ビジネスパーソンインタビュー
面白いことが書けない…を解決! 前田裕二&樺沢紫苑が教える「アウトプット上手になる5カ条」

『メモの魔力』『アウトプット大全』の著者対談

面白いことが書けない…を解決! 前田裕二&樺沢紫苑が教える「アウトプット上手になる5カ条」

新R25編集部

2019/12/26

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昨今、R25世代が言われがちなアドバイスのひとつが、「アウトプットが大事」「アウトプットしろ!」ということ。

SNSで発信したり、ブログを書いたり、学んだことをメモにまとめたり、日記をつけたり、メールで「日報」を送ったり…いろいろな方法がありますが、一般のビジネスパーソンにとっては、少しハードルが高い気もします。

続かないし、そもそも何を書けばいいかわからないし…

ということで今回は、“2019年いちばん売れたビジネス書”『メモの魔力』の著者であり、SHOWROOM代表取締役社長の前田裕二さん、ベストセラー『アウトプット大全』の著者、樺沢紫苑先生という豪華なお二人に、「アウトプットのコツ」についてきいてみました!

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉

【前田裕二(まえだ・ゆうじ)】(写真左)1987年生まれ。東京都出身。2010年UBS証券に入社。2013年にDeNAに移り、ライブストリーミングサービス「SHOWROOM」を立ち上げる。2015年にはSHOWROOM株式会社を設立。著書に『メモの魔力』(幻冬舎)など/【樺沢紫苑(かばさわ・しおん)】(写真右)1965年生まれ。北海道出身。精神科医。札幌医科大学医学部卒業後、北海道内の8病院に勤務。その後、樺沢心理学研究所を設立。著書に『学びを結果に変える アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)など

天野

おふたりの著書『メモの魔力』も『アウトプット大全』、どちらも大ヒット中ですね。

とくに前田さんはこの前テレビ番組(『アナザースカイ』)にも出演されて、すっかり時の人という感じで。“前田流メモ術”も、かなり有名になったんじゃないでしょうか?

前田さん

本当にこの規模のヒットは完全に自分の力を超えていると感じていて、めちゃくちゃありがたいことです。

でも、もうこの1年は“メモの奴隷”って感じでしたね(笑)。会食中でも、メモをちょっとでも取らないとガッカリされてしまうっていう…

あっ、メモしてくれないんですね」「今のいい言葉じゃなかったですか?」みたいに言われちゃう(笑)。

アウトプットって続けるの難しくない?

天野

まず、「アウトプットを継続するコツ」からききたいんですが…前田さんは一見かなりめんどくさそうなメモ術を継続してますが、その秘訣は何ですか?

前田さん

そうですね。秘訣は3つ挙げられるんですが…

「なんでも『3つ挙げる』ことで法則っぽく話す」のは、前田さんの常套手段らしいです

前田さん

1つめは、「ルールを具体的な言葉にする」といいと思います。

たとえば…『メモの魔力』って、「いろんな物事のなかから“学び”を抽象化して転用すべき」っていう内容なので、最初はそういうタイトル案もあったんですよ。

「前田裕二流メモ術ってめんどくさくない?」とツッコんだら、そのウラにある壮大な想いを知った

4色ペンを使い分ける、アナログとデジタルの併用…

ノートを分割し、“最近流行っているものはここがすぐれている”というような「抽象化」した“学び”を書き、さらにほかの企画や仕事に「転用」するアイデアを書く…というのが前田さんのメモ術の基本です。くわしくはこちらの記事を読んでみてください!

天野

どんなタイトルですか?

前田さん

抽象化の魔力』とか…

それは売れないわ

前田さん

そう言われても「よっしゃ! 抽象化するぞ!」って絶対ならないじゃないですか

天野

ならないです。

前田さん

僕、昔ファミレスでアルバイトしてたんです。

店長さんが、アルバイトに「グラスを机に置くときは、静かに置きましょう」って指導するんですけど、そのときに「静かに置きましょう」って言わないんですよ。

コップとグラスの間に軽く小指をはさんで置きましょう」って言うんです。

天野

あ、具体的に言ってる…?

前田さん

そう、それ聞いて感動したんです。「“具体的な言葉の力”があれば、人を動かすことができるんだ!」って。

だから、「アウトプットを継続する」とかじゃなくて、「昼休みは必ずツイッターに書き込む」とか、具体レベルで明確にしたほうがいいですね。

天野

なるほど!

前田さん

2つめは、アウトプットを継続したらこうなれるんだ!という、「ロールモデルを見つける」こと。

今の若い人は、いたずらに遠すぎない、「自分に寄り添ってくれるロールモデル」を必要としている気がします。

あいみょん髭男(=Official髭男dism)や、まふまふ(=ニコニコ動画などで曲を発表する、“引きこもり”出身のシンガーソングライター)が人気なのも、「夢」や「頑張れ」とかいった言葉を安易に使わずに、僕らにそっと寄り添ってくれるような存在だからだと思うんです。

天野

ふむふむ。

前田さん

メモも一緒です。もともとの出自が洗練されていない前田(幼少期に両親を亡くして貧困時代を経ている)が、メモのパワーで小さいながらも一定の影響力を持つようになった。

つまり、“メモを続ければそこにいけるかもしれない”と皆が思える、ある種の具体的なロールモデルとして前田裕二が認知された、ということ。

この事実が、学生や20代の皆さんが継続的にメモをするモチベーションにも一定つながったのかなと思います。メモってしかも、真似しやすいですからね。

「優秀な人よりだらしな…親近感が持てる人のほうがロールモデルとして人気ですよね。起業家でいうところの家入一真さんっていうか」

前田さん

3つめの秘訣は、同じようにアウトプットする人が集まる「コミュニティを見つける」こと。

『メモの魔力』は、モレスキンとコラボしてオリジナルのノートを発売したんです。ツイッターで言われたんですが、そのノートを持ってる人同士がたまたまカフェで出会って「あれ、あなたももしかしてメモ魔…?」というふうに友達になったんですって。

天野

アウトプットをきっかけにそんな出会いが生まれてるんですか。

前田さん

帰属意識が持てるような温かいコミュニティがあれば、人は多少めんどくさいことでも自然と継続できるんですよね。

たとえば会社の同僚と「読書報告」をするようなグループをつくってみるとか、アウトプットのためのコミュニティがあるといいと思います。

「たまごっちが欲しかったり、めちゃイケ観てたりしたのも、学校でコミュニティに入りたかったからですよね!」例が微妙に古い前田さん

自分のアウトプットが稚拙な気がしてしまうんですけど

天野

ちょっとだけ、アウトプットを継続できるような気がしてきました。

ただ、アウトプットの“内容”についてもききたいです。僕、ブログを書こうとしても「大したこと書いてないなコレ」って思って萎えてしまうんです…

お次は樺沢先生、教えてください

樺沢先生

私、映画が大好きで、「映画評論家」を名乗って雑誌に映画評論を書いたりしてるんですけど…

映画評論って、ヘタすると“全然大したこと書いてない”ものになりやすいんですよ。

ただ『ジョーカー』とか観て感想を書いたって、「面白かったです」「かわいそうでした」みたいなアウトプットになってしまう

天野

僕も、映画の感想とか薄っぺらいことしか言えないです…。樺沢先生はどうやって評論を書いてるんですか?

樺沢先生

アウトプットの価値を高めるには、自分だけの武器があるといいんです。

たとえば私なら、「精神科医」という肩書き

精神科医が、医学的な観点から『ジョーカー』の登場人物やストーリーの考察を行う。面白そうじゃないですか?

天野

たしかに! ただ、「自分には何も肩書きなんてない」って思っちゃう人も多そうですが…

樺沢先生

若い人はよく「自分にはまだ何もない」って言うんですけど、「40人に1人の専門性」があればいいんですよ。

40人に1人…?

樺沢先生

学校の1クラスって40人ぐらいでしょ。通ってた中学とか高校をイメージして、「この話題なら、自分がクラスで一番かも」っていうジャンルを見つけてみる。

そのレベルの“希少性”があれば、アウトプットに価値を付与することができるでしょう。

天野

クラスで一番好きなことか~、ある気がします。

樺沢先生

「鉄道にくわしい」とか「アイドルにくわしい」とかでいいんですよ。

たとえば、いろんな映画をアイドルという観点で観れば…面白い批評が書けると思いませんか? 「この映画には、じつは今人気絶頂のアイドルの貴重な15歳のころの姿が収められていて…」みたいな。

前田さん、何か書くのに夢中で樺沢先生の話聞いてないっぽい

前田裕二がその場で考案! アウトプットに独自性を持たせるふたつの方法

天野

前田さん、何書いてるんですか?

前田さん

あ、今の先生の話をメモしながらいろいろと抽象化していて、アウトプットの独自性を高めるためには2パターンのアプローチがあるなって思って、図を描いてみたんです。

天野

今!?

見せてください!

前田さん

アウトプットを独自のものにするには、①気付きの独自性②エピソードの独自性のどちらかを尖らせる必要があると思うんですね。

こちらがその図。えーっと…???

前田さん

①気付きの独自性というのは、「具体」から、何かを「抽象化」するときに独自性を持てるかどうかという話です。

映画『ジョーカー』という「具体」から「抽象化」して、どんな意見や学びをアウトプットするか。

前田さん

今なら、そうだな…「桜を見る会」っていう話題があるじゃないですか。

天野

安倍首相の関係者がたくさん招待されてて、そこに税金が投入されてたんじゃないか、という疑惑ですね。

前田さん

それに対して、“世の中の人はだいたいこう言う”っていう大きな流れがありますよね。

「桜を見る会」だったら、多くの人がSNSや『NewsPicks』に「税金の無駄遣いはよくない」って書く。

多くの人は、ニュースという具体からこの抽象化をする

前田さん

そこで独自性を出したいからといって、「税金の無駄遣い最高!」みたいに逆のことを言えばいいわけでもない。

多くの人がやる「抽象化」から、少しズラして「そもそも税金って…」みたいな抽象化をする。これが「①気付きの独自性」です。

ちょっとズラした抽象化をすることで、独自性を出せる

天野

なるほどなるほど…

ぜいたくな授業だなこれ…

前田さん

②エピソードの独自性」でいく方法もあります。

これは、気付き自体は「税金の無駄遣いはよくない」っていう、ありふれた「抽象化」でもいい。

そこに、「自分ならではのエピソード」とか、「熱量がこもった自分の想い」を具体的な表現としてくっつけるんです。

抽象化は普通だが、そこからの具体的表現で独自性を出す

前田さん

①ができる人は、前提をひっくり返して「誰も思いつかないアイデア」をアウトプットしているように見えるので、革命家っぽく扱われるんですよ。

堀江(貴文)さんの発言とか、このパターンが多いですよね。

でも、難易度が高い。なので一般的には、②のほうがやりやすいかもしれないですね。

天野

納得感。雑誌とかで、「最近○○が話題だ。○○といえば、私には忘れられない思い出がある…」みたいなコラムがよくありますけど、それは「②エピソードの独自性」に特化したアウトプットだったんですね

アウトプットは“借り物競走”でいい

樺沢先生

ただ、独自性も必要ではあるんだけど、まずは借り物の言葉でもいいからアウトプットすることが大事だと思いますね。

天野

「初心者は、まずは誰かが言ってたようなことからアウトプットしなさい」的な話でしょうか…?

前田さん

いや、初心者じゃなくても、です。

世間で“ビジョナリー”と言われる人も、みんな「借り物の言葉」で喋ってるんです。「借り物競走」しまくっていいんですよ

天野

そうなんですか!?

前田さん

僕、一時期スナックの話をすごいしてたんです。

あるとき、堀江さんと飲みながら「スナック的なビジネスモデルは、今の時代にマッチしやすい」ってお話ししたんですよ。「ママが酔いつぶれたときにはお客さんが接客する」「そうやって、カウンターのなかにお客さんを入れる構造にすると、コミュニティが永続しやすい」とか。

で、次の日堀江さんがイベントに出てるのを見たら、「スナックのビジネスモデルってすごくてさ…」って話をしてるんですよ

天野

堀江さん…!!(笑)

前田さん

でも、イヤだったとかじゃないんです。「これが能力高い人の大きな特徴なんだ!」って強く思ったんですよ。多分本人は、“借り物”している感覚すらない

「自分のアウトプットが借り物の言葉なんじゃないか…」なんて、考える必要ないです。罪悪感ゼロで借りまくったほうがいい。

何ならむしろ、「徹底的に借りまくれるヤツ」が一番強いんですよ。

これは胸に刻みたい名言

樺沢先生

“抽象化された概念”には著作権がありませんしね。

「本当にゼロから新しく生まれた概念」なんて、もう存在しないと思いますから。アウトプットが借り物というのは、ある意味必然なんですよ。

前田さん

まさに。具体には著作権が紐づくのでそれを真似するとパクリになってしまうけど、抽象化した概念を借りてくることは、むしろヒットの大法則

ダメだと言ったら、モーニング娘。もAKB48も“パクリ”になっちゃいますからね(笑)

80年代にできた「おニャン子クラブ」を抽象化・転用してモーニング娘。ができ、今度は秋元先生がまたそれを転用してAKBができ…一流の人たちはそうやってアウトプットしていくんですよね。

樺沢先生

そう、それを繰り返していくうちに、いつのまにか「オリジナル」になることもありますから。

めちゃくちゃタメになりました

年末年始に「新年から、アウトプットしよう!」と思う人は多いもの。

でも、だいたいは正月休みが明けるころには続けられなくなっている…。

・ルールを具体的な言葉にする

・アウトプットを継続したらこうなれる!というロールモデルを見つける

・同じようにアウトプットする人が集まるコミュニティを見つける

・「40人に1人の専門性」を意識する

・①気付きの独自性、②エピソードの独自性の観点を持つ

アウトプットの達人おふたりが教えてくれたこれらの秘訣を取り入れたら、2020年こそはイケる気がする!?

SNSでの記事の感想アウトプットも、お待ちしてますね!^^

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=藤木裕之〉

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