毎日たくさんの患者さんに接触してるのに…

なぜ医師は風邪やインフルエンザにかからないの? プロの予防策を聞いてきた

カラダ
インフルエンザが大流行中らしい。あなたの会社でも、休んでいる人はいませんか?

そこでふと思ったのは、風邪やインフルエンザなどで来院する患者さんを日々相手にしているお医者さんや看護師さんは、なぜうつされずに平気で働けているんだろう?ということ。

そんな素朴なギモンを、JCHO東京新宿メディカルセンター呼吸器内科の清水秀文医師に聞いてみた!

風邪やインフルエンザウイルスに常時接触してるはずなのに…医者や看護師はなぜ平気なの?

出典

Rodrigo Reyes Marin/アフロ

編集部N

編集部N

インフルエンザが大流行中ですね。こちらの病院でも例年より多いですか?
清水先生

清水先生

昨年よりは確実に増えていますね。肌感ですが2倍くらいでしょうか。
編集部N

編集部N

今回のテーマは「お医者さんは風邪やインフルエンザに感染しないのか?」。ずばり、真相はどうなんでしょう?
清水先生

清水先生

絶対感染しないわけではないですよ。風邪はひきますし、油断するとインフルエンザも発症してしまいます。
編集部N

編集部N

え、そうなんですね…。お医者さんは多くの患者さんに接触するから、体内に抗体ができてかかりづらくなるのかな~と思っていたんですが…
清水先生

清水先生

そんなことはないです(笑)。
編集部N

編集部N

では、なぜ多くのインフルエンザや風邪の患者がいる病院にいても平気なんですか?
清水先生

清水先生

インフルエンザに関しては、院内の職員はワクチンを打つようにしています。また、マスクをしっかり着用し、診察ごとに手洗いをするなど、念入りに防御しています。
編集部N

編集部N

つまり「予防を徹底しているから感染しづらい」という話なんですね。
清水先生

清水先生

そうですね。防御を徹底しているので院内でかかることは少ないです。
編集部N

編集部N

では、お医者さんが風邪をひくのはどういうときなんですか?
清水先生

清水先生

断言はできませんが、自分の家族や友人からうつっているんだろうな…というパターンが多いですね。

家庭内で院内と同じような予防環境で過ごすことは難しいですから、家族が外で感染した場合まではなかなか防ぎ切れないんですよ。
編集部N

編集部N

なるほど。
清水先生

清水先生

いま、インフルエンザがすごく流行してしまっているので、病院の対策としても、患者さんとご家族の不急な面会は控えていただくよう呼びかけたり、面会の際には必ずマスク着用と手洗いを徹底していただいたりしています。

お医者さんが実践する効果的な「手洗い」って?

編集部N

編集部N

予防には「手洗い」と「マスク」が重要ということですが、お医者さんや看護師さんが実践している効果的な手洗いの方法を教えてください。
清水先生

清水先生

石けんやハンドソープで15~20秒かけて手を洗い、流水でしっかり洗い流すことです。手洗いができない場合には、アルコール消毒も有効です。
編集部N

編集部N

小学校のころに習ったように、石けんで指の間や爪の間をゴシゴシしたり、手首まで洗ったり…。あれくらい念入りだとなお効果的ですか?
清水先生

清水先生

おすすめではあるのですが、日常的にそこまで時間をかけて念入りに手洗いするのはなかなか難しいでしょうから、流水でしっかり“洗い流す”だけでも習慣化することが大切です。

手についたウイルスの量は、流水のみの手洗いで100分の1に、ハンドソープを併用することでさらに100分の1に減らすことができるという報告があります。

マスクをしていても服にウイルスが! 大事なのは"症状がある人"の着用

編集部N

編集部N

予防のためのマスクはどれくらい効果があるのでしょうか? 自分も今日は着用してきたのですが…
清水先生

清水先生

人混みのなかでは有効かと思います。大勢のなかではウイルスに感染していてもマスクをしていない人もいるでしょうし。「飛沫感染」といって、1~2mの距離ならくしゃみなどでウイルスがうつる可能性があります。
編集部N

編集部N

電車やバスのなかで、マスクなしで咳やくしゃみを平気でする人がいますけど、もしそれでウイルスに感染してたらかなりとばっちりです…。
清水先生

清水先生

「咳エチケット」という言葉があって、風邪やインフルエンザの症状があるときはマスクし、ウイルスの飛沫を抑えましょうと厚生労働省も啓蒙しています。

これ、重要なポイントは“症状のある人”がマスクを着用することが一番という話なんです。
編集部N

編集部N

ん? どういうことですか?
清水先生

清水先生

くしゃみなどで外に飛び出たウイルスは、数時間ぐらいは服などに付着して生き残っている場合があるんです。そこに触れた手で鼻や目、口を触ってしまうとウイルスが入ってきてしまいます。

なので、「感染している人がマスクをして、ウイルスを外に出さないようにする」のがまず第一なんですよ。
編集部N

編集部N

マスクをして防御していても、マナーの悪いインフルエンザ患者がいたら、服にウイルスがついちゃうっていうことですか…。ひえー

その他の予防策…ネットで話題の「水を飲む」はどうなの?

編集部N

編集部N

手洗い、マスク以外に先生ご自身が心がけている予防策はありますか?
清水先生

清水先生

しっかり休養をとる、十分な睡眠をとる、栄養バランスのよい食事をとるなど、日常生活が乱れないようにすることは意識しています。

あとは加湿も大事です。職場だと難しいという場合は、ご自宅でできる限りの加湿を推奨したいです。
編集部N

編集部N

最近ネットで話題の“水を飲む”予防策ってどうなんですか?
清水先生

清水先生

データや医学的根拠は現時点ではありませんが、外出先でこまめに水を飲むことで、粘膜についたウイルスを洗い流そうという発想からきたものでしょう。

ただ、粘膜にインフルエンザウイルスがついたとき、数分~20分くらいで体内に侵入しますので、それ以降では意味がないと思います。
編集部N

編集部N

では、“うがい”はどうですか?
清水先生

清水先生

同じく、インフルエンザウイルスは粘膜について数分~20分くらいで体内に侵入してしまうので、それぐらい頻繁にできれば…という感じです。

手洗いとマスクに比べると、うがいは優先順位が少し下がります。厚生労働省が出しているインフルエンザ予防の文書にもうがいは記されてないんですよ。
編集部N

編集部N

なんと! 自分は手洗いとセットでうがいを欠かさないのに…
清水先生

清水先生

ただ、うがいで風邪発症を4割減らしたという報告はあります。この報告でのうがいの方法は、「15秒間3回続けておこない、それを1日3回以上」とけっこう念入りです。

ただ、害はないですし、私も子どものころからの習慣でうがいはしていますよ。
編集部N

編集部N

予防策といえばワクチンですが、大流行の今から打っても効果はありますか?
清水先生

清水先生

今からだとちょっと遅いですね。例年であれば流行前の11月から12月にかけて打つのが基本です。私も11月下旬に接種しました。
編集部N

編集部N

やっぱり…
いろいろ参考になる情報を聞くことができたが、マスクやうがい以上に「手洗い」が重要であるというのは意外だった! また、自分自身が風邪やインフルエンザにかかったら、必ずマスクを着用することもあらためて心がけたい。

ピークが過ぎても、例年だと3月までは流行シーズンとされる風邪とインフルエンザ。お医者さんの予防策を参考にして乗り切ろう!

〈取材・文=新R25編集部〉