「満遍なく」から「一点集中へ」。世界初のクラフトコーラ・伊良コーラ(イヨシコーラ)に聞いた、“はたらくWell-being”になるための得意の見つけ方
連載「“はたらくWell-being”を考えよう」
新R25編集部
リモートワークの浸透などと相まって、「はたらき方改革」が世間の潮流となって久しい昨今。
現場ではたらくビジネスパーソンの中には、「本気で仕事に打ち込もうと思ったらはたらき方改革なんて無理」 「自分らしいはたらき方なんて難しい」と感じている人もいるはず。
そこで、パーソルグループとのコラボでお送りする本連載「“はたらくWell-being”を考えよう」ではモヤモヤを感じているあなたへ「令和の新しいはたらき方」を提案していきます。
作り手がこだわって作り上げた商品をさす「クラフト〇〇」を見かけることが多くなりました。クラフトビールやクラフトジン、さらにはクラフトキムチ、クラフト餃子もトレンドです。
そんなクラフト界隈の中でも、今回紹介するのは世界初のクラフトコーラ「イヨシコーラ」の作り手であるコーラ小林さんです。
大手企業で会社員として勤務しており、いちコーラ好きだったコーラ小林さん。
あるとき見つけたコーラのレシピからインスピレーションを受けてコーラを自作し始め、2018年7月には自費で製作したフードトラック「カワセミ号」で青山ファーマーズマーケットへ出店しました。
以来平日は会社員、休日はコーラ販売をしていましたが、2019年1月に独立。現在は、下落合駅に「伊良コーラ(イヨシコーラ)総本店下落合」、クラウドファンディングで100人以上から支援を受けてオープンした「伊良コーラ(イヨシコーラ)渋谷神宮前」の2店舗を構えています。
今、第2章が始まろうとしている「イヨシコーラ」の未来、そしてコーラ小林さん流の“はたらくWell-being”を聞きました。
1989年・東京生まれ。和漢方職人「伊東良太郎」を祖父に持つ。北海道大学農学部、東京大学大学院生命科学研究科卒業後、大手企業に勤務しながら、大好きなコーラ作りの探求を進め、2018年7月にクラフトコーラ専門メーカー・専門店「イヨシコーラ」を立ち上げる。
本日7/30から関東、関西、中部、北陸のローソンと、
— コーラ小林@イヨシコーラ創業者 IYOSHI COLA (@cola_kobayashi) July 30, 2024
都内中心のファミマ!!で伊良コーラ(イヨシコーラ)が販売されます。
2023年の7月、12月のローソン関東限定での販売を経て、… pic.twitter.com/uXiHbgODug
「イヨシコーラに人生を捧げる」、日本産業をも担う覚悟が僕らにはある
ーー(編集部)2018年7月29日にフードトラック「カワセミ号」で移動販売からスタートしたイヨシコーラは、今年の7月29日で6年目を迎えられましたよね。
コーラ小林さん
はい。創業してからの6年はプロダクトを作る、イヨシコーラとしてできることを増やすことに注力してきました。
フードトラックでのパウチ販売からスタートし、原液シロップをビン詰めした「魔法のシロップ」の販売、伊良コーラ(イヨシコーラ)総本店下落合のオープン、ボトルの販売、伊良コーラ(イヨシコーラ)渋谷神宮前のオープン、そして缶の販売。
今年の7月末には、関東・関西・東海・北陸エリアの19都道府県のローソン店舗での数量限定の一斉販売も行いました。
多くのお客様に楽しんでもらうため、現在も販路が拡大中
コーラ小林さん
そしてこれからは、できたプロダクトを携えて広めていくフェーズに入ろうとしています。
僕はイヨシコーラを作ったときから、「コカ・ペプシ・イヨシ」と世界的な2大コーラメーカーと並ぶ未来を描いているので、イヨシコーラに人生を捧げる覚悟で臨んでいます!
ーー(編集部)どうしてそこまで強い気持ちになれるのでしょうか?
コーラ小林さん
それは、クラフトコーラがめちゃめちゃポテンシャルを秘めている市場だからです。
今でこそ「クラフトコーラ」という言葉が知られるようになりましたが、そもそも「クラフトコーラ」と名付けたのも僕たちなんですよ。
ーー(編集部)ということは、「クラフトコーラ」市場を作り出したのがコーラ小林さんであり、イヨシコーラということですか⁉︎
コーラ小林さん
そうなんです。青山ファーマーズマーケットに出店するとき、何か目を惹くワードがほしいと思い、丹精込めた手作りのコーラだから「クラフトコーラ」としました。
取材場所のオフィスには、さまざまなスパイスや香料が並ぶ
コーラ小林さん
「クラフトコーラ」は日本で生み出した市場であり、かつ、これからの日本産業を率いていけるポテンシャルがあると思っています。
最近は、海外進出も視野に入っていますね。
ーー(編集部)それほどまでにクラフトコーラに情熱をかけているとは… そう思うと、「クラフトコーラを世界に広めるぞ!」という強い気持ちで起業されたんですか?
コーラ小林さん
いや、始まりはそうではないです。
起業自体は奮起した瞬間があったわけではなく、「これなら野垂死なないな」と思ったので決断しました。
ーー(編集部)そうなんですか?
コーラ小林さん
だって、コーラ作りもフードトラックの出店も、最初は僕の趣味だったんです。
自分が好きだからしていただけで(笑)。
ーー(編集部)となると「野垂れ死なない」と思えたのは、何があったのでしょうか?
コーラ小林さん
「シロップの卸をしたい」とのご依頼をいただいたからですね。
それまでは「フードトラックで出店したら大体このぐらいの売上」「とはいえ冬になれば売上は下がる」と計算して、それでは生活できないと思っていたから、あくまで趣味としていました。
だけど、たまたま映画館を運営されている方がイヨシコーラを知ってくださり、「業務用のシロップがあるなら仕入れたい」と言ってくださったんです。
ーー(編集部)すごいご縁ですね!
コーラ小林さん
「卸をするとしたら月にこれぐらいの売上が見込めるから、それなら会社を辞めても生活できる」と思えたのは大きかったですね。
ーー(編集部)なるほど。「起業したい!」というよりは、金銭的なことや状況が整っていったことで起業に至った。
コーラ小林さん
そうですね。当時の僕の周りには起業した人がいなかったし、資金調達や融資の知識もなかったから、そういう考えも湧かなかった。
目の前の状況を見て、自然な流れで起業に至りました。
心が麻痺する前に。ワクワクしたら、まずはやってみる
ーー(編集部)自然な流れでの起業とはいえ、心中したいと思えるほどのものに出会えるのって羨ましいです。
コーラ小林さんにとってのイヨシコーラのような、夢中になれるものってどうしたら見つかるんでしょう?
コーラ小林さん
行動することでしかないかなと思います。
それから、ワクワクすることを見つけられる状態にしておくことも大切ですよね。
ワクワクすることを見つけられる状態?
コーラ小林さん
子どもの頃って、「やりたい」「面白そう」と思ったことは心の赴くままになんでもやってたじゃないですか。
なのに大人になると、目の前のことやちょっと先のことで手一杯になって、ほんとうはやってみたいことやワクワクすることを無視しちゃうことがある。
ーー(編集部)思い当たる節しかありません。
コーラ小林さん
その状況に慣れて心が麻痺してしまうと、ほんとうは何をやりたかったのかわからなくなることって、あると思うんですよ。
だから、心が動いたらどんなに小さいことでもいいからやる癖をつけておくと、夢中になれるものを見つけられるんじゃないかな。
ーー(編集部)コーラ小林さんも、かつて心が麻痺してしまったことがあったのでしょうか?
コーラ小林さん
そうですね。僕は小さい頃、釣りがすごく好きでした。でも、中高生になると部活動や勉強が忙しくてほぼやらなくなって。
だけど大学生のときに、「そういえば昔釣りをよくやってたな」と思い、改めてやり始めたらすごく楽しかった。
いきなり「何かやりたいことを!」と気負わずに、まずはかつて自分が好きだったものをもう一度やってみるのもいいんじゃないかな。
僕のコーラ作りも、レシピを見つけて「作ってみたい」と思った好奇心から、今に至りますからね。
ーー(編集部)大人になると見る目も変わるし、感じ方もきっと変わりますよね。
ひとりで描き始めた物語が、世界を見据えるほど大きくなるって本当にすごいです。
コーラ小林さん
ありがとうございます(笑)。
でも、僕一人ではここまでこれなかったと思います。
いろんな人の力を借りて、ある意味では巻き込みながら、6年間イヨシコーラを育ててきました。
これからはイヨシコーラをもっともっと広げていくために、製造・流通・販売のすべてを担うのではなく、より得意な人や企業と連携しながら進めていくつもりです。
ーー(編集部)もともとはコーラ小林さんがすべてを担われていたんですよね。
だとしたら、自分の手から離すことに躊躇してしまいませんか?
コーラ小林さん
躊躇する気持ちはゼロではなかったけど、最近は特に「任せる」ことを意識しています。
もちろん僕がわかることは参考として伝えますし、過去の経験から感じた課題なんかも情報共有するようにしています。
コーラ小林さん
「これにして」「そっちがいい」と指示するのは簡単だけど、それは結果として相手の意思決定を奪うことになります。
となると、僕に決定権が集中してしまう。
その環境は組織として健全ではないし、自分のリソースも有限なのに縛られてしまいますよね。
僕にしかできないこと、僕がすることで価値が生じることに集中できるよう、パワーバランスを見直した結果です。
ーー(編集部)パワーバランスの見直しも、この6年の中で整理されたんですか?
コーラ小林さん
そうですね。
かつては自分がすべてを決めていたこともあって、僕のこだわりを貫こうとして、至るところでコミュニケーションに摩擦が起こってしまった経験があります。
だけど、もっとイヨシコーラを拡大させていくためには僕一人では限界があると気がつき、拡大のために任せることや外部企業との連携を強化していくつもりです。
得意なことは自分じゃ認識できない。だからこそ、誰にでも“得意”はある
ーー(編集部)そうなると、イヨシコーラはこれから何に注力していくんですか?
コーラ小林さん
クリエイティブとクラフトの2つです。
クリエイティブは、デザインだけではなく、フードトラックでのパウチ販売や店舗でシロップとサイダーを入れて出来たての状態で出すことなど、リアルな場での仕掛けも含めて、イヨシコーラを楽しんでもらう仕掛けを指します。
クラフトは、どの提供方法だとしても「これがイヨシコーラだ」と思ってもらえるシロップを作り、もっと美味しさを追求していくことに徹底的にこだわることです。
ーー(編集部)明確に2つあるんですね! どうやって、そのことに気づいていったのでしょうか?
コーラ小林さん
実は缶の開発をしたあと、今の商品ラインナップで営業に集中しよう! となったのですが、その中で多くの課題感が見えてきたんです。
その一方で、僕らの強みも見えるようになりました。
ーー(編集部)どういうことでしょうか?
コーラ小林さん
単に営業活動を推進することは、僕を含めてイヨシコーラにとって、すごく得意なことかと言えばそうではありません。
僕らは作り手なので得意なことに特化して、営業や販路を拡大することは得意な人に任せた方がいいんじゃないかと。
と言いつつも、僕自身はクリエイティブもクラフトも得意だとは思えてないんですけどね。
ーー(編集部)…え? 得意だけど、得意だと思っていない??
コーラ小林さん
だって、僕からしたら何の苦痛もなく、当たり前にできちゃうことなんですよ。
いつも通りしているだけの感覚なので「得意か?」と聞かれると、悩んでしまうというか。
ーー(編集部)とすると、どうして「得意だ」と思われたんですか?
コーラ小林さん
それは、周りからの評価が高いからです。
たとえば、自分が絵を描いてて、描き終わった絵を見て「私は絵が得意!」と思うことってあんまりないですよね。
ほかにも、自分がパパっと料理したものを食べたときに「料理が得意だ!」と思うこともない。
ーー(編集部)確かに、「よく描けた」「美味しくできた」とは思うかもしれないけど、「得意!」とは思わないかも。
コーラ小林さん
でも、その絵を人に見せたときに「すごく上手だね!」とか、誰かに食べてもらったときに「とても美味しい!」と言われたら、「もしかしたら自分はこれが得意なのかもしれない」と思いませんか?
イヨシコーラのメンバーの中にも、遠足のバスの中でたまたま歌ったら、周りから「めっちゃ歌うまいじゃん!」と言われて、歌の大会に出てしまうほど得意だと気がついた人がいて。
「自分ではそうは思わないけど、周りから見ると“得意”になることってたくさんありますよね」
コーラ小林さん
“得意”は、周りとの比較でわかることだから自分ではなかなか認識できない。
加えて、仕事で使うようなスキルの得意は、もっと見えづらいと思うんです。
ーー(編集部)というと?
コーラ小林さん
絵や料理のように人に披露してわかりやすい評価を得られる機会も少ないし、数字にも表れづらいじゃないですか。
僕の得意なクリエイティブに関しても、素敵なロゴマークを作ったからお客様が2倍に増えた! とはなりづらい。
ーー(編集部)そういえば、私もよく「責任感がある」と言ってもらえるんですけど、自分では「そうかな? これって当たり前じゃない?」と思ってます。
コーラ小林さん
ということは、自分では当たり前すぎて認識していないけど、周りと比べたときに“人よりできること”はきっと誰にでもあるものだとも思ってて。
ーー(編集部)なるほど…! 今まで「自分には得意なことがない」と思ってたんですけど、「責任をもって仕事をする」は、得意なことだったかもしれません!
コーラ小林さん
得意なことは、意外と自分では気がつかない。
周りから見てもらって評価してもらえば、それを得意だと認識していいと思います。
ーー(編集部)見方を変えれば、自分も周りの得意なことに気がつける存在であるってことですよね。
コーラ小林さん
そうですね。自分は得意なことに集中して、自分が苦手なことはそれを得意としている人に任せていけば、もっと“はたらくWell-being”を感じられるようになるんじゃないかな。
クラフトとクリエティブで、世界をちょっとだけハッピーにするイヨシコーラ
ーー(編集部)「コカ・ペプシ・イヨシ」の未来へ、現時点ではどのくらい達成している実感がありますか?
コーラ小林さん
達成度でいうとまだまだ。ですが、6年歩んできたことで僕らイヨシコーラの強みであり、コアがクリエティブとクラフトにあると気づけたのは大きな前進です。
上を見れば果てしないけど、僕らは僕らの得意なことを突き詰めようと思っています。
左:8月に数量限定発売したイヨシコーラサワー 右:7月に缶デザインがリニューアルした缶のイヨシコーラ
ーー(編集部)2024年7月には、「伊良コーラ株式会社」と社名変更もされましたよね。
コーラ小林さん
最初はクラフトコーラ事業以外もやるかもしれないと思って「株式会社GRAND GIFT」としてましたが、これからはイヨシコーラに人生を懸けたい。
結果的には原点に戻り、よりイヨシコーラの魅力を広めていく覚悟です。
ーー(編集部)最後になりますが、コーラ小林さんが「イヨシコーラを生み出せてよかった」と感じる瞬間はありますか?
コーラ小林さん
イヨシコーラは、社会課題を解決するプロダクトではありません。ですが、映画や音楽のように驚きと感動を提供することで、イヨシコーラと出会った人をちょっと楽しくさせたい。
その美味しさと手作りに驚いて、世界がちょっとだけよくなったら、それが嬉しい瞬間ですね。
<取材・文=田邉なつほ>
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