ラーメンのない人生なんて…

第5回 ラーメンを食す“お作法”はあるのか

2009.07.27 MON

ラーメンのない人生なんて…


あっさり系ながら滋味深いスープ。自家製麺のツルツルした歯ごたえもたまらない! アメリカでフレンチシェフとして活躍したアイバンさんが繰り出す「醤油ラーメン」は実に独創的だ

ラーメンに“正しい食べ方”なんてあるの?



ラーメンの食べ方を解説している映画がある――そんな友人のタレコミを受けて、ボクが用意したDVDは『タンポポ』。言わずと知れた、故伊丹十三監督の佳作ですな。

さっそく、鑑賞してみるとおっ、ラーメン道の先生が食し方を説くシーンがやってきました。ちょっと抜粋してみましょう。

「最初はスープからでしょうか? それとも、麺からでしょうか?」という問いに対し、先生いわく。

「最初はまず、ラーメンをよく見ます。丼の全容を、ラーメンの湯気を吸い込みながら、しみじみ鑑賞してください。スープの表面にキラキラ浮かぶ無数の油の玉を。油に濡れて光るシナチク、早くも黒々と湿りはじめたノリ、浮きつ沈みつしている輪切りのネギたち。そしてなによりも、これらの具の主役でありながら、ひっそりと控えめにその身を沈めている3枚の焼き豚」

ムムム。観ているだけでラーメン屋に駆け込みたくなる名シーンですよ! その後、先生は箸で麺をなでること数度。丼の右上方に焼き豚を移し替え、麺をすすること3度。そしてシナチクを口中に投じた後、満を持してスープをすするのであった――。

こ、これぞ完全なる様式美の世界! ラーメン道と呼ぶにふさわしい食べ手順が指南されてゆきます。やっぱりラーメンって奥深い世界なんですね~。

本作『タンポポ』をニューヨークで観てラーメンに魅せられ、来日。ついには自分でラーメン店を開いてしまったアイバン・オーキンさんに、さらなるラーメン作法を聞いてみましょう。
「130gの麺に合うようにスープを調整しているから、ボクの店ではメニューに麺の『大盛り』はないんだ」と語るアイバン・オーキンさん
「No, No! あれは伊丹監督がパロディでインサートしたシーンでしょう。アメリカ人でも、あの作法を本気にして観ている人なんていなかったですYO! ラーメンって、ホットドッグ、ハンバーガーのようなストリートフードだからね。マナーなんか気にせずに食べる楽しい食べ物。でも、ストリートフードはスピードが第一。お店側はとにかく早く客に出すし、それをお客さんもササッと食べるものだと思うよ」

あら、『タンポポ』に魅せられたアイバンさんには、ボクが(勝手に)考えたラーメン道もあっさり否定されてしまいました。でも、そんなアイバンさんにも職人として譲れないポイントがあるみたい。

「ラーメンを食べる前に、コショウをパラッとかけるお客さんが25~30%はいるんだYO~。味を確かめないうちからコショウをかけられるって、料理人にとっては悲しいこと。ボクは、麺、スープ、具材、そのバランスを何十、何百通りも試してベストの組み合わせを一所懸命見つけ出したんだもの。お客さんの目の前に置かれた状態が一番美味しい! と自負している。だから、まずはプレーンで食べてほしいと思うよね」

なるほど! 職人が精魂込めて作った一杯をガシッと受け止め、堪能する。美味しいラーメンを提供してくれるお店に対して、これこそが最大のマナーなのかもしれません。
「ラ部は、各種の作法を掲げていますが、これは、どうしたらより美味しく食べられるだろう? という問いかけを形にしたもの。美味しく食べられるなら、“通気取り”と言われようとも構いません!」と、ニヒルに麺をすする青木さん

ラーメンを美味しく食べるための様式とは!?



突然ですが、質問です。

皆さん、ラーメンを食べる時って、まずは麺から食べますか? それともレンゲでスープを一口すすって不敵にほほえむ? いや、両手で丼を持ってスープをゴクゴクいく豪快さんもいるかもしれませんね。

う~む。「ラーメンは丼の中のコースメニュー」なんていわれることもありますが、食べるのに順番なんてあるんでしょうか。ラーメンを愛する草の根活動「ラ部」を主宰するイラストレーター、青木健さんにご登場いただきましょう。

「おもむろにチャーシューをスープに沈める人もいれば、スープを吸ってしんなりしたノリでライスを包んで食べる人、レンゲの上で味付け玉子を崩してから食べる人。私がラーメン店でウォッチしていても、実に様々なスタイルで食べる方がいます。そこで、声を大にして言いたいのは、ラーメンの楽しみ方は人それぞれということ。どんな時、どんなペースで、どんなふうに食べようと、他人に迷惑をかけなければいいのです」

ラーメンにテーブルマナーはなし! って、これを言い切ったら記事が終わってしまいますがな。

「ラ部としては美味しそうに見えるよう食べることを推進しています。それはすなわち美味しく食べることに直結するのです」
レンゲの上に麺やスープ、具などを箸で取り分けて食べる、通称“ミニラーメン”。できれば避けたい食べ方だが…。「ラ部では“濠”(ゴウ)として問題視していますが、猫舌の方やスープのハネで服を汚せない方には有効なので、一概には否定できません」(青木氏)
では、ラーメンを美味しく食べるコツなんてあったりするのでしょうか?

「我がラ部では、すすった麺を途中で噛み切り、残りの麺を丼に戻す食べ方を浪(ロウ)といって忌み嫌います。グルメ番組を見ていても、浪をするタレントを見ると、実に興醒めですよ。私が見る限りでは、本上まなみさん、マリエさんらは麺を滑らかに食べていましたね」

今まで考えたこともなかったけど、食べ物を噛みちぎって丼に戻すというのは美しい所作ではありませんね。唇の上を麺が滑っていく快感も失われちゃいますし。

「そう! 五感をフルに使えば、最良の状態のラーメンを最良のタイミングで食べることができます。試しに、丼にグッと近寄って食べてみてください。視界はラーメンでいっぱいになりますし、鼻腔にはかぐわしい醤油や魚介ダシの香りがふんだんに届けられることでしょう」

激しく同意! ボクも、青木さんが提唱しているように、視界をラーメンでいっぱいにし、食べてみたらおぉっ、立ちのぼる魅惑の香りにヤラレてしまいます。麺も途中で噛み切らず、チュルルルとすすっていけば、唇の上をしなやかな麺が官能的に滑り、歯を立てれば、モッチリとなまめかしい感触でこたえてくれます。この余韻、たまりません!

五感をフルに使って一気に丼の底まで食べきる! これこそ、究極にして至高のラーメン・マナーといえるのかもしれませんね。 歴史が浅いだけではなく、次々と新たなメニューが生まれ、
これまでになかった製法、ノウハウが試される。
ダイナミックに変革を続けるのが、ラーメンという料理の特徴です。

「まず、麺をすするべし!」
「スープを一口飲んでこそ、その店の力量がわかるものだ」

などという、通ぶった行いはあまりフィットしない気がします。

もちろん、ボクにあれこれ言われるまでもなく、
皆さんは好きなように食べていらっしゃるでしょうけど。

しかし、コメンテーターとしてご登場願った
アイバンさん、青木さんがともに強調していたのは
「目の前に出てきた一杯を四の五の言わずに食べよう!」でした。

「冷めたスープ」「のびたラーメン」

これは、いずれも「マズいラーメン」の2大要素ですからね。
トークに夢中になったり、雑誌を読んだり、ケータイメールをチェックするのは、
ラーメンを完食してからでも遅くはないハズ。

さて、ラーメン作法を探求したボクは、ラーメン道を極めるべく、
また旅に出ようと思います。次回リポートにご期待ください!

皆さんから、「こ、これは!」というオススメの一杯を
投稿いただけるとありがたいです。
もちろん、今回のリポートの感想などもいただけると、すごくうれしいっス!
(取り上げてほしいテーマもありましたら、ぜひ)

いや~、ラーメンってホンットにいいものですね~。
では、また!

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