アレをコレで代用してみたら・・・

第10回 浮き輪の代わりになるものは?

2009.07.29 WED

アレをコレで代用してみたら・・・


水難が発生した場合、無事救助される人の数は、半数にも満たない。また、時期では6~8月がきわめて多く、特に夏休みに入る7月と8月に集中。行為別水死者数では、魚とり・釣り、通行中、水泳中が多く、全体の約6割を占めている。警察庁「平成20年中における水難の概況」より

溺れかけている人を発見!取るべき行動は?



夏場は、もっとも水難事故が発生する季節。もし、遊びに行った先の海や川で、流されたり、落水したりして溺れかけている人を見つけたとき、どうすればいいんでしょう。着衣状態で落水してしまったときなどの対処方法を指導している日本赤十字社の救護・福祉部健康安全課の鈴木隆則さんにお話を伺いました。

「このような場合、自分も水に飛び込んで助けに行かなくてはと思いがちですが、泳いで助けに行くのは、最後の選択肢です。溺れかけている人は何かにつかまって、空気を吸いたい一心でもがいていますから、救助する際に安易に近づくと抱きつかれてしまいます。そうすると救助する側も溺れてしまうことになります。泳いで救助するためには泳力や救助に必要な知識・技術を持っていないと、共倒れになってしまいますので、冷静に判断することです」

では、まず、何を考えるべきなんでしょうか。

「最初に、ほかに協力者がいるかどうか、使える道具があるかどうかを考え、協力者がいれば手分けして救急隊へ通報し、また、救助方法の選択をしましょう。道具は、引き寄せて助けられるひもや棒、それが届かなければ、投げ渡せる浮かぶもの(浮力体)です」

着衣状態で水中に落ちてしまった人が無理に泳いだり暴れたりすると、無駄に体力を消耗してしまったり、衣服の間にある空気(浮力)を失ってしまったりするため危険。救助する側も、浮かぶものがあればそれを渡して呼吸を確保させることが重要なのだそうです。

「次に、自分が救助のために水に入る必要があるかどうかを考えましょう。道具を使うにしても、陸上から渡したり投げたりして届くか、腰まで水に入れば助けられるか、といったことです。道具を渡すためにどうすればいいか、周囲の状況に応じて判断しなければいけません。陸上から届く場合でも、岩などから滑り落ちた人を助けるときに、滑り落ちた同じ場所から救助を行うのは危険。違う安全な場所から助ける必要があります」

なるほど。浮かぶものを渡す場合、浮き輪がなければどんなものを使えばいいんでしょうか。

「空気が入っているもの、空気を入れて浮力を得られるもの、浮かぶ素材を使っているものがあります。たとえば、クーラーボックスや大きなペットボトル、ビニール袋、水筒などです。体を完全に浮かせる浮力はなくても、口と鼻を水から出して呼吸を確保できればいいわけです」

クーラーボックスやペットボトルはわかりますが、ビニール袋も使えるんですか?

「逆さにして口を開けて空気をためれば浮き袋になるんです。パッと見て使えそうにないかもしれませんが、水を少し入れれば溺れかけている人の近くに投げてあげることもできます。ただ、穴が開くと使えなくなるので、2リットルや4リットルのペットボトルがあれば、それを投げて併用させるか、持ち替えさせればいいでしょう。ペットボトルも中身がたくさん入っていると使えないと思ってしまいますが、中身を抜くのにそう時間はかかりません。完全に空にしてしまうと投げにくく、風に流されやすくなるので、少し中身を残して投げてあげればいいでしょう」

投げるときは、相手の頭に当てないように気をつけながら、水の流れや風も計算して手の届く範囲に投げてあげることが大事。海の場合、風が強ければ着水後も風で流されることがあり、相手の風上に投げてあげた方がいいそうです。さらに、身につけているものを浮きにできる場合もあるとのこと。

「綿パンのような生地の目が細かいズボンも使えます。チャックを閉めて裾を結べば、浮力体にすることができます。ただ、これは投げ渡された溺れかけている人が空気を入れる必要があり、そのやり方を知っていないと難しいです。また、スポーツシューズは底にウレタンのような発泡性の素材が使われていることが多く、浮力体になります。長靴は素材そのものに浮力はありませんが、逆さにすることでかなりの空気が入るため、浮力を得られます」

浮かぶものは、冷静に考えれば、いろいろあるんですね。誰かが溺れかけていたら、道具を使って引き寄せたり、浮かばせたりできないか、冷静に迅速に考え、もちろん、通報も行う。非常時にはパニックにならない心がけ、知識を頭に入れておくことが大事なようです。
今回試したもの。一見浮力を得られそうにないものも十分に役立てることができます。また、写真のサイズの水筒では小さすぎたために浮力を得られず、ビニールシートは大きさや形状の問題で空気をためて浮力を得ることができませんでした。

ペットボトルやクーラーボックスを浮き輪代わりにしてみたら…



海や川で落水してしまったりして溺れかけている人を見つけたとき、浮き輪の代わりに浮かばせておくものとして挙げられるペットボトルやクーラーボックスといった身の回りにあるもの。これらは実際にどの程度使えるのでしょうか。「実際の使い方などを疑似体験しておくことが大事」という日本赤十字社 救護・福祉部健康安全課の鈴木隆則さんの指導のもと、プールサイドからそれぞれの投げやすさをチェック。さらに着衣状態でプールに入り、それぞれの浮かびやすさも実体験してきました。

ちなみに私、水泳は苦手で、さほど泳げません。また、実験は無風の室内プールで行っています。風や波、流れのある自然の場合、作業がより難しくなります。では、さっそく試した結果を紹介していきましょう。

・ペットボトル
空っぽだと軽すぎるため、かなり投げにくいです。100~200mlほど水を入れれば、15~20mぐらいは飛ばすことができます。水の量は風などの状況や投げる距離によって調整するそうです。水中で2リットルのペットボトル2本を首の下に入れると、口と鼻を出して浮かぶことがかなり容易にできました。500mlのものは、浮力が格段に落ちますが、鈴木さんによると、救助の際にないよりはあった方がいいとのこと。

・ビニールシート
これは鈴木さんのアドバイスではなく、こちらが考え、救助に使えるかどうか試したものです。防水にも使われ、浮かびそうですが、まず、投げにくいです。さらに、浮かぶには空気をためる空間を作る必要があるものの、泳ぎながら幅の広いビニールシートで空気をためるのは至難の業。これは使えません。

・クーラーボックス
10mほどまで投げられます。また、中に空気がたくさん入っているうえに空気の入った断熱材(発泡材)が使われているので、浮力は今回試したもののなかで飛び抜けてありました。発泡材は救助用の浮き輪にも使われているそうです。ただ、クーラーボックスは重量があり硬いので、投げる際は十分安全に配慮する必要があります。

・ビニール袋(レジ袋)
空っぽだと飛びませんが、中に少し水を入れれば、10~15mぐらいは投げられます。空気を入れる作業は助けられる側が行う必要がありますが、逆さまにして空気をためるだけなので、楽にできました。また、浮力は想像以上。少し大きめの袋なら8リットルぐらいは空気が入るので、ペットボトルよりも浮かびやすいです。ただ、穴が開いてしまうと終わり。実際に救助で使う場合は、ビニール袋を渡したあとも、ほかのものを探す必要がありそうです。

・綿パン
空気がもれないようにチャックを閉め、裾を結ぶのに要する時間は1分程度、5mぐらいは投げることができます。ただ、空気を入れるのは溺れかけている人。開いている腰の方から水につけて空気を入れ、さらに水面をバチャバチャと叩き泡を発生させて膨らます必要があり、慣れていないと難しいです。かなりの浮力が得られるものの、使い方などを練習しておく必要があるようです。また、ズボンに穴が開いていたらそこから空気が漏れるため、使えません。

・水筒
重量があるため、15mほどは投げられます。ただ、今回試した水筒は500mlも入らないもの。小さすぎて、浮力を得ることは不可能でした。浮力を得るには、2リットルぐらい入る水筒が理想だそうです。水筒も硬いので、投げる際は十分安全に配慮する必要があります。
上段左からクーラーボックス、ビニール袋、綿パン、下段左は2リットルのペットボトル2本。下段中はビニール袋の持ち手を肩に通したもので、安定して浮かべます。下段右は綿パンに水面で手をバシャバシャさせて空気を入れていったもの。慣れていないと難しいですが、まるでライフジャケットのように膨らみます。
以上、クーラーボックスがあればベストですが、ペットボトルやビニール袋も十分浮かぶのを助けてくれます。水筒は2リットルほどの容量が必要で、綿パンはテクニックがないと難しいです。また、軽いものは中に水を入れた方が投げやすかったです。ペットボトルの場合、空っぽのものに水を入れるよりも中身が入っているものを抜く方が早くて楽でした。中身が満タンだからといって使えないと判断するのは早急なようです。

また、着衣状態でクロールをしてみたところ、腕が思ったよりあがらないこともあって、息継ぎがうまくできませんでした。波や流れのある海や川が相手ならなおさらです。無理に泳ぐのではなく浮かんで助けを待つことが重要。そのため、溺れかけている人を見つけたときも、とにかく、呼吸ができるように浮かばせることを念頭に入れておいた方がいいでしょう。 もしも溺れかけている人を見つけた場合、
自ら泳いで助けに行くのではなく、
引き寄せることができる道具や、
浮き輪のような浮力体を使った救助を心がけるべきだそう。
浮かぶものは口と鼻を水面から出して
呼吸を確保できるものならよく、
浮き輪がなくても、クーラーボックスやペットボトル、
ビニール袋などで代用できます。
特にクーラーボックスはよく浮きます。
また、破れる危険性はありますが、
ビニール袋はかなりの浮力を持っています。
救助する際は、冷静に周りに使えるものがないか、
見回してみるといいようです。

さて、今回の浮き輪代わりのような真面目なものでも、
くだけたものでも、何かの代用品になりそうなものなら、
何でもかまいません。
アイデアがあれば、ぜひ投稿してください!

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