ビジネスパーソンインタビュー
“オタクの英才教育”を受けた女
「1巻で完結してるからすぐ読める名作を選びました」数千冊読むマンガ好き・内田理央が選ぶ3冊
新R25編集部
世に情報があふれる現代。人生を豊かにする「ヒト・モノ・コト」を紹介する新R25としては、本当にすぐれた「モノ」の情報を積極的にお届けしていきたい…!
そんな新企画「ワンポチ!プレゼンター」。
一見「広告?」「PR?」と思われるかもしれませんが、違うんです!さまざまなスゴい人たちに“本当に愛用しているモノ”をプレゼンしてもらう、まったく新しいコンテンツなのです。
今回登場いただくのは、女優・モデルとして活躍する内田理央さん。最近は、その「オタク」な一面に注目が集まっています。
今回は、満を持して「ビジネスパーソンにオススメしたいマンガ」をプレゼンしてもらうことに。
内田さんがセレクトしてくれた作品は、こちらの3冊。
『恥をかくのが死ぬほど怖いんだ』(サレンダー橋本)
『さくらん』(安野モヨコ)
『探さないでください』(中川学)
なんかクセが強くない?
とりあえず内田さんのプレゼンを聞いて、心が動いたらワンポチ!してみようと思います。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
天野
内田さんはマンガ好きと聞いていますが…、これまでどれぐらいマンガを読んできました?
内田さん
実家の部屋の壁はほぼ本棚で、マンガが詰まってます。
ほかにも古いものは段ボールに収納してるんで、数千冊は読んでる気がしますね…
天野
数千…!
内田さん
23歳ぐらいのときは本屋さんの「新刊棚」を全部漁るぐらい買ってました。
ヴィレッジヴァンガードとかも行って、めちゃめちゃ買ってましたね。紙袋パンパンになってここ(腕)食い込んでるみたいな。
基本的には“本屋さんで買う”っていうポリシーがあって、今でも若干電子書籍に抵抗あるんですよね。
これは一部の本&マンガ好きの人にはめっちゃわかるやつ
『恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。』(サレンダー橋本)
天野
ただ、正直社会人になってマンガをしっかり読めてないという人は多いと思うんですよね…土日も時間がなかったり。
内田さん
ですよね。わかります。
人気のマンガでも、何十巻も出てると「今からこれ全部読むのか…」ってなるじゃないですか。
なので今日は、1冊で完結してる作品だけを選んできました。
さっそくプレゼン強者感ある
天野
企画の趣旨をバッチリ理解してくれていることがさっそく伝わってきます…
そんな内田さんがオススメする1冊めが…
内田さん
『恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。』。『全員くたばれ! 大学生』、ドラマ化された『働かざる者たち』などシニカルな作風が人気のサレンダー橋本さんの短編集です。
収録されてる短編が全部シニカルで、全部共感できるんですよ。
「カーストが下」の人の気持ちを描くから、めちゃくちゃ気持ちがわかってしまう。
天野
内田さんがカーストが下なんて言ったら、本当にカーストが下だった人がブチ切れてしまいそうですが大丈夫でしょうか?
内田さん
大丈夫です(笑)。
私もともとあんまり友達がいない、なんならちょっとイジめられてるぐらいのオタクで、今でもそれが拭い去り切れてないところがあるんで…
こんな美女が…人生ってふしぎ
内田さん
たとえば、私クラブに行ったことがないんですけど、この短編集に「行ったことないから想像で適当に描いたクラブのワンナイトラブ」っていう作品があって。
(C)サレンダー橋本/小学館クリエイティブ
(C)サレンダー橋本/小学館クリエイティブ
「そんな…おもち何個入れるみたいな感じに聞かれても…」
(C)サレンダー橋本/小学館クリエイティブ
天野
これはヒドい(笑)。音楽が好きでクラブに行ってる人には超怒られそうな…
内田さん
たぶん行ったら普通に楽しいところだと思うんですけど(笑)。
私、もともといたオタクの友だちといるときは「クラブ行ってるヤツとかマジやべえ」みたいな偏見にまみれた話をしてたので、そのころの気持ちを思い出しました。
偏見にまみれた話をしていた内田理央さん
内田さん
ただ、その後モデルとして雑誌に出るようになったころ、急に「オタクだとバレたらバカにされる」「暗い部分を隠さなきゃダメだ」っていう恐怖に駆られたんです。
それで、頑張って自分を偽ってオシャレぶることにしたんですよ。
「人から『オタクなの?』って言われるのがイヤだから、自分から『クソみたいなオタクなんです』って自虐して言ってました」
内田さん
でも、自分のオタクな部分を隠したいけど、「オタクの仲間を見つけて喋りたい」っていう裏腹な気持ちもあって…
相手の属性によって自分を使い分けるっていうか…
天野
う、うわあ。でも、本当の自分を出せなくて、演じ分けてる人って意外と多いのかもしれません…
内田さん
この短編集には『ポップであるくらいなら俺は死ぬ』っていう“マウンティングの取り合い”がテーマの話もあって…
オシャレぶりたい人やオタクの“あるある”をディスってて、自分にグサッときてしまうんですよ…
(C)サレンダー橋本/小学館クリエイティブ
(C)サレンダー橋本/小学館クリエイティブ
内田さん
そういう“性格悪い視点”も、ほんとに共感できるんですよね…
「マンガ好きです」って言う人に何読んでるんですか?ってきいたらめっちゃメジャーな作品言われて、「いや○○○○○(某国民的マンガ)かい!」ってこと、あるじゃないですか(笑)。
ありますよね?
天野
人生で100回ぐらいあります。
内田さん
その相手は全然悪くなくて、むしろ、自分が相手(のオタク具合)を測っちゃってる、マウンティングしちゃってるわけじゃないですか。したくはないけど(笑)。
天野
その複雑な気持ち…正直わかります…!
ちなみに今も「自分を偽っている感覚」があるんでしょうか?
内田さん
時間がたつと演じてるほうのキャラクターが板についてきて、だんだん本当になってくるんですよ(笑)。
オシャレぶってお洋服買ってるうちに、本当にブランドとか詳しくなってきちゃって…、今はどっちも本当の自分だなって感覚があります。
『さくらん』(安野モヨコ)
内田さん
2冊めは『さくらん』。映画化もされた安野モヨコさんの代表作が、1巻で読めるんですよ。どうですか?
天野
たしかに、名前は知ってたけど読んだことなかった…1巻だけなんだ…
内田さん
内容的な推しポイントは“仕事や人間関係で逃げ出したいと思ってたり、理不尽なことを言われてたりする人に刺さるところ”ですね。
「足抜け」といって、主人公の花魁が吉原から逃げ出そうとするんですけど、“つらいことから逃げても、結局外の世界もいっしょだった”っていう描写があって…
(C)Moyoco Anno / Cork
「どこへ行こうと同じこと わかっただけでもうけもんさ」
内田さん
私も、楽しく仕事できてはいるけど、プレッシャーを感じて「この仕事逃げ出したい」って考えるときがあるんですよ。
でも、ほかの場所に逃げても同じなのかなって…
天野
仕事って「どこへ行っても同じ」と覚悟を決めることも大事かもしれませんよね…
内田さん
あと、理不尽なことで何か言われたり、傷ついたりしたときに思い出すのが「人より多くもらうものは人より多く恨まれる」っていうセリフ。
(C)Moyoco Anno / Cork
内田さん
別に誰かに恨まれてるわけじゃないですけど(笑)、人前に立ってると、何か言われることもある。
でも、このセリフを思い出すと「そのぶんまわりの人からもらってるものがあるはずだから、頑張ろう」っていう気持ちになれるんですよね。
『さくらん』は“今いるコミュニティが狭くて居心地悪く感じてしまう”ときに勇気をもらえるので、そういう悩みを持ってる人に読んでみてほしいです。
『探さないでください』(中川学)
内田さん
3冊めは、『探さないでください』。教員になった作者が職場(学校)から失踪しちゃって、数年後にその足跡を自分でたどり直すっていう作品なんです。
内田さん
これは、人生の選択肢に悩んでる人にオススメしたいですね。
エッセイマンガの面白いところって、「誰かの人生を疑似体験できる」ことだと思うんですよ。
「もう仕事から逃げたい」と思っても、大概の人って逃げないじゃないですか。『探さないでください』は、本当に逃げちゃった人の話をコミカルに体験できる貴重な作品だなと思います。
天野
…内田さん。
内田さん
え?
天野
なんかさっきから…「逃げたい」って話が多くないですか?
話が暗くない? 大丈夫なんでしょうか?
内田さん
いや、大丈夫です(笑)。私、“逃げたい願望”は100パーあるんですけど、「逃げたら後悔する」って思うから逃げないタイプなんです。
だからこそ、ほかの選択肢を選んだ人をマンガで読みたいんですよね。
『探さないでください』は、失踪しても“意外とみんな優しかった”っていう結果がほっこりできる。
「逃げたって同じ」という作品があったり、逃げても大丈夫っていう作品もあったり…仕事が忙しくて余裕がないからこそ、いろんな人生の選択肢を覗くのって大事だと思うんです。
天野
なるほど。悩みがある人は、『さくらん』かどっちか読んでみてもいいかもですね…
一瞬心配になりましたが、「マンガに悩みをぶつけるタイプなだけ」だそうです
「何かにハマることがかっこいい、という時代」内田理央が語る“オタク論”
天野
ここまで3冊紹介してもらいましたが…内田さんがそこまでマンガオタクになったのはなぜなんですか?
内田さん
確実に両親の影響ですね。子どものころから、「読書ならなんでもいい。いろいろなものを読みなさい」って言われてて。
クリスマスプレゼントは、毎年「図書カードがほしい」って言ってました。
うちは家族も全員オタクなんですよ。
天野
皆さん何のオタクなんですか?
内田さん
お父さんは車。弟はアニメと電車です。電車は「撮り鉄」「音鉄」全部入ってるガチのやつ…
お母さんは特撮と…スタローン。
天野
スタローン。
シルヴェスター・スタローン=1946年生まれ。『ロッキー』『ランボー』『大脱出』シリーズなどで知られる名優。どんなお母さんなの
内田さん
全員、それぞれの趣味にはまったく関与しないで好きなものを追いかけてる。
お年玉は「全部あなたの趣味の、欲しいモノを買いなさい」って言われてました。
めっちゃオタクならではのアドバイスだと思います。「いらないものを買うのはガマンしなさい。欲しいものを買うために」とも言われてましたね。
天野
オタクの英才教育や…
しかし、社会人になるとやっぱりマンガから離れる人は多いと思うんです。そのなかでも内田さんがオタクな気持ちを持ち続けていられるのはなぜなんでしょうか?
内田さん
趣味って、時間もかかるけどお金もかかるものだから、大人のほうが趣味を楽しめることだってあるんですよね。
あとは、時代の変化っていうのかな…
「何かにハマること」がかっこいいんだっていう時代になってきてますよね。
天野
たしかに。かっこよさげな人が、異常な熱量でサウナとかキャンプにハマってるのをよく見かけます。
内田さん
昔の私は「オタクでいることが恥ずかしい」と思ってたけど、今は逆に、趣味にハマっている人がオシャレだっていう空気ができてきている。
私も子どものころよりはお金を持てるようになったので、ほしいマンガは全部買おうと思ってます!
ちなみに、内田さんにマンガ以外のオタク趣味についてきいてみると「触手と潜水艦」とのこと。独自の道を行きすぎてるだろ。好感度めちゃくちゃ上がりましたけど。
「人にマウンティングしてしまう」「プレッシャーから逃げ出したいけど、結局逃げない」など、正直マンガのプレゼンには共感してしまうポイント多数…!
3作品ともkindleで読めますので、刺さった方は“ワンポチ!”してみてください。
内田理央さんのワンポチアイテムはこちら!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=森カズシゲ〉
だーりおCHANNEL/内田理央
内田理央さんの意外な魅力が満載のYouTubeチャンネルはこちら!
ワンポチ!プレゼンター
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