熱海、別府、鬼怒川、嬉野…

明るく笑えるエロスの館秘宝館が温泉街にあるワケ

2009.07.09 THU


夏休みが頭をよぎる今日このごろ。温泉旅行でリフレッシュ! なんて考えている人もいるだろう。で、温泉と聞いて思い出すのが秘宝館。性器を模した御神体や裸のロウ人形が山ほど展示されている、あのエロスの館だ。なぜ秘宝館の多くは温泉街にあるのか? 東京大学大学院生で、秘宝館文化に詳しい妙木忍さんに聞いた。

「72年に初めて伊勢にできた秘宝館は、解剖模型などを展示する医学的な側面を含む施設で、性の啓蒙という役割も担っていました。しかし秘宝館に観光事業としての将来性を感じた映画美術のプロが、医学展示をやめ、かつ娯楽性を強めて再構築しました。それが現在、温泉街にある秘宝館です」

確かに熱海秘宝館では、おっぱい型のボタンを押すとロウ人形が動いたり、ハンドルを回すとスカートがめくれたりと、ユーモアを感じさせる仕掛けが多く見られる。照明や演出も凝っていて、さながら大人の遊園地である。かつて旅行といえば温泉で、しかも大型バスで行く団体旅行が中心だった。仲間同士で楽しめる温泉街の遊び場として受け入れられたのだろう。そう考えると、温泉街との関係性にも合点がいく。しかし個人旅行が主流になるにつれ、秘宝館もまた衰退していった。

「さらに興味深いのは、『女性を意識して作った』という関係者の証言です。秘宝館が誕生した70年代初頭は、自由時間の増大や所得水準の向上により観光が男性の間で大衆化した時代。その後、とくに70年代後半からは、出生率の低下や可処分所得(=自由に使える手取り収入)の増大などを背景に、今度は女性が旅行に行くようになりました。秘宝館の明るく笑える展示は、男性同士はもちろん、女性客も取り込もうと意図して作られたようです」(同)

北海道秘宝館のチラシに「おんなの広場OPEN!!」というコピーが確認できる。ただの珍妙な観光施設と思うなかれ。秘宝館は観光の歴史が透けて見える貴重な文化遺産なのである。


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