水曜ムチャ振り実験室

第4回 鉛筆1本使い切るのにかかる時間は?

2009.10.28 WED

水曜ムチャ振り実験室


今回使った鉛筆の長さは17.6cm。果たしてこの長さを長いと感じることになるのか、それとも短いと感じることになるのか…。

1本50km書ける?鉛筆の規格を知る



子どものころ、筆箱にずらっと並んでいた鉛筆。長身の新品君の横には、ショートサイズのベテラン君がちょこんと座っていたものでした。少し遠慮がちなベテラン君ですが、その短さこそが僕らが知識を得た証し、成長の証しでもありましたね。

ところで、鉛筆が短くなるまでにはどれぐらいの時間が費やされているんでしょう。消費速度を考えながら使ったことってないかもしれません。じゃあ、いっそのこと、使い切るまでの時間を調べてみようじゃないか、と思い立ちました。

さっそく実験に移るために、まずは下調べです。すると、鉛筆1本で書ける距離はなんと約50kmらしいという恐ろしい情報が。これって本当なんでしょうか。トンボ鉛筆広報室の川崎さんに伺いました。

「その数字は、鉛筆から芯のみを抽出し、一定の気候条件のもとで機械を使って筆圧300gでロール紙に線を引いた場合のものです。芯が減る速度は筆圧だけでなく湿度などでも変わるんです。また、通常は極端に短くなると持てなくなるので、実際にみなさんが鉛筆を使って出てくる結果ではありません。50kmというのは机上の数字なんです」

そういうことだったんですか。とりあえず、実験時には筆圧をできるだけかけることを心に決めました。ところで、そもそも鉛筆1本の長さは何をもとに決められているんでしょうか。

「鉛筆の長さや芯の太さは、日本工業規格(JIS規格)で決められているんです。長さは172mm以上、芯の太さが9H~Hは1.8mm以上、F~6Bは 2mm以上とされていて、それに準拠して生産しています。市販されているものは、180mmぐらいが多いのではないでしょうか」

なるほど。メーカーの自由ってわけではなく、どれも規格で決められた長さなんですね。ちなみに、川崎さんからは、チャレンジにあたってこのようなアドバイスも。

「濃くて軟らかい芯の方が減るのは早いので、Hよりも2Bや3Bを使うといいですよ。紙もコピー用紙のようなツルツルしたものだと大変です。筆記用のレポート用紙のようなざらつきがあるものがいいでしょう」

芯が減る速度は、芯の種類、筆圧、気候、紙などいろんな条件で変わるんですね。そこで、僕が選んだのは2B、長さ17.6cmの鉛筆と、表面がざらざらしているノート。早く終わらせようとする男らしくない選択といえましょう。
意気込んでチャレンジしたものの、学生時代を思い出したのか、とってはいけない姿勢に。眠気は、想定外の強敵かもしれません。って、自分だけですね。
さて。お待たせしました。いよいよスタートです。その前に今回のルールを説明します。芯の消費法は、ただひたすらノートを塗りつぶしていくというもの。鉛筆削りを使うのは、芯の出ている部分が減って周りの木が引っかかることでうまく線を書けなくなったとき。削ることでロスする芯の量を減らすために芯先は鋭くしないことにしました。また、実験は文字が書けなくなった(=使い切った)と判断するまで続けます。ちなみに、判断するのは自分です。

というわけで、やってやりますよ! シュシュシュシュシュッ。鉛筆が快調にノートの上を滑っていきます。が、しかしあまりの単純作業のために1回目のチャレンジは開始後30分足らずで寝てしまうという最悪の結末に。すみません。しかし、得たものもありました。知識です。鉛筆を削ったときに長さを測ったんですが、鉛筆って削ることで短くなるわけじゃないんですねって、知らなかったのは僕だけかもしれませんが。

とにかく、後日、気を取り直して2度目のスタートです。居眠り防止グッズもそろえて今度こそは万全。ただし、道のりは平坦ではありませんでした。鉛筆削りを使うまでに消費する芯の長さはだいたい2、3mmなんですが、これがくせ者。横から見て芯が出ている部分がほぼなくなるまではすんなりいくものの、ここからけっこう書き続けられるんです。削ってすぐはノートが濃い線で塗りつぶされ、芯がほぼ見えなくなってからは薄い線が加わっていく。そんな作業が続きます。

そして、開始から3時間。減ったのは7.6cmのみ。見た目は短くなっていても、まだまだ半分以上が残っています。いったいどれだけの時間書き続ければ、鉛筆の限界にたどり着けるのでしょう。まさか、またこちらの限界が先に来てしまうのでしょうか。
どんどん短くなっていく鉛筆。…いや、写真だけでは「どんどん」に見えますが、実際は「じわじわと」の方が適切です。17.6cmという距離は思ってた以上に長かった!

何時間書きたくれば鉛筆は使い切れるのか?



1本の鉛筆はどれだけの時間で使い切れるのかを調査するために、右手と左手で交互にひたすらノートを黒く染めること3時間。削るたびに顔を覗かせる約3mm の芯を使い切ってはまた削るという単純作業を繰り返したものの、17.6cmあった鉛筆は、まだまだ10cmが残っています。鉛筆を握る手にはじわっとペン汁がじわり。ってただの汗ですが。

いずれにせよ、こうなると、気分は完全に「より早く終わらせる」ことにシフトしています。そして、より早く使い切るためには、効率のよい書き方が必要です。小さい円をひたすら書いたり、大きい円をぐるぐると書いたり、さらにはシュッシュッと長い「一」を書いてみたり。いろいろ試しましたが、もっとも効果的だったのは7cmほどの斜め線を高速で上下に往復で書き続けること。手首のスナップも効かせることで、強い筆圧をかけたまま書き続けられるのです。

ちなみに、小さな円は書き続けているうちに鉛筆が手からずれて持ち直す頻度が高く、はかどりません。また、試しに文字をびっしりと書いてみたのですが、芯の減り方はとってもスロー。すぐにやめました。まあ、これが鉛筆本来の使用法なのですが。

また、短くなって通常の持ち方では持ちにくくなってからは、便利な補助軸も導入しました。ここで気づいたのが、手のひらに収まるほど短くなった鉛筆は、補助軸がない方が強い筆圧をかけられ、芯の消費が早いということ。もちろん、持ち方はめちゃくちゃなうえに、文字の書きやすさは補助軸があった方が格段に上ですので、お勧めはしませんが。

そして、スタートから6時間で、ついに残り2.2cmにまでたどり着きました。これまでの時間経過は以下の通り。

スタート 17.6cm
1時間後 15.7cm ここから左手も導入
2時間後 12.9cm 短くなったと少し実感
3時間後 10.0cm 何を思ったか絵を描いてしまう
4時間後 7.8cm  これぐらいの長さは筆圧がかけやすい
5時間後 5.4cm  チョークで書いているような感覚に
6時間後 2.2cm  鉛筆というより消しゴムのような持ち方に
真ん中手前の小さな物体が、最終的に残されたもの。鉛筆というよりは、「、」と書いた方が分かりやすいかもしれません。
鉛筆削りを使用すること57回、長さが2.2cmになったところで短すぎて鉛筆削りで削れなくなったため、カッターを持ち出して芯先を削り、また書いていきます。そして、残り1.4cmで、カッターでも削ることは不可能に。ここで芯のみを取り出して、指先でつまんでまた書いていきます。もう残りはわずか。ダーッとやればすぐに終わるだろう。しかし、この考えが甘かった。

短い芯だけだと持ちづらくてとっても書きにくいうえに、筆圧もかけられないため、薄い線しか書けないのです。鉛筆が芯だけではできていない理由がなんとなくわかった気がします。

それでも芯だけになってから1時間かけてなんとか3mmに。爪の先で挟んだり横にしたりしてなんとか書いていたのですが、ついに限界がきました。挟めないし、横にして指で押さえつけながら転がしても、色がとてもうす~くしかつかない。というわけで、ここで使い切ったと判断、終了です。

スタートから要した7時間37分。うち27分は休憩していたので、実質、鉛筆は7時間10分で使い切る、という結果に。ただ、これはあくまでも文字を書かずにただノートを塗りつぶしていったもの。普通に文字を書いていたら、どれだけかかったかと思うとぞっとします。裏を返せば、鉛筆は1本でもとっても長持ちするものだということ。ふだんはパソコンのキーパンチばかりの日々を送っている僕ですが、鉛筆の底力を体感させられました。

ちなみに、今回の実験で使ったB5のノートは68頁分。一面を鉛筆で真っ黒にする作業は、クレヨンで遊んでいた幼稚園のころに戻ったようで懐かしくもありました。ただ、いい大人が無表情で一心不乱にノートを黒く塗りつぶし続ける行為に向けられる周りの視線は、非常に冷たいものであったことを記しておきます。自分としては、ノートと同様に黒くなった両手も含め、勲章のように感じていたんですが。 鉛筆1本を使い切るために、
約7時間もかかりました。
無意味な線を書きなぐってもこんなに時間がかかるとは。
普通の使用法で短くなった鉛筆には、
けっこう長い歴史が刻まれているのですね。
ところで、今回、鉛筆と一緒に消しゴムの
消費時間も確かめたかったのですが、
時間の都合で断念しました。
トンボ鉛筆・広報室の川崎さんによると、
鉛筆と違って消しゴム(いわゆるプラスチック字消し)
にはJISによるサイズの規定がなく、
時代とともに少しずつ厚みが薄くなってきているそうです。
一般的なサイズの消しゴムは、
鉛筆よりも使い切るのに時間がかかるんでしょうか。
気になりますが、気になったままにしておきます。

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