの主な役目なんですね。さらに、ピンチなどで間をとって落ち着くために手に取る人もいると聞くし、鈴村さんによれば、手の保温のために付ける人もいるとか。いろんな役割があって、なんだかかけがえのないもののような気がしてきました。
用意した粉たち。上段左からロジンバッグ、小麦粉、そば粉、片栗粉。下段左からベビーパウダー、グラニュー糖、ココアパウダー。ロジンバッグをしのぐ滑り止め効果のある粉はこのなかに存在するのか?

いろんな粉でロジンバッグの代用を試みた!



松やにや炭酸マグネシウムの粉が、滑り止めの役目を果たしている野球のロジンバッグ。大事なグッズには間違いありませんが、もしかしたら、ほかの粉でも代用できたりして。それを判断するには、実際にやってみるしか道はありません。というわけで、いろんな粉で、実験してみることに。

その前にミズノ・広報宣伝部の薬師寺さんにどんな粉がいいのか聞いてみると、「滑り止め効果の高い粉がいいですね。また、湿度が変化しても、乾燥を保てるもの。袋に入れるなら、袋をたたいたときに穴から出過ぎてもいけませんし、出なくてもいけません。適した細かさが求められます」とのアドバイスが。

つまり、滑り止めになり、乾燥している粉。それを考慮しつつ、僕たちの身近なところから6種類の粉(小麦粉、そば粉、片栗粉、ベビーパウダー、グラニュー糖、ココアパウダー)をセレクトしました。今回は、袋には入れず、あくまで粉のみでの実験。それぞれの粉を手に付けて5球ずつ投げて、球速と投げやすさをチェックしてみました。もちろん、ロジンバッグも用意しましたよ! 

投げるのは草野球歴9年の僕。自他ともに認める超ノーコンなのですが、今回はあえてスピード重視、コントロールは二の次で投げてみました。果たして違いは出るのか?
草野球をやるならやっぱりここ、河川敷のグラウンドへ。ひとり意味なくユニホームに着替えて手に粉をつけまくり、スピードガンの表示を気にしながらのピッチング。自分の予想以上に球は遅い…
●何も付けない 平均速度 95 Km
今回使ったのは、軟式のボール。僕らが子どものころとは規格が変わり、当時のような無数のちっちゃいくぼみはありません。ツルツルしてて、ちょっと滑ります。それにしても、スピード重視のはずが、遅い。遅すぎる。速度を水増しして報告したい衝動にかられます。

● ロジンバッグ 平均速度 98.8Km
ロジンバッグを付けてみると、2球目でこの日初めての時速100km突破。スピードも出るし、何も手に付けていないときよりもボールが指にかかるので、コントロールもつけやすい感じです。

● 小麦粉 平均速度 95.4 Km
さらさらです。触ると気持ちいいけど、手のひらにも指にもそれほど粉が残りません。ロジンバッグを付けたときと比べて滑る感覚があります。コントロールを少しでも意識すると、腕が思い切って振れません。

● そば粉 平均速度 93.4 Km
「打つ」といえば、野球かそば! 小麦粉ほどは滑らないけど、投げやすくはありません。非常に中途半端な使い心地です。ここまで20球。早くも疲れてきました。滑り止め効果がない粉だと、コントロールも悪くなります。

● 片栗粉 平均速度 平均速度 94.0 Km
松やにレベルの粘り気がありそうなイメージで選んだ片栗粉。そば粉や小麦粉と比べると、手によくなじみます。コントロールもつけやすくなりましたが、「投げやすい」といえるほどのものではありません。粘り気には水が必要なのね。

● ベビーパウダー 平均速度 88.8 Km
ポンポンとやって白い粉がブワっと出るアレとは? この問いに対する正答は2つ、ロジンバッグ、そしてベビーパウダーでしょう。とてもいい香り。が、付けてみると、この日一番のツルツル感。滑りまくりで大暴投を連発しました。

● グラニュー糖 平均速度 93.2 Km
ピッチャーとして投げてはいけないはずの甘いボールになんて考えながら選んだグラニュー糖。ベタベタしそうなイメージがあるけど、全然指になじまず、ボロボロと落ちてしまいます。これじゃあ何も付けてないのと一緒です。

● ココアパウダー 89.6 Km
なぜか用意しちゃったココアパウダー。舐めるとちょっといいお味。でも、手が汚れます。汚れる割に、効果はほとんど感じられません。コントロールもつかない。疲れも加わってスピードもがた落ちです。早くお家に帰ってココアが飲みたいです。

●ロジンバッグ(再チャレンジ) 平均速度 93.4 Km
もはや僕の左腕は限界です。球速も落ちる一方だし、実験台として、失格だったのかもしれません。でも、最後に、もう一度ロジンバッグを付ければ球速が上がるかも。すると、小麦粉以来出ていなかった時速96Kmを記録。

というわけで、平均速度がもっともよかったのはロジンバッグ使用時で、時速が100Kmを超える球を投げたのも、ロジンバッグを使ったときだけ。投げやすさもロジンバッグを超える粉はありませんでした。

さて、ここまで実験しておいて今さらですが、野球のルールではほかの粉を使った時点で反則になりますので、ご注意ください。そもそも、ロジンバッグそのものを用意するのもチームではなく審判サイドなので、中身を入れかえるチャンスもないんですが。

いずれにせよ、ロジンバッグの代用品となる粉はないようです。一方、ノーコンなうえにスピードがなくスタミナもすぐ切れる僕は、代わりなんていくらでもいる使えない投手であることが判明しました。試合でロジンバッグを使うチャンスすらなさそうです。まあ、今回の結果は、代用品に使った粉の責任もでかいとは思いますが。特にベビーパウダー! ロジンバッグと雰囲気がかぶるから選んだけど、ツルツルスベスベし過ぎだよ! あ、当たり前か。 80年以上の歴史を持つロジンバッグ。
松やにと炭酸マグネシウムを主成分にしたそれは、
ほかの粉を寄せ付けない滑り止め効果を発揮するものでした。

一方、そば粉、小麦粉、片栗粉など、
僕たちの身のまわりにある粉は滑る。
ロジンバッグの代わりとして不合格です。
特にベビーパウダーはとても滑ります。

試験前の人、もし読んでたらごめんなさい。
でも、滑ります。

そして、ロジンバッグさま。
代わりがありそうなんて思ってごめんなさい。
あなたは滑りません。

でも、あきらめてません。
今回のロジンバッグはだめでしたが、
あきらめずに今後もいろんな代用品を探していきます!
アレはコレの代わりになるんじゃないか! 
なんて情報やアイデアをお持ちでしたら、
ぜひお便りください。
体を張って実践してみます!
ボロボロになるまで、やってやります!

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